月別アーカイブ: 2004年9月

福祉削減で借金解消?

 テレ朝のサンデープロジェクトで、国の借金が題材になっていました。出演は「次世代のリーダーとされる谷垣禎一財務大臣」(番組サイトの紹介文より)で、主張内容を一言でまとめると「借金をなくすつもりはある」「福祉を見直して歳出を減らし、所得税・消費税の税収を増やして歳入を増やす」でした。
 福祉削減の「理由」として、「生活保護を貰っておきながら豪華な生活をしている人もいる」などと言っていました。探してみれば、そのような人も確かにいるでしょう。ちなみに、4年前の四国新聞の記事によると、当時、全国最大規模の不正受給額が発覚した高松市で、(不正受給)四十五件という数字は高松市の被保護世帯数のわずか一・五%だったそうです。一方、本来なら生活保護が受けられるはずなのに、知らなかったり、審査が厳しかったりで受けられない人もいるでしょう。
 いずれにせよ、ごく一部の「不正者」をダシに、「生活保護を含めた社会保障の見直し」などと言う論法は成り立つのでしょうか。だいたい、年間の生活保護費の総計は1兆7500億円です。これは現在の借金総額の0.25%。それを削減する事によって得るものが、ごく一部の不正受給者の排除と、生活に苦しむ多数の人の誕生なわけです。
 他に、「収入が高かったり勤労意欲のある老人もいる。にもかかわらず、一律に老人福祉をやるのもおかしい」みたいな事も言っていました。確かに、氏の身の回りには高収入の老人が多いのは確かです。しかし、それも一面でしかなく、その一方で生活に苦しんでいる老人はたくさんいます。だいたい、そんなに老人に余裕があるならば、「介護に疲れた老人が妻を殺害」などというニュースが頻繁に出たりするわけがありません。

 そのような些事を延々と話しながら、公共事業の問題になどには一言もふれませんでした。これでは、日本の借金の行く末はかなり暗そうです。
 それにしても、この自民党の「福祉は削減し、間接税などで庶民増税」というのは、今に始まった事ではありません。バブル景気のさなかだろうと、「失われた10年」の間だろうとずっと同じです。
 実際に7年前に消費税率を上げましたし、前後して医療費の自己負担増などで福祉の削減も行いました。しかし直後に景気はより悪化しましたし、財政も悪くなる一方です。にもかかわらず、いつまでたってもどんな状況でも相も変わらず「福祉削減・庶民増税」を主張し続けて、本日に至っています。
 今の700兆の借金を減らす具体策は私もわかりません。とはいえ、借金総額の0.25%の項目のさらに2%弱の「不正者」の事は注目するが、もっと額の大きい問題についてはふれないうえに、主張している事は何年たってもかわらない、というような政党の「対策」ではダメだ、という事だけはわかります。

「ニート」を作る政策

 経済労働白書に「ニート(Not in Education,Employment or Training)の略」という人の数が出ていました。なんでも「職探しも勉強も結婚もしていない若者」の数だそうです。当然、そのような無収入層が増えれば、消費などにも響き、経済にも悪影響をおよぼす、と「白書」では問題視しています。
 この定義を見ると、いかにも「やる気のない若者」という感じです。しかし、その実態はどう認識すべきでしょうかか。たとえば、就職したけれど、会社にこき使われて心身の調子を崩し、退職を余儀なくされて現在休養中、という人なども、上記の定義をみるとその「ニート」に入りそうです。
 さすがに、「フリーター」の増加が目立ちだした当初のように「若者の職業意識が・・・」などと、一方的に「若者が悪い」と決め付ける評価は減っています。元記事のように、「若者の厳しい雇用情勢を反映して」など、企業側の意識の問題にも触れるようにはなっています。しかし、有効求人倍率の全国平均が1を下回っているにも関わらず、「職探しができない」ではなく、「職探しをしない」という表現をしています。結局、「若者に問題がある」という観点が基本なのでしょう。
 もちろん、「若者の意識」という要因が全く無いとは思いません。とはいえ、それよりむしろ、実際、社員一人あたりの労働量を増やしたり、アルバイトや派遣の比率を増やすなどの企業(役所もそうみたいですが)の「リストラ」に代表される労働戦略が、このような「フリーター」「ニート」の増加を生んでいると思うのですが。
 企業はこれからも「人数を絞った正社員はこき使い、汎用的な作業は派遣やバイトなど、いつでも切り捨てられる労働力でまかなう」という雇用方策を続けそうですし、政府もそれを後押しし続けています。それが変わらない限り、このような問題は悪化する事はあっても、改善する事はないと思っています。

タリバン型支配?

 4日に共同通信が流したニュースによると、イラクのファルージャが、過激派がタリバン型支配/ファルージャ、統治及ばずという状態になっているそうです。
 といっても、もちろん記者がファルージャに潜入取材をして、「タリバン型支配」を目の当たりにしたわけではありません。ある程度確かと思われる情報は、ファルージャが、アメリカの意を受けた「暫定政府」の支配下でなく、「ムジャヒディン」(イスラム戦士)と呼ばれる組織が権力を掌握している、というものだけ。それに、「アラブ紙のアッシャルク・アルアウサトがタリバン型支配をしていると報じた」だの、「アルカイダと関係があるとされ」だの「日本人人質事件を起こしたとみられる」という、不確かな情報をつぎ足しただけ。そのようにして集めた情報に「過激派がタリバン型支配」という見出しをつけているのです。

 もちろん、大虐殺が起きたような戦場の情報ですから、直接取材に行くのは危険が伴ないます。したがって、間接的な情報から記事を作るのはある程度仕方ありません。しかし、このように情報源もはっきりせずに「アルカイダ」「人質事件」と報じ、「ムジャヒディン」側の声を載せずにそのような見出しをつけるのはバランスに欠けるのではないでしょうか。
 ベタ記事みたいな量ですが、このように不確かな情報を元に「ファルージャは2001年のアフガンみたいな状況だ」という記事を出すという事は、なんらかの意図でもあるのでは、と思えてきます。

 もっとも、それ以前の問題として、仮に「アルカイダとつながっている人質事件の犯人集団が、タリバン型支配をファルージャで行っている」というのが事実だとしても、その「支配」は、春にファルージャで600人以上の人を虐殺し、現在もイラクの大部分の実権を握っている米軍の「支配」よりはマシだと思いますが。