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2005年10月30日

何が「主」の憲法草案?

 自民党の憲法草案が発表されました。草案の「前文」冒頭に日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定するあるのを受けて、「日本国民が自らの意思で初めて制定した憲法」だと、あたかも「自主憲法」の草案であるように誉めていた新聞がありました。
 アメリカの政府高官は、最近とみに露骨に改憲を期待する発言をするようになっています。ところが、それに対して「内政干渉だ」などと批判する事はこの党にはありません。その代わりに、党幹部がアメリカでイラク侵略を絶賛し、彼のような人が将来、首相として日本の憲法改正に尽力することを期待しているというお褒めの言葉をいただいている、というのが現状です。
 そのような事実はいっさい書かずに、「民主的な自主憲法草案」であるかと論評するわけです。その「なぜか報道されない部分」からも、この憲法草案の本質が伝わってきます。
 ところで、この草案が発表された翌日に、「在日米軍再編の中間報告」と題して、「自衛隊との一体化」方針が発表されました。アメリカ軍の世界戦略に自衛隊がより密接に協力するという、「新憲法」を先取りするかのような内容です。この二つが相次いで発表されたのは何らかの意図でもあるのでは、と思えてきます。

 さて、その「自主憲法草案」の内容ですが、端的に言えば、アメリカの戦略・要求に忠実に応えただけのもの、となります。
 第9条2項の「戦力不保持」を削除され、代わりに「自衛軍」なるものについてが事細かに書き加えられました。そして、前文の政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意も消え、その代わりに国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行うなどといった、イラク侵略戦争協力を意識したような文言が入っています。
 ところで、政教分離にあたる第20条3項は、現憲法の国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。が、国及び公共団体は、社会的儀礼または習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長もしくは促進または圧迫もしくは干渉となるようなものを行ってはならないになりました。要は「靖国参拝の合憲化」を目指したわけです。この「草案」の文章、日本語として非常に分かりにくくなっています。小泉首相の靖国参拝にアメリカのメディアなどが批判したので、わざと先方に分かりにくい文言を用いた、という事はいくらないでもないとは思いますが・・・。

 それにしても、軍事の整備と、「基本的人権の但し書き」だの「国民の責務」ばかりが目立った「草案」でした。国民に好印象を持たせるために新設したらしい「環境権」についても、国は、国民が良好な環境の恵沢を享受する事ができるように、その保全に努めなければならないとの事です。これを読んでとりあえず思ったのは、自民党政府が「山の中の鳥の巣を守るより、その山をぶち抜いて道路を造ったほうが、国民にとってより良い生活環境になる」という認識のもとで工事を行った場合、それが「違憲」になるのか、という事でした。
 という事も含め、アメリカ・軍需を始めとする産業界・自民党政治業者にには益があるものの、一般国民にとっては何の益もない「憲法草案」だと強く思った次第です。

2005年10月04日

政権公約の解釈方法

 選挙のしばらく前に、政府税調が「定率減税全廃、配偶者控除、扶養控除の廃止」などを盛り込んだ、「サラリーマン増税」と呼ばれるものを発表しました。それに対し、自民党は選挙公約で引き続き聖域なき歳出改革に果断に取り組みながら、国民の合意を得つつ、新しい時代にふさわしい税体系を構築する。その中で所得税については、所得が捕捉しやすい「サラリーマン増税」を行うとの政府税調の考え方はとらない。と公約しました。
 ところが、選挙が終わるとすぐに、その政府税調にあった「定率減税の撤廃」に向けて動き出しました。それに対し、「公約違反だ」と問われると、小泉首相はゆっくりとマニフェストを朗読した後、「サラリーマンだけを対象とした増税は行わない、ということだ」とかわしたそうです。
 もしかすると、「サラリーマンだけに増税するわけではなく、自営業者や公務員にも増税するから『サラリーマン増税』ではない」という論法なのでしょう。しかし、実際にサラリーマンは増税をされるわけです。
 だいたい、上に引用した政権公約を読んで、「これは、サラリーマンに対する増税はするが、他の職業の人にも増税するから『サラリーマン増税』という考え方はとらない」と解釈するのは、一般的には難しいのではないでしょうか。少なくとも、あの政権公約を見て、「自民党が選挙後にサラリーマンの税率を上げるつもりだ」と考えたのは、「自民党の政権公約など、しょせんは「このくらいの約束を守らなかったというのは大したことではない」という程度のものだ、と認識している私のような人を除けばいなかったのではないでしょうか。

 これでまだ、政権公約の全てを反故にしてくれるのなら、まだ救いがあります。しかし、「改憲して戦争を起こせるようにする」だの、「教育基本法を変え、戦前のような教育にする」など、国民にとって害になるものは、約束通りに履行する雰囲気なのですから、より一層困ります。

 なお、本記事の例に代表されるように、国民にとって不利益になるような政治を行いつづけている自民党がなぜ先の選挙で大勝したかの原因についての一考察「民」の最新手法を導入した選挙宣伝を、長文集に掲載しました。あわせてお読みいただけると幸いです。