月別アーカイブ: 2005年9月

議席数よりもむしろ

 選挙の結果、民主党が64議席、「諸派・無所属」が14議席減って、自民党と公明党で差し引き81議席増えました。つまり、自民・公明・民主の合計の議席数はさほど変わっていないわけです。選挙の直前に書いたように、自民党と民主党の本質は変わらないと考えていますので、そういう点では「自民党大勝」という情報にはさほど驚いていません。正確に言えば、共産・社民が激減した前回ほど驚いていない、という感じです。
 とはいえ、今後の日本に対する不安感はより一層高まりました。特に気になったのは、今回の選挙では、これまで以上に商業マスコミと自民党の一体化が目立った事です。ここまで協力体制が整ったのは、60年ぶりではないのか、とまで思っています。今回は、その「成果」が「民主党の議席が自民党に移動」という程度の結果にしかなりませんでした。しかし、この手法を応用すれば、憲法をはじめ、重要な諸問題が今回の選挙と同様な形で進んでしまう危険性が大きいでしょう。そのあたりについては、明日以降また書いていきます。

政権選択?

 大手マスコミを筆頭に、色々な所で、今回の選挙を「政権選択」と定義づけしている論調を見かけます。確かに、「誰が政治を行うか」という事のみを考えれば、そうなるのかもしれません。しかし、「どのような政治を行うか」という事を考えると、果たして今回の選挙の意義は「政権選択」になるのでしょうか。
 「どのような政治を」という点から考えると、現在の与党である二つの政党と、最大野党は似通いすぎています。経済政策にしろ、「安全保障」にしろ、本質的な違いを感じるのは難しいでしょう。だいたい、「自民党の公認が取れなかったから民主党で出た」などという候補者すら存在するのですから、本質的な違いなど出しようがありません。

 10年ちょっと前に、「佐川マネー」などで自民党政治に対する批判が高まった時に、「非自民連立政権」が誕生しました。しかし、その結果としてもたらされたものは、「企業献金を維持しながら、税金からも政党に金がつぎ込まれる」という「政治資金改正」と、自民党のような利益誘導型の大政党に最も有利となる「小選挙区を軸とした選挙制度」でした。そしてその結果、議席数の多寡にかかわらず、「9条改憲」を始め、自民党の目指しているものが、着実かつ急速に進むようになっています。
 このような過去を見る限り、「政権選択」というのは見かけほど重要ではないように思えます
 「誰が政治を行うか」だけ考えれば、「勝った負けた」は自民党(+公明党)と民主党の議席数のどちらが多いか、だけを考えればいいのでしょう。しかし、「どのような政治が行われるか」を考えると、重要なのはむしろ「全議席数に対する、自民党的政治を行う議員の比率」になるのでは、と思っています。

「公務員削減」を競う理由

 自民党と民主党が、「公務員削減」を競い合っています。自民党の配布する小冊子を見たら、大阪市だの社会保険庁などといった、マスコミが執拗に取り上げる「公務員の非行」を例示し、「だからこそ、自分たちの公務員削減は絶対的に正しい」という感じで書いていました。民主党の「反論」も、「自分たちの考えた公務員の減らし方のほうが正しい」という程度のものです。つまり、「公務員削減」は「二大政党」の双方にとっての「錦の御旗」なわけです。
 しかし、公務員削減という行為が、我々の生活に何か役立つのでしょうか。たとえば、日本は諸外国に比べて人口あたりの公務員が多すぎる、というのなら分からなくもありません。しかし、事実はその正反対です。
 また、公務員が多すぎて、市民サービスが過剰にでもなっているのでしょうか。確かに、国も自治体も、相変わらず無意味な建造物を作ったりしています。しかし、それに従事するのは建設業の社員であり、公務員が自分で工事をするわけではありません。それによって利益を得るのは、建築業者および首長などのごく限られた公務員のみです。
 だいたい、現在の公務員の賃金総額が減ったところで、サラリーマンの収入が増えたり、税金が下がるなどといった事は絶対にありません。それどころか、そのような形で公務員の収入が減れば、その分、金が消費市場にまわらないのですから、むしろ売上が下がるわけです。もしそうなった場合に行われるのは賃下げ・労働強化・リストラなわけですから、むしろ、サラリーマンの生活は苦しくなる可能性すらあるわけです。

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