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消費税を増税しなければ財政や社会保障が成り立たない?

 消費税への10%増税が「先送り」になりました。
 もちろん上がらないに越したことはありません。ただ、自民党の「先送り」は「2015年10月の増税を1年半延ばす。もし、その時の経済状況がどうであろうと、絶対に増税する」という主張です。
 民主党や旧「第3極」の「凍結」や「上げる前にやるべきことがある」も同様で、要はいつかは10%に上げる、というものです。
 それに対し、共産党や社民党は、増税そのものに反対、さらには税率の引き下げを主張している、というのが今回の選挙の構造です。

 商業マスコミは、増税撤回という主張を無視して、「消費税においてはどの党も延期と言っている」などと事実と異なる報道をし、「争点化」を避けようとしています。
 たまに増税反対の政党の意見を取り上げる事もあります。しかし、その時は「それならば将来の日本の財政はどうなるのか」「社会保障はどうなるのか」などと攻撃します。
 しかしながら、その攻撃はどのような根拠に基づいてのものなのでしょう。
 もし、「消費税率が10%になれば、これで日本の財政も社会保障も恒久的に安心できるようになる」という事が立証されているというのならば、まだマスコミの主張にも説得力があります。
 しかしそのような事はありません。実際、商業マスコミの大スポンサーでもある財界は、16%への増税などを主張しています。
 では一体、何%まで消費税率を増税すれば、財政や社会保障は安定するのでしょうか?
 実は、その答えは「仮に消費税率を100%にしても、今の政治が続けば財政も社会保障も安定しない」なのです。

 その理由は、「消費税の用途」にあります。政府やマスコミはこの四半世紀、「消費税は財政再建と社会保障のため」と宣伝し続けました。先日も、大量の広告費をかけて、TV・新聞で「消費税は社会保障のために使われています」などと大宣伝していました。
 そのため、それを真に受ける人は多々います。
 しかし、現実は全く違うのです。それは「消費税導入・増税以来、社会保障は悪化し続ける一方だし、財政再建の目処すら立っていない」という現実を見れば一目瞭然です。
 では、消費税は何のために使われてきたのでしょうか。実は、法人税減税の財源だったのです。ちなみに1989年から昨年からの24年間で、消費税の税収は264兆円で、法人税の減収分は246兆円でした。
 これまで2回消費税が増税されました。しかし、その増収分は法人税減税など、一部の大企業を優遇するために使われてきたのです。
 この24年間、法人税においては、連結決算・研究開発費減税など、さまざまな減免制度が作られ、税収は大幅に減りました。その減収分が消費税の増収分とほぼ相殺されていたわけです。
 このような事をやっていれば、、いくら消費税率を上げても、社会保障が充実することもなければ、財政が安定することもないのも当然と言えるでしょう。
 3%でも5%でも8%でもそのような使われ方をしてきたわけです。10%になろうと16%になろうと100%になろうと、それが変わることはありません。これは、これまで起きた事を見れば、簡単に予想できます。
 つまり、社会保障の充実を消費税によって賄おうとするのは、穴の開いたバケツで水を汲むのに等しいのです。そして、穴だらけの底から漏れた水は、法人税減税に使われる、というのがこの24年間行われ続けた事なのです。

 もちろん、そのような事実を商業マスコミは報じません。そして、「消費税を増税しなければ、社会保障は持続できず、孫子の代に負担が残る」などと根拠もなく国民を脅すのです。
 その一方で、自分たち新聞には特例として軽減税率を適用せよ、と自民党などの議員に働きかけて運動しています。
 彼らだって日本人なのですから、社会保障や財政が不安定では困るはずです。にも関わらず、彼らの論法だとそれを維持するために必要な消費税を、自分の売る商材にだけは減免せよ、と主張しているわけです。
 これからも、彼らが社会保障や財政の事など本気で心配していない事、かつ消費税増税によってそれらが安定するなどと思っていない事はすぐに分かるでしょう。

 少なからぬ人が、マスコミの宣伝を真に受けて、「消費税増税は生活するにあたって痛手だが、社会保障や財政の事を考えると仕方がない」と思いこまされています。
 しかし、そのような事は一切ないのです。繰り返しになりますが、それはこの24年間行われた結果を見れば、消費税増税が社会保障や財政に何ら役に立たない事は明白なのです。
 というわけで、消費税増税や社会保障削減で困っている人は、来る総選挙では消費税増税中止を主張している共産党のような政党に投票するのが、生活苦を解消する最善の方法である、と強く主張します。
 また、繰り返しになりますが、「凍結」や「延期」や「上げる前にやることがある」は、「いつか増税する」という意味です。いくら「非自民」だからといっても、そのような主張をする政党に投票しては、ますます生活は苦しくなるという結果になってしまうでしょう。