「景気回復」で潤った「個人消費」

 数日前の日経新聞に、上場企業の配当が増加した、という記事がありました。これによって個人消費が増加して、内需に波及するとのことです。
 確かに大株主ともなれば、配当による収入は巨額です。そして、その金の一部は消費に回るわけですから、確かに「個人消費の増加」とは言えます。
 もっとも、そのような事で「個人消費を増やせる」人など、極めて限られています。基本的には株を持っている人です。ただし、一般投資家の多くは、サブプライム破綻などで既に大損しているわけですから、「個人消費」にまわせる余裕などないでしょう。また、当然の事ですが、ただでさえ賃金を減らされている、たいていの給与所得者には、配当で儲ける以前の問題として、株などを持つ余裕などありません。

 というわけで、これによって個人消費を増やせる人は極めて限られています。その中で、トヨタの創業者一族などはその数少ない層になります。ちなみに、昨年の配当で得た金は15億円だったそうです。
 この配当の原資は利益および内部留保です。前回も書きましたが、トヨタがこの前の四半期で黒字になりましたが、それは下請け企業に払う金とと労働者の人件費を削って、利益を搾り出したゆえです。
 つまり、それらの人々の収入が、トヨタ創業者一族など限られた層の「個人消費」にまわった、という話なわけです。人数的で考えると、得した人と損した人のどちらが多いかは言うまでもありません。
 以前から日経新聞は、「企業の収益が良くなれば、それが個人に波及する」と主張していました。それだけを読むと、電車の中で日経新聞を読んでいる会社員の方などは、大企業の収益増による利益が自分にも波及すると思ってしまう事でしょう。
 しかし、実際には、賃金労働者などは日経新聞が言うところの「利益が波及波及する個人」には含まれていなかっただったわけです。それどころか、むしろ配当で儲かる人のための犠牲となる可能性が高いのです。
 このような事実を理解したうえで、商業マスコミの「政治・経済に関する主張」を読めば、彼らの主張する「成長のための経済政策」なるものの本質が、「いかにも全国民に利点があるように見せかけているが、実はごく一部の富裕層にしか利点がない」というものだということがよく分かるのでは、と思います。