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2011年11月26日

事実を無視した「選挙応援記事」

 半月ほど前に出た読売新聞の記事に、大阪市長選の「争点」として「市営地下鉄民営化」が取り上げられていました。
 そこでは、「公営だから無駄な例」を挙げていました。その槍玉になったのは乗り入れ先の私鉄はワンマン運転をしているが、大阪市営地下鉄では車掌が乗務している、という例でした。
 記事の冒頭では、車掌が乗務する理由として近鉄線は乗客の転落防止用センサーが各駅に設置されているため、電車は車掌なしのワンマン運転だ。一方、地下鉄はセンサーがなく、乗降客も多いため運転士、車掌の2人乗務となる。と書いています。
 つまり、同じ電車を使ってはいるが、ホームの設備が異なるうえに乗降客が多いから市営地下鉄ではワンマン運転ができないというわけです。設備もなく、客が多ければ車掌が乗務する、などというのは当然の事です。
 ところが、数行たつと、経営改善が進んだとはいえ、市営地下鉄の営業キロ当たりの人員約44人は、関西大手私鉄5社の平均の2倍以上だ。中央線の例にあるように、官特有の過剰な人員はまだ残る。などと、いきなり中央線の車掌さんは、公営の弊害ゆえに存在する「余剰人員」になってしまいました。
 ちなみに、近鉄にも車掌がいる路線など山ほどあります。一方、読売新聞の本社のすぐ下を走っている都営地下鉄三田線はワンマン化されています。つまり、鉄道のワンマン運転と公営・私営は何ら関係がありません。にも関わらず、車掌さんが「官特有の過剰な人員」と結論づけているのです。

 さらに、民営化すれば、人員削減など経営の合理化が加速し、路線建設に「政治判断」が入り込む余地がなくなる。その結果、「運賃の値下げが進む」と、橋下氏は主張する。などという候補者の発言を、無批判に掲載しています。
 しかしながら、公営鉄道が民営化されたら値下げされた、などという事例はありません。ちなみに、その逆の例はいくらでもあります。なんでも、今回の選挙で「東京メトロは民営化されたら値下げした」などと言っている人がいるそうですが、もちろんこれは根も葉もないつくり話です。
 ついでに言えば、国鉄は「民営化」されましたが、その後も、「政治判断」が入り込んでの新幹線建設は行われ続けています。つまり、ここで掲載された氏の発言は、一つ残らず事実と反しているわけです。しかし、この記事ではそれに対する指摘は一切ありません。
 ついでに言うと、大阪市のすぐ近くの福知山線で「民営化」が契機となっての競争重視と労働強化方針によって、6年前に大惨事がおきました。しかしながら、この記事はそのような「民営化による問題点」についても一切書かれていません。

 その後も、両論併記の体裁をとりながら、市営地下鉄民営化およびそれを主張する橋下氏の視点ばかりで記事は進んでいきます。これでは、事実を報じる「記事」ではなく、単なる特定候補の「選挙公報」であると言うよりありません。
 橋下氏が当選して大阪市営地下鉄が私企業になると、スポンサー筋などの関係で読売新聞の利益になるのでしょう。それゆえ、このような論理性もなければ事実検証も一切行なっていない「選挙応援文」を「記事」と称して掲載したのかと思われます。
 改めて、日本の商業マスコミの本質は、大本営発表を垂れ流した1940年代後半から何一つ変わっていないのだ、と痛感させられた、「記事」でした。

2011年11月17日

派遣法改正を骨抜きにした勢力

 派遣労働者法の改正案として、製造業派遣と登録型派遣を禁止する条項が盛り込まれる事になっていました。それを削除する事を、民主・自民・公明が合意した、というニュースを見ました。
 削除された経緯として読売新聞は経済界に「急な仕事の発注に対応できない中小企業が影響を受ける」などと反対意見が強い。自公両党も経済界の懸念を踏まえて政府案を批判。という記事を書いています。
 この文章を読むと、なんか中小企業に配慮したかのように思われます。しかし、もし「中小企業のため」というのならば、「製造業派遣・登録派遣は禁止。ただし、資本金3億円以下並びに従業員300人以下で連結対象でない企業には当分の間猶予」などという例外規定を設け、大企業のみ禁止にすればいいだけの話です。

 また、「経済界」がそのように中小企業を心配するならば、なぜ大企業は、ちょっとでも売上が下がると、すぐに下請け叩きや切り捨てを行うのでしょうか。そちらのほうがよほど「中小企業が影響を受ける」と思うのですが・・・。
 つまるところ、実際は自分たち大企業が、今まで通り派遣社員を自由に切り捨てて、利益を増やしたいだけの話なわけです。そして、その主張の建前として「中小企業のため」などという心にもない言葉を使うわけです。「日本経済のため」などといいながら、自分たちだけが儲かるような主張しかしない、財界らしさがよく出ています。
 そして、その主張を受けて法案を骨抜きにしようとする政治業者および、「中小企業のため」などという空虚な建前を無批判に掲載する新聞の姿を見れば、彼等が財界と一心同体である事がよく分かります。

 この国で権力を持っている集団が、いかに自分達の利益しか考えておらず、そのためには他人の不幸などどうでもいいと思っている事、およびその口実として平然と嘘の理由を主張するかが、改めてよく分かった一件でした。
 同時に、この権力構造が続く限り、一部の豊かな人々がさらに莫大な利益を得るために、さらに多くの働く人が切り捨てられる、という構図が変わる事はない、ということを改めて実感しました。