失敗の再現

 子供の頃、歴史を学んだ時、不思議に思った事がありました。
 第一次世界大戦で敗れたドイツは、ワイマール共和国という先進的な政治体制を作ったものの、経済の悪化などの影響もあり、数年後に最悪の政権であるナチスが誕生しました。
 そして、第二次世界大戦をはじめて、前回以上の大敗北と歴史的な汚名を残しました。
 一方、自分が生まれ育った日本は、第一次世界大戦では戦勝国側についたものの、第二次世界大戦ではそのナチス・ドイツと組み、核兵器を落とされるなどと大負けしました。
 その後、学校でも本でも、「日本は平和国家になった」と教わりました。
 確かに、軍を持たない憲法が制定され、アメリカの要望もあって再軍備したものの、その名前は「軍」ではなく「自衛隊」となるなど、「軍隊を持たない国」という建前を堅持していました、
 そのような状況を知った時、何でドイツは二度目の失敗でやっと懲りたのに、日本は一度だけの失敗で懲りたのだろうか、と不思議に思ったものでした。

 しかしながら今、かつての戦争で日本の行為が誤りだったと絶対に認めようとしない首相のもとで、戦争法案が採決されようとしています。
 振り返ってみれば、敗戦後にインフレで苦しんだドイツと対照的に、「ソ連・中国といった共産圏に対抗する国がほしい」というアメリカの思惑もあって日本は高度経済成長をしました。
 思惑はともかく、国民にとっては「幸せな」状況でしたら、確かにナチスのような勢力が台頭する必要はありません。

 しかしながら、1990年台以降、日本の経済は落ち込む一方です。他国が曲がりなりにも成長している中、日本は「先進国」でも珍しい、働く人の収入が減り続ける国に鳴りました。
 その結果、ドイツが第一次世界大戦敗戦直後にむかえた経済苦境に近づきつつあるような経済が今になって日本に訪れているわけです。
 その時期に、こうやって戦争法案が作られました。そして、副首相の地位にいる人は、しばらく前に「ナチスを見習って」と公言しています。
 それも含め、今の日本は、二度目の過ちをおかした当時のドイツに近づいているように思えます。
 もちろん、そのような「失敗の再現」を指をくわえて見ながら巻き込まれるつもりは、毛頭ありませんが…。