カテゴリー別アーカイブ: 経済

「ダラダラ残業」という都市伝説

 過労自殺を出した電通が「夜10時を過ぎたら全館消灯」という指示を出した事がニュースになりました。
 また、先日は、東京都知事が「午後8時で消灯」という指示を出したことも大きく報じられていました。
 いずれも、マスコミはこれを「長時間労働問題の対策」であると報じています。
 長時間労働の経験がある人で、これに違和感を覚えない人はいないと思います。
 にも関わらず、なぜ、このような報道がなされるのでしょうか。

 それは、表題にも書いた「ダラダラ残業」などというものが存在する事を前提に、記事が作られているからです。
 要は、「遅くまで残業している人は、残業代で収入を増やすために、8時間で終わる仕事を9時間以上かけてダラダラ行っている。だから消灯時刻を早めれば残業は減るのだ」という理屈です。
 ちなみに、自民党が国会に提出中の「高度プロフェッショナル制度」というものがあります。これについては反対する野党や労働者は「残業代ゼロ制度」と呼び、自民党に近いマスコミは「時間ではなく成果で評価される制度」と読んでいるものです。
 この「解説記事」にも、これで、「残業代を稼ぎたいがためにダラダラ仕事をする人がいなくなる」などという趣旨の事が書かれています。
 しかしながら、本当に「ブラック企業」が蔓延している現代日本社会において、そのような事は存在するのでしょうか。

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有効求人倍率の正体・後篇

 前回、安倍首相が、常日頃「アベノミクスの成果」として誇っている有効求人倍率が、雇用や景気の改善の指標ではない事を、バブル期の有効求人倍率と比較しながら述べました。
 今回は、より具体的な例を挙げて、現在の有効求人倍率の高さの中身について論じてみます。

 その前に、有効求人倍率の定義について、再確認してみようと思います。
 有効求人倍率とは、ハローワークにおける「求人の数÷求職者の数」です。あくまでも「求人の数」ですので、月給100万円の正社員募集でも、週20時間勤務のパート・アルバイトの募集でも、「求人数1人」と数えられるわけです。
 ここに注目しながら、ある会社の事例を紹介します。

 ある、アルバイトを何千人も雇用している会社が、「勤務時間が週に30時間を越えているアルバイト」をリストアップしました。
 勤務時間が週30時間を越えると、正社員でなくても、会社には社会保険に加入させる義務が生じます。
 保険料は企業と従業員が折半なので、会社にも費用が発生します。
 利益を増やすために経営層は、この社会保険料の会社負担を節減する事にしたわけです。

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有効求人倍率の正体・前篇

 安倍首相の発言で、判で押したように出てくるものに「有効求人倍率が1を超え続けている。したがって雇用も景気も良くなっている。これがアベノミクスの効果だ。」というものがあります。
 実質賃金や消費支出など、ほとんどの国民において、経済指標が悪化し続けています。そんななか、極めて少ない「改善」されている数字なので、ついつい使いたくなるのでしょう。
 しかしながら、果たして、この「有効求人倍率の上昇」によって、景気や雇用が良くなったと言えるのでしょうか。
 結論から言うと、そのような事はありません。むしろ現在の有効求人倍率上昇は、「雇用の悪化」「景気の悪化」ゆえに生じていると考えるほうが妥当なのです。

 もちろん、景気が良くなったから有効求人倍率が上がった、という事例はありました。
 たとえば、1990年代のバブル華やかなりし頃はそうでした。所詮は泡でしたが、確かに世の中に多くのお金がまわり、消費が増えました。その結果、様々なサービス業が誕生しました。
 それを運営して利益を上げるためには人材が必要です。そのため、各産業は時給や待遇を釣り上げて、人を集めました。
 しかし、これはあくまでも、「景気が良くなったから有効求人倍率が上がった」という話です。だからと言って、その逆である「有効求人倍率が上がったのだから景気は良くなった」が成立するわけではありません。

現在の有効求人倍率の高さはバブル期と同じになりましたが、ぞの中身は全く違います。

現在の有効求人倍率の高さはバブル期と同じになりましたが、ぞの中身は全く違います。

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