第一章 投票率を下げるような報道
まず最初に、なぜ人は選挙に行かなくなったか、という事について考えてみる。
選挙期間中のマスコミの報道は、建前としては「不偏不党」のようだ。その結果(?)普通は各政党の発言を併記し、客観性のある報道をこころがけているようだ。
で、「不偏不党」の報道をした結果どうなるか。普通の報道なら各政党の言うことを併記する。その政党の「公約違反の実績」は考慮しない。
当然ながら、政権党はマスコミ用の「公約」では自分にとって不利なことははぐらかそうとする。そういうのもそのまま報道すれば、「争点がはっきりしない選挙戦」になってしまう。それにより、有権者は「どの政党も同じような事を言っている」と誤認してしまう。
さらにマスコミは、批判的な報道も「公平」に行う。「結局どの政治家もダメ」的な報道である。そんなものを真に受ければ、「誰もダメなのだから投票しても意味がない」と思ってしまう人が出てくるのも無理はない。
そしてとどめが投票後の報道だ。低投票率についてふれたあと、他人事みたいに「争点がはっきりしなかったのが原因」などとしらばっくれるのだ。争点のなかった選挙などない。ただ、争点が明確化されると都合の悪い勢力が、争点をごまかそうとし、マスコミがそれにあわせた報道をしてしまっただけなのである。ついでに言えば、仮に本当に争点がなくたって、選挙に行かないでいい、などという事はない。
選挙報道でマスコミがすべき事は、「今、何を言っているか」よりむしろ「これまで何をしてきたか」だろう。特に前回の選挙から今までの間に「公約した事をどれだけ実現したか」「倫理面で問題はなかったか」などを整理して報道すればいいのだ。各政党・候補者の主張などは、選挙公報にまかせておけばいい。マスコミの使命は「事実」を報道する事だ。そして選挙における明確な「事実」は「今何を言っているか」ではない。「今まで何をやってきた上で何を言っているのか」なのだ。