自衛隊イラク派兵がもたらすもの

2003年イラク戦争・その3

 イラク復興支援特別措置法案(イラク特措法・NHKでは「イラク支援法」)なる法案が衆議院を通過した。なんか分かりにくい名前の法案だが、要は「イラクに武装した自衛隊員を派遣する」わけである。現在のイラクは、春先に「大量破壊兵器をイラクが保持しているから(いまだに発見されないが)」という名目で米英に侵略をされ、占領状態となった。
 しかし、イラク国民は各地で抵抗を続け、各地で連日のように死者が出ている。そこに、一貫してアメリカのイラク侵略政策を支持しつづけ、春先の戦争では直接戦闘に参加こそしなかったものの、ペルシャ湾まで軍艦を派兵した日本の軍隊が武装して行く訳だ。つまり、この法案を具体的な意味から名づけると「イラク占領支援派兵法」となるだろう。
 「復興支援」などという美名とマスコミの宣伝をあわせ、「イラクはアメリカのおかげで残虐なフセイン政権から解放してもらったが、国土は焼け、フセインの残党も残っている。それを救う手助けを日本もするのだ」みたいに誤解する人も少なくないだろう。
 しかし、イラク国民が自衛隊の派兵を望んでいるわけではない。わずか数ヶ月前の戦争で、イラクは多くの国民を虐殺されたのだ。その虐殺を、国際政治・軍事の両面で片棒をかついだ国の軍隊に来てほしいと思う人などいるわけがない。、

 では何を行いに自衛隊は行くのだろうか。現在、アメリカ軍は今でも、イラク国民を殺しつづけている。したがって、その手下とも言える自衛隊員も、イラク国民を殺しに行くわけだ。実際、国会での首相や防衛庁長官の答弁でも、現地で自衛隊員が人を殺す可能性について否定していない。イラク人を殺すための武装をしながら、「復興支援」とはタチの悪い冗談としか言いようがない。
 以上の事から、イラクに自衛隊を派兵するのは、イラク国民の要望でもなければ、日本のイラクへの好意によるものでもない、という事は分かると思う。

 1990年の湾岸戦争をきっかけに、「国連の平和維持活動」というお墨付きのもと、PKOやPKFという形で自衛隊は海外に派兵されるようになった。そして、そして、今回のイラクの派兵により、国連のお墨付きなしでの派兵が実現させようとしている。
 このような流れになった理由としては、配下の国の軍隊を自軍の補完戦力として使いたいというアメリカの意思がまずある。とはいえ、今回のイラクにおいては、多くの国がアメリカなどによる派兵の要請を断っている。したがっていくら日米安保条約があろうと、経済的に大問題を抱えている日本も、派兵をしないという選択肢は十分にあるわけだ。
 にもかかわらず、なぜ派兵にこだわるのだろうか。もちろん、海外進出をしている大企業にとって、軍事力がバックについているほうがやりやすい、という財界の意思もあるのだろう。しかしそれ以上に感じるのが、自民党政府の「かつての大国の夢よもういちど」的思想である。
 首相をはじめ、政府高官の発言は常に「平和憲法敵視」「軍事力重視」「戦前回帰」的なものばかりである。そのような時代感覚のズレた悲願の達成のために、武装した軍隊を送りつけられるイラク国民はもちろん、戦地で命の危険にさらされる自衛隊員もたまったものではないだろう。


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