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株価が上がれば経済が良くなる?

 「アベノミクス」で景気が回復している、という主張の論拠として、「株価が上がったから」というのがあります。
 確かに、数字を見ればわかるように、日経平均株価などは上がっています。
 そして、ソフトバンクやユニクロの経営者は、その株高でケタ違いの大儲けをしました。
 これらはいずれも明白な事実です。株で大儲けした人にとっては、「アベノミクス」は極めて優れた施策だったわけです。
 では、そうでない人にとってはどうなのでしょうか。

 商業マスコミなどは、絶対的な真理であるかのように「株高=経済全体の上昇」というような事を書きます。
 しかし、いくつかの事例を見れば、それは本当なのだろうか、と言わざるを得ません。
 例えば、しばらく前に、自民党が消費者金融(サラ金)の上限金利を上げようとした事がありました。
 すると、サラ金各社の株価は上昇しました。そして、その案が潰れたら、株価は下がりました。
 確かに、金利が上がればサラ金の儲けは増えます。したがって株価も上がります。その逆もまた然りです。
 しかし、借金する人にとっては、「サラ金会社の株高」による恩恵など一切ありません。むしろ。支払う利息が増え、生活は一層苦しくなるわけです。
 そして、その案が潰れた事により株価は下がりましたが、同時に「サラ金地獄」のリスクが低減したわけです。

 もちろん、これは特定の企業の株価に限った話ではありません。
 ここ10数年、日本の実質賃金は低下し続けています。そして、正社員が減り、不安定な派遣社員・非正規雇用の比率が増加しています。
 その結果、ワーキングプアと呼ばれる人々の数は激増しました。
 一方で、企業は利益を増やしました。その利益の要因の一つとして、これまで労働者に支払われていた給与を減らしたことがあるわけです。
 そして、利益が増えれば株価は上がります。これは、ほとんどの上場企業で行われている事なわけです。
 もちろん、それによる労働者(特に派遣や非正規の人)への恩恵など何一つありません。
 これなども、株価が上がれば経済全体が良くなる、などという事はない、という分かりやすい例と言えるでしょう。

 マスコミは相変わらず「アベノミクスによって景気回復」などと報じています。
 自社の世論調査をやっても七割以上の国民が「景気回復を実感していない(=景気が良くなっていると思わない)」という結果が出ても、それすら無視して「景気回復」などと言っているわけです。
 そのため、現在のGDP激減のように明確で数値化されている経済状態の悪化も、「景気の悪化」ではなく「景気回復のもたつき」などという言葉を使います。
 その「景気回復」の論拠として使うのは「株価」なわけです。
 しかし、今回書いたことからもわかるように、「株価が上がれば経済が良くなる」などという事はありません。
 その事を意識しながら経済情勢を見つつ、身の回りで実際に何が起きているかを考えれば、「景気回復」などは、ごく一部の富裕層のみで起きている現象であり、普通に働いている人にとって今の状態は、「空前の大不況」でしかない事に気づくのでは、と思います。