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「パワハラ公募校長」とその出身新聞社の「パワハラ記事」

 大阪の中学校で「民間公募」によって採用された校長が、パワハラを始めとする多数の問題行動で更迭されました(※追記・更迭は撤回された事です。このあたりについては、文末に追記しました)。
 橋下氏肝いりの「民間公募」の失敗例がまたひとつ増えたわけで、あらためて、氏の政治家としての無能ぶりが露呈した結果となったわけです。
 ところで、このパワハラを繰り返した「民間人校長」ですが、前職は日経新聞の記者を12年間勤めていたとのことでした。
 年齢から考えると、社会人生活の八割以上を日経新聞社で過ごしていた、という計算になります。

 その日経新聞ですが、よく「パワハラ擁護・容認記事」を掲載しています。
 もちろん、露骨にパワハラを推奨しているわけではありません。しかしながら、一見、「パワハラは問題である」と主張しているような見出しをつけながら、実際は擁護している、という記事がよくあります。
 一番ひどいものとしては、若手社員を対象にした記事で、「パワハラを受けたら自分に問題点があったと思って耐えなさい。むしろ成長のチャンスと思うべきです。それでもどうしても耐えられなければ辞めなさい。ただし、その際に会社や上司には一切迷惑をかけないように」などという趣旨の記事すらありました。
 他のパワハラを取り上げた記事も、「最近の若者は弱いから、以前は普通のコミュニケーションだった言動でもパワハラ扱いされる」などという感じのものが大半です。
 さらに稀な例である「逆パワハラ」なるものをセットで出して、「お互い様」みたいな形にするものもありました。

 つまり、この新聞社の発表する「パワハラ記事」は、パワハラは職場での優越的立場を利用しての人権侵害でないからやってはいけない、ではありません。
 上司を対象にした記事では、「パワハラ的な言動を取るのは日本伝統の社内コミュニケーションだ。ただ、訴えられて負けたら損だから気をつけろ」となります。
 一方、パワハラ被害者を対象にした記事でしたら、「あなたに問題がある。改善のチャンスだと思いなさい、万が一にも会社と戦うような事はするな」となるわけです。
 もちろん、労働組合に相談して解決、などというアドバイスを書くことは絶対にありません。

 先述したように「パワハラ公募校長」は社会人経験の八割以上を日経新聞社で過ごしています。
 その「民間経験」をもとにやった事が、更迭されるほど異常なパワハラだったわけでした。
 もちろん、この一元社員の事例だけで「日経はパワハラ体質だ」と主張することはできません。とはいえ、この人に対し、日経新聞はパワハラに対する適切な社員教育を行えていなかった、というのもまた事実です。
 そのような社員を輩出した新聞社が、パワハラを擁護・容認する記事を書き続けているわけです。
 はっきり言いますが、そのような日本経済新聞社が発信する「パワハラ」に関する記事など、根本的に誤っていますし、読む価値などありません。
 この「日経出身のパワハラ校長事件」はその事を端的に示す分かりやすい例と言えるな、と思いました。

 3月24日追記・該当の「公募校長」ですが、大阪市の教育委員会が更迭を撤回した、というニュースが流れていました。
 それもまたかなり異常な話です。
 ただ、更迭撤回はパワハラの事実がなかったから、というわけではありません。
 したがいました、今回の更迭撤回によって、本稿の論旨が変わることはありませんので、一部修正のうえ、このまま掲載を続けます。

「アベノミクス」という大本営発表

 「アベノミクスの効果により、日本経済は回復した。株価は上がり、デパートでは高額商品の売上が増えている。ただ、一般層にはまだ浸透していない。今後、アベノミクスの効果を広く実感させる事ができるかがカギだ」という、同じような内容の「報道」を、この一年で何度も見ました。
 不思議な事に「消費が増えた」という事を伝える指標は、ほとんどの記事において「デパートの高額商品」ばかりです。
 そして、「あとはこの好景気が広く実感できるようになるかがカギだ」などと、いかにも近いうちに「アベノミクスの恩恵」が日本全国にもたらされるかのように書いています。
 このような同じ中身の「記事」を各商業マスコミが毎月のように「報道」しています。
 これの記事が本当だと信じる人ならば、「アベノミクスで日本経済は確実に上昇しており、じきに我々の生活も良くなる」と思うことでしょう。

 しかし、現実はどうでしょうか。
 営業利益が11%増えた日産は、10年ぶりのベースアップを発表しました。正社員の給料が月額平均で3,500円増えるとのことです。
 また、3月期として過去最高の営業利益を上げたトヨタは、月額2,700円、期間工の日給が200円増とのことでした。
 月に消費する金額が12万円ならば、4月の増税で支出が3,600円増えてしまいます。それを考えれば、この程度の「賃上げ」など焼け石に水である事は明らかです。
 営業利益が大幅に増えた業界のトップ企業ですらこの程度の「アベノミクス効果」しかないわけです。
 他にも、ベースアップに関する報道は色々見ますが、その金額は上記二社に劣るとも勝らない、というような「増額」です。

 一方で、派遣法改悪や、経済特区構想など、労働者の不安定化・低賃金化をさらに推し進める政策は着実に進められています。
 この事実だけを見ても、「アベノミクスの効果が、働いている人に波及する」などという事がありえない、というのは明白です。

 街を歩いていても、「アベノミクスの効果」など、どこにもありません。
 筆者が仕事をしている商店街は、この近辺ではかなり人通りが多い方です。
 しかしながら、「アベノミクス」開始以降、店は減り続け、シャッターが目立つようになっています。
 また、加入している商工会では、年末や年度末になると、廃業の話が聞こえてきます。
 働く人の生活は良くならず、商店街も廃れる一方なのに、マスコミは「アベノミクスで経済が良くなっている。これは、そのうちあなた方も実感できる」と宣伝し続けているわけです。

 確かに、大量の株式を保有している経営者は大儲けしました。ユニクロの社長は6,000億円もの「アベノミクス効果」があったそうです。
 もちろん、普通の人でも「株高効果」はあったでしょう。しかし、それはたかが知れています。自分の知る範囲では、「リーマンショックで損した額には届かない程度の利益」という人ばかりです。

 この報道と現実の乖離ぶりは、70年前の戦時報道を彷彿させられます。いわゆる「大本営発表」というやつです。
 1943年から敗戦まで、日本軍は負け続けていました。
 にも関わらず、当時の新聞は、局地的な日本軍の勝利ばかりを大きく取り上げ、「日本は勝っている」と報じたわけです。さらに、「最後には神風が吹く」などと言って、国民に勝利が近いかのように思わせました。
 この「戦局」を「経済」に置き換えると、今の「アベノミクス礼賛報道」は、当時の戦時報道と同じだという事がよく解ります。

 ごく一部の富裕層の収益増やそれんに伴う高級品の消費ばかり取り上げて「景気が良くなった」を連呼します。一方で、廃れ続ける商店街や、収入が下がり、非正規化・不安定化が進む労働者などは報じません。
 一部の勝利のみ報じ、その何十倍にも及ぶ敗北を報じなかったのとよく似ています。
 そして、「あとの課題はアベノミクスが広く実感できる事だ」などと書いて、生活が良くなっていない人達に、近いうちに「アベノミクス効果」が自分たちに来る事を期待させます。
 これも、かつての「もう少しすれば神風が吹くから日本は勝つ」と同じです。

 70年前、商業マスコミが政権と一体化して、国民に事実と異なる情報を流しました。
 その結果、多くの国民が徴兵や空襲などで殺されました。その一方で、軍需関係で収益を上げた企業は多々ありました。
 そして現在、当時同様、商業マスコミは政権の意のままに、事実と異なる情報を流しています。
 それを信じて「アベノミクス」を支持し続けることは、国家を信じて戦争に協力した結果、命や心身の健康を残った70年前と似たような結果を国民にもたらすのでは、と考えています。