千葉市の将来像

 二度ほど、「貴方が市長になったら、どのような千葉市になるのか?」と尋ねられた事があります。
 いずれも、「新しい立派な建物はできません。その分、市民生活を向上させます」という主旨の答えをしました。
 一番分かりやすい例は、小中学校です。外から見た分には、以前と変わりません。しかし、中の教室はエアコンが完備しているので、児童・生徒は、夏でも快適に授業を受けています。
 市役所本庁舎も同様です、見た目はほとんど変わりませんが、耐震補強が行われているので、6年以内に地震が来ても、防災拠点として十分に機能します。
 これは、市庁舎に限った事ではありません。

 新規開発についても同様です。市として、「新たな観光資源」を整備するような事は行うつもりはありません。
 もちろん、これ以上、開発に税金を使う必要がない、という考えが基本にあります。さらに、それに加え、現市長が主張している「開発などで千葉市に来る人を増やした」という「実績」に何の意味があるのか、という疑問があります。
 たとえば、美浜区に大きなイベントを誘致すれば、千葉市を訪れる人の数は増えます。しかし、参加者のほとんどは、駅から会場に直行してイベントを楽しみ、同じ経路で帰宅するわけです。
 鉄道会社と、現場に出店した店の売上には貢献するのかもしれません。しかし、地元経済にとってはあまりメリットはありません。
 このように、千葉市が税金を注ぎ込んで「訪れる人」を増やしても、その「投資効果」が市民に還元されるのか、極めて疑問です。
 実際問題、今の市長になって、千葉市を訪れる人が大きく増えたそうですが、それを知って、「素晴らしいことだ。おかげで我が家の生活も良くなった」と思った市民はどれだけいたのでしょうか。

 これは、企業誘致についても言えます。大企業を「トップセールス」で誘致し、税収を増やしたそうです。
 しかし、その増やした分を、さらなる企業誘致・基盤整備に投資してるようでは、市民にメリットはありません。
 市役所と誘致企業の間では「好循環」が起きているのかもしれません。しかし、ほとんどの千葉市民にとっては関係のないことです。
 なお、先日聞いた話ですが、都内に住んでいる人が、会社が千葉市に移転したから移住を検討したそうです。しかし、近くの認可保育園に入るのが困難と知り、断念したとのことでした。
 同様に、小中学生の子供を持つ親が、エアコンの状況を知り、移住を断念する、などという話もあるのではないでしょうか。
 このように、足下の市民サービスを疎かにして、企業誘致に全力を挙げても、市の活性化にはつながりません。

 では、大野たかしは、どのような千葉市経済の活性化を考えているのか、と思われる方もいると思います。
 その答えは、国保料値下げなどで市民の懐を温め、同時に地域で地道に頑張っている中小業者・個人商店を活性化する、です。
 宣伝カーで市内を回っていて気になるのが、「シャッター通り」の増加です。駅前やバスターミナル周辺であるにも関わらず、半分近くが空き店舗、という状況を見てきました。
 地域の方々は買い物に苦労している事でしょう。
 中小業者に力を入れても、目立った変化はありません。しかし、地元の業者が安定して経営を行えば、市街の衰退は防げます。
 また、地元業者の利益のほとんどは、地元で消費されます。それがまた、新たな経済循環を産みます。大企業ではそうはいきません。

 先日訪れた商店街は、千葉市では珍しく賑わっていました。とはいえ、建物は老朽化しており、少なからぬ店舗の看板は「0472-◯◯-××××」と、20年以上前の番号がそのまま掲載されていました。
 たとえば、ここに市が援助して、リニューアルを促進すればどうなるでしょうか。
 外観が良くなれば、地域の人の利用率もより上がり、店舗の経営も安定します。そして、店舗や看板のリニューアルも地元業者に発注され、そこに新たな利益、さらには地域での消費を生むわけです。
 このような、まずは中小業者の経営を安定させ、それによって地域経済を下から温め、千葉市全体を活性化させる、というのが自分の経済政策です。
 観光客を呼べる見込みが薄い場所に税金をつぎ込んで「千葉に人を呼ぶ観光地」を無理やり作るより、国保料値下げなどで千葉市民の懐を暖めて、千葉市内での消費を増やしたほうが、確実に、千葉市内の経済は活性化します。

 先日のネット討論会で、学生の方から「千葉には、行きたい所がありません。表参道のような行きたくなる場所を作れませんか?」という質問がありました。
 これに対し、表参道を模した街を市政主導で作ったところで、「行きたくなる場所」になりません。しかし中小業者を活性化すれば、そのような場所が誕生する可能性がある、という旨の回答をしました。
 中小業者・個人商店の営業をサポートすれば、千葉市で開業する人が増えるでしょう。そうすれば、自然と、独創的な発想を持つ業者が生まれます。それらが結合すれば、他にない商業文化が産まれる可能性は十分にあります。
 そうなれば、千葉にも、原宿・表参道・秋葉原のような、人を惹きつける商業地域ができる、という希望もふくらみます。
 なお、これは、政府が進めている「将来性のある新規ビジネスを育成する」と一見似ているようですが、全く違います。
 政府のような、上からの視点で選別し、それだけ援助するのではありません。地域経済からの視点で、中小業者・個人商店の全体を活性化させるのです。

 結論を言います。市が主導して立派な施設を作っても、それは経済活性化に繫がりません。閑散とした千葉港の桟橋がそれを象徴しています。
 少しはよそから人が来るかもしれませんが、千葉市民のほとんどには関係のない話でしかありません。
 その一方で、今の市政のように、市民サービスを値上げして、福祉を削り、中小業者・個人商店も援助しなければ、市内の経済は疲弊する一方です。
 それを根本から変え、市民の生活を向上させ、同時に中小業者・個人商店を援助して地域循環型の経済を作る事が、千葉市の発展につながると確信しています。
 その結果、見た目はほとんど変わらなくても、千葉市は活性化します。それが、大野たかしの経済政策であり、千葉市の将来像です。