北朝鮮攻撃のキャンペーン報道について

2002/09/23

 今回の会談における金正日の言動にはかなりの不快感と怒りを感じた。世襲による国家権力の継承者で、国内では絶対者としてふるまっているような人物が「あれは一部の組織が勝手にやったことで、犯人は処分済みだ」とあたかも自分が被害者であるかのような言い訳をしたのだ。
 国家レベルで非人道的行為をやっておきながら、責任を他人事のように語り、自分はむしろ解決の功績者であるかのような言い草である。こんな恥知らずな国家権力者が二人といるとは思わなかった。
 以上は、筆者が会談の内容をただ伝える報道を読んだ感想である。ただ、金正日に不快感を覚えたとはいえ、ブッシュのアフガン・イラク攻撃に関する言動に対する不快感と同レベルのものである。もちろん、ブッシュに怒りを覚えたから全アメリカ人を敵視していないのと同様に、金正日に怒りを覚えたからといって全北朝鮮人に敵意を覚えはしなかった。

 しかし、会談当日から出た週刊誌・夕刊紙の報道は違っていた。週刊ポストの「ふざけるな北朝鮮!」などという巨大な見出しを筆頭に、「拉致をした悪の国家・北朝鮮」という見出しでいっぱいだった。
 しばらく前に、新潟で少女を拉致して自宅に監禁していた事件があった。極めて非人道的な犯罪であるが、だからと言って容疑者本人はともかく、その一族郎党を敵視する必要はない。同様に、金正日とその手下の行いが許しがたいものであっても、それと北朝鮮全体を敵視する必要はない。にもかかわらず、国家全体を敵視するような特集記事を組むのは正常とは言いがたい。
 また、毎度の事ながら、今回の会談の後に、朝鮮総連に放火を予告するような脅迫電話をかけたり、朝鮮人学校の生徒を襲うといった犯罪者が現れた。しかし、ある週刊誌はそのような事件を「このように日本人は怒っている」と書いた。国家的に何がおきようとも、脅迫や傷害は犯罪である。にもかかわらず、この雑誌の書き方ではそれを正当化しているも同然だ。
 各社横並びの没個性的な見出し。そして、論理ではなく感情で読者を扇動しようとする編集方針。これでは60年前の「鬼畜米英」報道と何ら変わりない。
 60年間の間、新聞・雑誌などを作成する技術は大幅に向上した。しかしながら、作る側の頭の中身は、当時と同レベルだった事が今回の件で浮き彫りになった。というよりむしろ、60年前の報道によって国民がどのような被害にあったかを知りながら、同じ事を繰り返しているのだから、退化したと言ったほうがいいだろう。


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