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2006年01月31日

タダ働きと過労死を生む「規制緩和」

 先週末ですが、厚生労働省の「今後の労働時間制度に関する研究会」というところが、「今後の労働時間制度に関する研究会報告書」なるものを発表しました。実質的には「労働時間規制の大幅緩和案」とも言うべき内容になっています。参考記事一覧
 最大の特徴は、管理職のみとされていた、時間外や休日労働の割増賃金なしの「裁量労働」を凖管理職にも拡大する、というものです。分かりやすく解釈すれば、「賃金を上げずに労働時間を増大させる制度」となります。一応、「本人の同意が必要」となっていますが、「仮に本人が拒否した場合に、賃金などに差をつけていいか」についての言及は見られません。
 一方、裁量労働の対象外になる労働者については、「有給休暇について、企業に取得を促進させる」「一定以上の時間外労働をした場合、残業代を割増する」などという、労働者にとって得になる案を出しています。こうやって見ると、労使双方に配慮しているように見えます。

 しかし、実際のところはどうなのでしょうか。「裁量労働」の範囲拡大の適用は簡単です。一度「本人の同意」を得たら、後は残業・休日出勤を前提としたノルマを押し付ければいいのです。こうすれば、経費をかけずに労働量を増やせ、その分が収益にまわるわけです。
 一方、「有給休暇の促進」ですが、こちらのほうは、「裁量労働の拡大」と違い、簡単に実現しそうには思えません。罰則でも設けなければほとんどの企業がこれに従うとは思えませんが、罰則についての記載も見当たりません。だいたい、有給休暇を全部消化しても仕事が片付くのなら、誰だって有給休暇を全部消化します。それができないという事は、労務体制より仕事の量に問題があるわけです。しかし、厚労省はそこに踏むこむつもりはなさそうです。

 この「裁量労働の拡大」は企業側からの要請によるものです。そのきっかけの一つは、トヨタだの東京電力だのといった日本を代表する企業が「サービス残業」という名前で、労働者にタダ働きをさせたのがバレた事です。その結果、未払い賃金の支払いを命じられた企業は儲けが減りました。
 それを受けて、財界が考えたのは、「労基法に沿うように労働時間を改善」でも「時間外賃金の適切な支払い」でもありませんでした。彼らが主張したのは、「時間外賃金の不払いの正当化」で、それを受けて厚労省が発表したのが「裁量労働制の適用拡大」なわけです。
 違法行為をしたほうが、自分たちの利益のために、それを合法化しようとし、それに行政が協力するのですから驚くよりありません。たとえば、18歳未満の相手を買春して捕まった人が、違法となる年齢を引き下げるように法改正を働きかけ、それが実現するようなものです。

 現在、格差拡大に伴なう「景気回復」のおかげで、多くの企業が過去最高の利益を挙げています。にもかかわらず、より一層の利益を挙げるために、より労働者を酷使する仕組みを作ろうとしているわけです。いったい、彼らが描いている日本の未来というものは、どんなものなのでしょうか。想像するとそら恐ろしくなります。

2006年01月22日

自分たちで煽っておきながら

 先週の強制捜査が契機となって株価が大きく下がり、少なからぬ人が大損をしたようです。それについて、日経新聞が「12月に経団連の奥田会長が『バブル期のような雰囲気になってきた』と言っていたにも関わらず、安易にネット取引などで株式投資をしたからだ」という論調で、大損した人達の「自業自得」のように書いています。
 実際、株式投資は自分の責任で行うべきもので、この考え方自体は間違っているとは思えません。しかし、よりによってこの新聞が言うのはいかがなものか、とも思いました。
 この新聞の2面や3面の下段を見ると、「主婦が株で大儲けした」だの「初めて投資した学生が何億円儲けた」みたいな本や雑誌の広告が毎日のように出ています。さらに、紙面に載る記事にも「株式投資を初めて短期間で大きく儲けた人」の例を挙げ、「貯蓄から投資の時代になった」みたいな感じで煽るような文章が一度ならず載っていました。
 もちろん、その頃は日経平均が上がり続けていたわけです。しかし、株なのですから、平均が上がろうと下がろうと儲かる人は儲かり、損する人は損をします。しかし、先日の急落までの約半年間、私の見た限りでは、「株で簡単に儲けた初心者」は出てきましたが、「儲けるつもりで株をやって損した初心者」が記事に出る事はありませんでした。

 それを今ごろになって、「先月から警告はあったのに・・・」などと言うのはいかがなものなのでしょう。だいたい、経団連会長の「お言葉」を出していますが、それが発せられた昨年12月と言えば、今回の株安の原因となった企業の入会を経団連が認めた月です。
 これらの宣伝の根本には、「貯蓄から投資」という考えがあります。これは、一般市民の余剰資金を、元本保証のある貯蓄から、保証のない投資にまわすべきだ、というものです。それによる利点はただ一つ、企業の資金調達が楽になる、というだけの事です。投資した一般市民にとっては、金利以上に儲かる可能性がある反面、元本割れという「リスク」を背負う事になります。しかし、仮にそれによって生じた損失は「自己責任」で出資した人間が受けるだけの事です。その結果彼らがいくら財産を失おうと、財界にもマスコミにもどうでもいい事です。
 マスコミが財界や自民党政府の意を受けて、読者に「主張」をしているのは、この「貯蓄から投資へ」だけではありません。「財政のためには、消費税増税か社会保障削減の二つしかない」「公務員を減らして『小さな政府』を作るべきだ」「日米同盟は最も重要なものである」「今の憲法は時代にそぐわない」なども同様です。つい最近まで主張していたものに「一部の危険性にこだわって、米国産牛肉の禁輸を続けるのはいかがなものか」などというものもありました。
 いずれも、仮にその一般市民が被害を蒙っても、マスコミは「だから言わんこっちゃない」という突き放した論評しかしないでしょう。こう考えると、今回の株安の発生前と発生後の報道の変化は、「マスコミの主張」の中身を知る、という意味では極めて有意義だったとも言えるかもしれません。

2006年01月13日

悪質な業者

 とある大手サラ金業者のサイトを見たら、右下に!ご注意!悪質な業者に注意してくださいというかなり目立つ画像がありました。クリックしてみると、その会社であるかのように装い、TV広告に出てくる「犬」や「社の制服を着た女性」を使ったチラシを使った例や、社名の「フ」を「プ」にしてその業者のように見せかけている例が記載されていました。
 確かに、「名を騙る」という点においては、この大手サラ金業者より「悪質」ではありません。しかし一方で、この大手業者のサイトの金利についての説明を見ると、利息制限法を上回る利率が記載されています。さらに言うと、そこの系列会社が取り立てた利息制限法を上回る利息について、本日の最高裁が支払いは原則無効との判断を下したそうです。
 「悪質」の線引きは難しいのですが、やはり「法律を守っているか否か」というのはかなり重要な判断基準でしょう。そうなると、この大手サラ金業者はどういう質の業者に分類すべきなのでしょうか。

 ところで、TVに氾濫している大手サラ金業者の広告は、最近、「ご利用は計画的に」を前面に押し出しています。「利用者の味方」を宣伝する意図なのでしょう。ならば、それに続いて、「悪質な業者に注意してください」編も作ればいいのではないでしょうか。もちろんそこには、「名を騙る例」のみならず、「法律で定められた以上の利息を取る例」も出てくるわけです。
 ついでに、TV広告の「計画的に」というやつは、借金とあまり関係のない、非現実的な「計画的な行動をしなかったために失敗した例」が微笑ましく描かれるものしかありません。これも、「取立ての電話が職場にかかって詰問される」だの「家に押しかけられて子供が脅される」などという現実的な「計画的でなかった例」に改めたほうが、より利用者にとっては「良質な」広告になるのではないでしょうか。

2006年01月08日

思考停止をうながそうとする「殺し文句」

 自民党政府の政策を宣伝するために商業マスコミが行う「報道」において、しばしば「殺し文句」が作られます。13年前の「非自民政権誕生」の時の「改革派・守旧派(現在でいうところの抵抗勢力)」あたりが特に効果がありました。この当時、「守旧派は地方分権に反対する」と書いておけば、「地方分権」が進むとどのような層が喜んでどのような層が困るのか、などといった考察をしなくても「地方分権の推進=善」という定義づけが成立しました。
 この「改革」という言葉は相変わらず、「この称号がつけば善」になってしまう殺し文句であり続けています。その名のもとに「毎年300億円もの税金を政治業者にばらまく」だの「一部の富裕層はより豊かになる一方で、貧困層は人数も貧しさの度合いも拡大させる」事だのが進められました。それを商業マスコミは「改革」という名前がついているから、という理由で応援しているわけです。

 そして最近、「人口減」もしくは「少子化」という、「改革」に次ぐ新たな「殺し文句」がマスコミで多用されつつあります。ずっとささやかれ続けてはいましたが、特に予想より2年早く人口減となったため、より使いやすくなったようです。
 読売新聞は、正月早々、人口減だから消費税増税という社説を掲載しました。どんな事があっても「消費税増税」を主張している社説が、新たな「口実」を手に入れた、というところでしょうか。
 また、日経新聞の特集記事では、「北海道のある町が、少子化のため、これまで積雪10cmで除雪していたのを、15cmになるまで除雪しなくなった」という文がありました。自治体が雪かき代すらままならなくなっている、という事の原因の一つに、「過疎化による税収減」もあるとは思います。とはいえ、それだけで雪かきの基準が変わったわけではないでしょう。地方交付税の「改革」など、「地方切り捨て」の政策の影響など、他にも要因はいくらでもあります。それを「少子化」の一言で片付けてしまおうとしているわけです。

 「改革」とつければ、その政策は国民にとって益となるなどという事はありません。同様に、「人口減」「少子化」の時代だからと書けば、どんな事でも「人口減」「少子化」だから容認せねばならない、という事もありません。
 このような「殺し文句」を使われている時は、その印象的な言葉の勢いを利用して、自民党政府の政策などを強引に正当化しようとする作業が行われているのでは、と疑ってかかったほうがいいと思っています。