選挙制度を変える動きについて

 現在、参議院の選挙制度を変えようという動きが問題になっている。自民党などが目指している非拘束式名簿式比例代表制というのは、要は「有権者に『自民党』という名前を書く人が減っているから、党名でなく、候補者名を書く選挙にし、その一方で自党の候補で高得票を挙げた候補者がいた場合は、その得票を自党の他の候補者にまわす、というものだ。
 このような制度にすれば、タレント候補の類を何人か出馬させておけば、その人への得票を他の候補の得票とすることができ、議席を増やすことができる。そのあたりが狙いなのだろう。
 選挙制度に対する考えは人それぞれである。筆者個人としては、全て拘束名簿式の比例代表制にし、得票率に応じて議席を配分するのがもっとも民意を反映した民主的な方法だと考えている。だからといって、それ以外の選挙制度を望む人や政党が良くないとは言わない。

 しかし、今回の動きは選挙制度の内容そのもの以上に重大な問題がある。それは、今回の新選挙制度が浮上したきっかけにある。
 今回の話は、久世金融再生委員長(当時)が参院比例区で自分の名簿順位を上げるために、企業や宗教団体から便宜を供与されていた事が判明し、金融再生委員長を辞めた事に端を発している。
 自民党などでは、参院比例区において、名簿の順位を獲得した党員数(=収めた党費の額)によって決めていた。だからと言って、各候補者やその後援者が国民に自民党の政治理念を説いて入党を呼びかけ、党費を徴収するわけではない。久世氏がやっていたようにとにかく金と頭数を集めていたわけだ。
 このような方法は大いに問題があり、正すべきである。しかし、「納入した党費の額に応じて名簿順位を決める」というのは自民党などが党内で勝手に決めたやりかたであり、これ自体は選挙制度でもなんでもない。にもかかわらず、党内の規定と選挙制度そのものを同一視し、選挙制度を変えようと−しかも自党に有利なものに−しているわけである。
 このような動きは今に始まった事ではない。かつて企業献金が問題になった時に、「企業献金をなくすなら、政党助成金制度が必要。それから5年後に企業献金は見直す」などと言って企業からも税金からも金をもらう仕組みを作った。そして5年たっても企業からも税金からも金を貰い続けている。つまり、企業献金批判を利用して、収入を増やしてしまったわけだ。
 自分たちの失点を反省・改善しないどころか、それに対する批判をそらすために自分たちにとって都合のいい制度を作る。これが常態化されてしまったら、日本の政治はさらに救いがたいものになるだろう。



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