テレ朝のサンデープロジェクトで、国の借金が題材になっていました。出演は「次世代のリーダーとされる谷垣禎一財務大臣」(番組サイトの紹介文より)で、主張内容を一言でまとめると「借金をなくすつもりはある」「福祉を見直して歳出を減らし、所得税・消費税の税収を増やして歳入を増やす」でした。
福祉削減の「理由」として、「生活保護を貰っておきながら豪華な生活をしている人もいる」などと言っていました。探してみれば、そのような人も確かにいるでしょう。ちなみに、4年前の四国新聞の記事によると、当時、全国最大規模の不正受給額が発覚した高松市で、(不正受給)四十五件という数字は高松市の被保護世帯数のわずか一・五%だったそうです。一方、本来なら生活保護が受けられるはずなのに、知らなかったり、審査が厳しかったりで受けられない人もいるでしょう。
いずれにせよ、ごく一部の「不正者」をダシに、「生活保護を含めた社会保障の見直し」などと言う論法は成り立つのでしょうか。だいたい、年間の生活保護費の総計は1兆7500億円です。これは現在の借金総額の0.25%。それを削減する事によって得るものが、ごく一部の不正受給者の排除と、生活に苦しむ多数の人の誕生なわけです。
他に、「収入が高かったり勤労意欲のある老人もいる。にもかかわらず、一律に老人福祉をやるのもおかしい」みたいな事も言っていました。確かに、氏の身の回りには高収入の老人が多いのは確かです。しかし、それも一面でしかなく、その一方で生活に苦しんでいる老人はたくさんいます。だいたい、そんなに老人に余裕があるならば、「介護に疲れた老人が妻を殺害」などというニュースが頻繁に出たりするわけがありません。
そのような些事を延々と話しながら、公共事業の問題になどには一言もふれませんでした。これでは、日本の借金の行く末はかなり暗そうです。
それにしても、この自民党の「福祉は削減し、間接税などで庶民増税」というのは、今に始まった事ではありません。バブル景気のさなかだろうと、「失われた10年」の間だろうとずっと同じです。
実際に7年前に消費税率を上げましたし、前後して医療費の自己負担増などで福祉の削減も行いました。しかし直後に景気はより悪化しましたし、財政も悪くなる一方です。にもかかわらず、いつまでたってもどんな状況でも相も変わらず「福祉削減・庶民増税」を主張し続けて、本日に至っています。
今の700兆の借金を減らす具体策は私もわかりません。とはいえ、借金総額の0.25%の項目のさらに2%弱の「不正者」の事は注目するが、もっと額の大きい問題についてはふれないうえに、主張している事は何年たってもかわらない、というような政党の「対策」ではダメだ、という事だけはわかります。