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2005年08月21日

政権公約における改憲の位置付け

 昔、よく健康食品の格安販売をうたうチラシがポストに入っていました。紙面の9割がそのような格安販売で占められており、その片隅に「高級羽毛布団」の写真が小さく載っています。そして、チラシを見て会場に来た人を安売りやプレゼントで催眠状態みたいな精神状況にします。それを利用して布団を高値で売りつけるわけです。いわゆる催眠商法というやつです。
 惹きつけるための心地よい情報の片隅に、真の商売目的をさりげなくまぜておくという、この巧妙なチラシと似たようなものを先日見ました。それは自民党の政権公約です。

 冒頭で「改革」の最重要課題として郵政民営化を大々的に宣伝し、続いて本文でも「テーマ1」として、「日本の改革」を挙げてます。当然ながら、最初の項目は「郵政民営化」です。
 2番目には「日本の行政を変える」として公務員制度や財政赤字・社会保障などについて書いています。「行政のスリム化」などとして、公務員の人数や賃金の削減について大きく書き、さらに財政赤字の削減や社会保障の「改革」にもかなりの行数を割いています。
 3番目は「日本の社会を変える」として「女性の坑内労働に関する規制の緩和」など。これはあまり字数はありません。
 そして、この「テーマ1」の4番目に出てくるのが「日本の基本を変える」です。ここには憲法や教育基本法を「改正」する事について書かれています。しかし、憲法については、17年11月15日までに自民党憲法草案を策定し、公表する。新憲法制定のための「日本国憲法改国民投票法案」及び「国会法の一部改正案」の早期制定を目指すと、わずか2行で片付けています。しかも、「9条をどうする」などと言った、具体的な改憲内容はもちろん、改憲の基本理念についてすら何一つ触れていません。
 行数はわずか2行。これは後で出てくる「沖縄科学技術大学院大学構想の実現」だの「観光立国の実現」などと同じ行数です。

 そこから15ページ離れた「テーマ5 世界の中の日本」というところでは、「『防衛体制』の整備や、『日米安保』の強化などを推進します」など、対米従属やそれにともなった自衛隊の強化などを繰り返し書いています。それと、自民党が既に発表している憲法「改正」案などを組み合わせて考えれば、その11月15日に発表する予定の「憲法草案」において、憲法9条をどのようにするつもりなのかは明白でしょう。
 にも関わらず、この「政権公約」における文言のどこにも「憲法9条をどうするか」などについての具体的な記述はありません。
 今回の郵政問題もある程度重要ではあります。しかし、最高法規である憲法のしかも三大理念の一つとされている「平和主義」の根幹に関わる部分の改廃とでは、次元が違いすぎます。にも関わらず、それを郵政問題の添え物以下のような扱いで「公約」に混ぜ込んでいるわけです。そして、選挙宣伝でも「郵政」の事ばかり。マスコミもそれにあわせた報道をしています。

 マスコミなどによって作られた「郵政民営化は日本を良くする改革」や「公務員は私企業の従業員より優遇されているから削減・減給すべき」というような「お得な健康食品」をちりばめておいて、その片隅に「憲法改正」が小さく書かれているわけです。
 本来、自民党にとっても「憲法改正」は立党以来の党是のはずです。仮に今回の総選挙で大敗したら、その党是が実現できない可能性すらあります。ならば、表紙に大きく「改憲」をかかげ、政権公約でも大きく紙面を割いて宣伝するのが普通のはずです。
 逆に言えば、そのようにせずに、僅かな行数でさほど目立たない所に置くあたり、実際に憲法問題が「争点」となったら有権者がどのような反応をするかが自民党には分かっているのでしょう。つまるところ、催眠商法で本来の目的である高額な羽毛布団を小さく宣伝すのと同じわけです。
 催眠商法の場合、8日間以内であればクーリングオフができるそうです。しかしながら、自民党の改憲という「商品」は一度「買って」しまうと、なかなかクーリングオフはできません。それを考えると、催眠商法よりも迷惑な「商法」とも言えるでしょう。

2005年08月01日

誰にとっての「平和と安全」を保つのか?

 ちょっと前の話ですが、かつて米兵に性暴力を受けた女性の手紙を読んだ外務大臣が、「被害者の心情は受け止めなければならないが、軍隊があるから日本の平和と安全が保たれたとの一面がすっぽり抜け落ちている」「戦争抑止の機能への認識をもらえれば幸いだ」と反論(?)した、という事がありました。
 「軍隊があるから日本の平和と安全が保たれた」という事は、「日本の平和と安全が保たれなかったのは、軍隊がなかったからだ」となります。しかしながら、60年ほど前、歴史上最大の「日本の平和と安全が保たれなかった」事件の直接の原因は米軍の大量虐殺によるものであり、それを誘発したのは日本軍の侵略戦争だったわけです。
 さらに、「戦争抑止の機能への認識」などと言っていますが、現にイラクでは沖縄を根拠にしている部隊を含んだ米軍が戦争を行っており、それを自衛隊は兵站活動などで協力しています。つまり、現在進行形の「戦争推進の機能」を発揮しているわけです。それを「戦争抑止の機能」などと言っているのですから、悪い冗談にもなりません。

 だいたい、「平和と安全を保」ちに来ている軍隊が女性を襲ったり、ヘリを学校に墜落させるという事自体が意味不明です。
 これは日常レベルに置き換えると分かりやすいでしょう。たとえば、警備会社の社員が、そのビルで働いている人を襲ったり、「警備の訓練」と称して備品を破壊すれば、なんらかの賠償金をビルの持ち主から請求されるのが普通ですし、場合によっては契約を解除されるまであります。それを「文句を言うのはいいが、守ってもらっているのを忘れては困る」などといって警備会社の肩を持つビルの持ち主はいないでしょう。

 というわけで、普通に生活している立場からすると、全くもって理解不能な発言です。
 しかし、この大臣氏が所属している内閣のこれまでの言動からすれば、自然な発言と言えるでしょう。この内閣にとって、アメリカ政府の支持を得るのは至上命題の一つみたいなものです。それさえ守れれば、政権が維持できるという立場は、まさに「アメリカに守ってもらっている」わけです。冒頭の発言も「我々はアメリカに守り続けてもらうために、一介の性暴力被害者の発言など相手にできない」と解釈すれば、筋は通ります。もちろん、賛同はできませんが。
 「戦争抑止」についても同様です。イラクの戦争が泥沼化し、アメリカ人の兵士が死傷し、自衛隊員の安全が脅かされても、その被害が彼らに直接及ぶ事はありません。
 実際、60年前の敗戦の時も、当時の天皇制政府はいち早くアメリカに恭順の意を示しました。それにより、日本人だけで200万人以上の一般市民・兵士の命が失われた戦争を行ったにも関わらず、天皇制政府は、10数名の「A級戦犯」の命と引換に、権力の座に止まる事ができました。そして政治思想はもちろん、血縁においてもその流れをくんだ人々が現在の自民党政府の中枢におり、この外務大臣もその一人というわけです。
 当時と同じく、一般市民の命や生活がいくら脅かされても、自分達が安泰ならば、彼らにとっては「戦争抑止がなされている」となるのでしょう。

 このように考えていくと、彼らの言う「平和」だの「安全」だのが、普通に暮らしている我々の「平和」や「安全」とはかなり異なる概念である事がわかります。それを失念してしまうと、60年前同様、彼らの「平和」「安全」さらには「利益」を保つために、自らの「「平和」や「安全」を失う破目になりかねないでしょう。