北朝鮮人工衛星打ち上げ騒動から分かったこと

 ここ一ヶ月ほど、ほとんど毎日、マスコミは「北朝鮮が打ち上げる人工衛星」の事を逐一報じていました。
 相手は国交がなく、直接情報を取材できる状況にはないはずです。しかしながら、非常に詳しく発射に関する情報並びに、それによって沖縄に被害が及ぶ可能性について、事細かに報じ続けていました。
 もっとも、結果は、各社の「詳細な分析」からは予想だにしなかった「打ち上げ失敗」でした。というわけで、結局、大騒ぎしたにも関わらず、実際のところ、日本にとっては全くもってどうでもいい事でしかありませんでした。

 しかしながら、今回の騒動のおかげで、色々と興味深いことが分かりました。
 まずは、「沖縄の安全保障」についてです。日頃、沖縄の米軍基地が問題になると、マスコミは「日本の安全保障の問題だ。普天間固定化か辺野古移転しか選択肢はない」などと報道します。
 この論法が正しければ、沖縄にある米軍基地は、1,600km離れた東京をはじめ、日本列島全てを守ってくれているはずです。ならば、実際に基地がある沖縄にに、衛星の破片などで被害が及ぶ事など、心配する必要など何もなかったはずです。
 しかしながら、マスコミは毎日のように沖縄の危機を煽り、不安に思っている住民の声などを報じていました。おかげで沖縄旅行のキャンセルが発生し、地元の観光産業に、本来の意味での風評被害が発生したほどでした。
 もともと日本に駐留する米軍の半数以上は、「上陸作戦、即応展開などを担当する外征専門部隊」であるところの海兵隊です。したがって、日本を守るためにいるわけではありません。したがって、沖縄のみならず、日本を守るのに何ら役に立たないのは当然の事です。
 これまで、そのような事を報じなかったマスコミが、この「北朝鮮危機」において、間接的ではありますが、ついにその現実を認めた、というのは興味深いことでした。

 さらに、マスコミがここまで「人工衛星の破片が空から落ちてきて、沖縄県民の生活に影響を及ぼする事」が脅威であると煽っていることにも呆れました。
 実際に北朝鮮の人工衛星は沖縄には落ちませんでした。しかしながら、過去何度か、沖縄の人々は外国の軍事脅威が空から落ちてきて、深刻な被害を受けた事があります。
 その「発生源」は北朝鮮ではなく、アメリカです。8年前には、沖縄の大学に米軍ヘリが墜落する、という事件がありました。
 偶然ながら、ちょうど、北朝鮮が衛星を打ち上げる前日、沖縄県東村高江で建設が強行されているヘリパッド基地に配備されるヘリコプターがモロッコで墜落したというニュースが流れました。
 そのような「実績」があるものが沖縄に配備されようとしているわけです。過去一度も沖縄に落ちた事がない北朝鮮の人工衛星などよりも、よほど沖縄の住民を不安に陥れていることでしょう。
 つまり、上空から落ちてくるもので沖縄県民にとっての脅威の度合いは、北朝鮮の人工衛星などよりも、アメリカ軍のほうがよっぽど上なのです。
 本気で沖縄県民の生活を心配するならば、東村高江のヘリパッド問題や、辺野古の基地移転における問題点をもっと大きく報じるべきでしょう。それを無視して、北朝鮮の人工衛星の破片という、現実味のない「危機」を大げさに騒ぎ立てる姿は、非常に滑稽でした。

 というわけで、我が国(特に沖縄)にとって、最大の脅威である外国がアメリカであることおよび、その「脅威」の代償である「日本を守ってくれる」に何ら現実味がない事が改めてよく解りました。
 同時に、そのような現実を、商業マスコミが直接報じることはない、すなわち、実際には沖縄県民の生活の事など何も考えていない、という事も再認識できました。
 結局、連日のように大げさに報道された「北朝鮮人工衛星打ち上げ報道」自体は、我々の生活にとって、何ら価値のないものでした。
 しかしながら、そのような現実並びに「報じないでいい事を大げさに書き、重要な事は報じないマスコミ」という物を浮き彫りにした、という事においてのみは、価値があったかもと思いました。