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2010年06月26日

空論による法人税減税宣伝

 経団連とマスコミが、様々な理由で「法人税減税キャンペーン」を行っています。「理由」として挙げるものに「他国に比べると高い」「したがって、このままでは、高すぎる法人税から逃れるために企業が国外に逃げてしまう」「減税により企業が成長し、国全体の経済が上向きになる」「法人税率が下がることにより、海外からの投資が増える」などというのがあります。
 このうち、「他国に比べて高い」ですが、ごく一部の「高い部分」を過大に強調し、実際に支払っている税率や、国際的に低い社会保障の企業負担率の低さをあえて無視して作成された空論です。

 それが空論である「証拠」の一つに、「国際比較」宣伝の後段部分である「企業が外国に逃げていってしまう」にあります。
 新聞などは、毎日のように、この「税金が高いと逃げていく」論を宣伝しています。ところが、同じ紙面の国際面を読むと、奇妙な事に気づきます。
 そこには、よく海外に生産拠点を作った日本企業の事例が出ています。しかし、その理由として書かれるのは「人件費の安さ」や「現地需要を見込んで」がほとんどです。「法人税対策のために海外に」などという記事は一度も見たことがありません。
 もちろん、その理由は、「日本の法人税が他国に比べて高い」という主張そのものが事実と異なるからです。とはいえ、世界には法人税に社会保障の企業負担率などを加味しても日本より企業負担率の低い国も存在はするでしょう。しかしながら、その税率を目当てで、本社機能ごと他国に移転するという会社はどのくらいあるのでしょうか。
 法律・文化・風習の違いなどで、日本よりうまくいかない事も多々あるでしょう。実際、人件費を理由に中国に進出した企業が、ストによって生産停止、という問題が現在進行形で発生しています。
 さらに、長年築いてきた、政・官・マスコミとの繋がりも初期化されてしまうわけです。トヨタが欠陥車を売った問題なども、これが日本だけだったら、政・官もトヨタ側に立つでしょうし、マスコミも大きく報じなかったでしょう。しかし、それらの繋がりが日本に比べて弱いアメリカで問題が発覚したからこそ、トヨタはあそこまで叩かれたわけです。
 そのようなリスクを取ってまで、海外に「逃げる」企業など、本当に存在しうるのでしょうか。
 このように、「日本の法人税は国際的に高い」「したがって、多くの企業が逃げてしまう」という、マスコミの宣伝は、あらゆる点において、現実と大きく乖離している空論である事が分かると思います。

 なお、三番目の「減税により企業が成長し、国全体の経済が上向きになる」ですが、これまた「海外に逃げる」に劣るとも勝らぬ空論です。確かに税金が減れば企業に残る金は増えるので、必然的に利益は増えます。しかしながら、仮にそれで企業が「成長」したところで、その利益を享受するのは一部の富裕層だけです。
 法人税減税によって増える企業の利益は、営業利益に営業外損益・特別損益を加味したものから法人税を引いた「当期純利益」です。しかし、「当期純利益が増えたから配当が増えた」、という事はあっても、「当期純利益が増えたから社員の給料が増える」という話はまず聞きません。
 したがって、法人税が減ったところで、それが回りまわって一般国民の経済を潤す、などということはありません。このあたりは、前回書いた記事も参照していただければ幸いです。
 最後に、四番目に挙げた、「海外からの投資が増える」ですが、率直に言って、これのどこに利点があるのか分かりません。海外からの資金、という事でまず思いつくのはヘッジファンドです。確かに、一時的に資金が入ってくるのかもしれません。しかし、それで儲かるのは投資するほうであって投資先の国民ではありません。
 しかしながら、向こうの都合で資金の引き上げが発生した際は、残された国民には多大な被害が発生します。そんな物騒なものを、「財政危機」のなか、税収を減らしてまで呼びこむ必要があるとは思えません。
 このように調べれば調べるほど、財界・マスコミ・保守政党が合唱している「法人税減税」が、彼らにとってのみ益があり、一般国民にとっては害しかないことがよく分かります。

2010年06月19日

「景気回復」で潤った「個人消費」

 数日前の日経新聞に、上場企業の配当が増加した、という記事がありました。これによって個人消費が増加して、内需に波及するとのことです。
 確かに大株主ともなれば、配当による収入は巨額です。そして、その金の一部は消費に回るわけですから、確かに「個人消費の増加」とは言えます。
 もっとも、そのような事で「個人消費を増やせる」人など、極めて限られています。基本的には株を持っている人です。ただし、一般投資家の多くは、サブプライム破綻などで既に大損しているわけですから、「個人消費」にまわせる余裕などないでしょう。また、当然の事ですが、ただでさえ賃金を減らされている、たいていの給与所得者には、配当で儲ける以前の問題として、株などを持つ余裕などありません。

 というわけで、これによって個人消費を増やせる人は極めて限られています。その中で、トヨタの創業者一族などはその数少ない層になります。ちなみに、昨年の配当で得た金は15億円だったそうです。
 この配当の原資は利益および内部留保です。前回も書きましたが、トヨタがこの前の四半期で黒字になりましたが、それは下請け企業に払う金とと労働者の人件費を削って、利益を搾り出したゆえです。
 つまり、それらの人々の収入が、トヨタ創業者一族など限られた層の「個人消費」にまわった、という話なわけです。人数的で考えると、得した人と損した人のどちらが多いかは言うまでもありません。
 以前から日経新聞は、「企業の収益が良くなれば、それが個人に波及する」と主張していました。それだけを読むと、電車の中で日経新聞を読んでいる会社員の方などは、大企業の収益増による利益が自分にも波及すると思ってしまう事でしょう。
 しかし、実際には、賃金労働者などは日経新聞が言うところの「利益が波及波及する個人」には含まれていなかっただったわけです。それどころか、むしろ配当で儲かる人のための犠牲となる可能性が高いのです。
 このような事実を理解したうえで、商業マスコミの「政治・経済に関する主張」を読めば、彼らの主張する「成長のための経済政策」なるものの本質が、「いかにも全国民に利点があるように見せかけているが、実はごく一部の富裕層にしか利点がない」というものだということがよく分かるのでは、と思います。

2010年06月09日

「パイ」が大きくなった結果

 一時期、「経済のパイ全体を大きくすべきだ」という主張を商業マスコミや経営者が声高に主張していました。要は、企業の収益が向上すれば、経済自体が大きくなり、それによって、一般国民も豊かになる、という論調です。
 その「経済のパイ」はその後どうなったのでしょうか。それについて、しばらく前の日経新聞に興味深い記事が載っていました。
 それによると、3月末の現預金と短期保有の有価証券を合計した手元資金は63兆円と、決算が連結主体になった00年3月期以降で過去最高を記録。日本の10年度予算の一般歳出(53兆円)を上回ったとのことでした。要は、上場企業全体で、使おうと思えばすぐに使える金が、国家予算に匹敵するほど貯まっている、というわけです。

 このように、企業の収益は向上しました。しかしながら、彼らが主張したような、その収益が一般国民に波及する、などという現象は発生していません。
 その理由は極めて明快です。これらの企業の収益向上は、従業員・下請けなどが得るべき金を企業が得ることによって発生したからです。
 一番わかりやすい例はトヨタでしょう。その杜撰な品質管理により、死者を出すような事故を発生させ、全世界的なリコールを受けました。必然的に売上げは落ちましたが、この前の四半期決算は黒字に「回復」しました。
 その理由は、これまでの反省から、安全な自動車を開発し、それが売れた、などというものではありません。マスコミは「コスト削減」としか書きませんが、これまた、画期的な生産方法を開発して、無駄を削ったわけではありません。
 「削減」されたのは、下請けに払う工賃・部品代および、従業員に支払う給料です。つまり、自社の損失を、下請けや従業員に押しつけることにより「黒字化」を達成したわけです。
 一方で、一部自動車の売上げも上がってはいます。しかしながら、その要因は「エコカー減税」だそうです。要は、国のカネで赤字を補填してもらったようなものです。
 もちろん、黒字になったからと言って、下請けの工賃を上げたり、給与を上げるなどという事はありません。
 売上げが増えたら黒字になった会社がより多く生産します。同様に、コストを削減して黒字になった企業は、より一層のコスト削減を計画します。逆の事を行なうなど、ありえないのです。

 というわけで、「『パイ』が大きくなれば末端まで潤う」などという主張が荒唐無稽な誤りであることは、現在の企業と国民の経済状況という、明白な事実によって証明されました。しかしながら、マスコミも経営者も、それを認める事はありません。
 そして最近はもっぱら、「国家財政のために消費税を増税すべきだが、経済のために法人税は減税すべきだ」という主張を繰り返しています。形を変えたものの、「大企業だけ得して国民は損をする」体制を強化する、という意味では「パイ」と何ら変わりありません。
 もちろん、消費税が上がって法人税が下がったところで、社会保障が安定することも、法人税減税が一般国民に波及することもありません。これは、ここ20年の歴史が照明しています。
 しかしながら、それが再度明白になった時には、マスコミも経営者もまた別の手法を用いて、「国民を犠牲にして自分たちだけが儲ける手段」の宣伝をすることでしょう。そして、それらの宣伝を真に受ける人が多数派である間は、彼らは多くの国民が苦しむ中で、収益をあげ続ける事ができるわけです。