日本は、企業の法人税と高額所得者の所得税が下がり続けています。
その口実として、財界も政府もマスコミも、「税金が高いと、彼らが国外に出て行ってしまう」と主張します。
つまり、優れた経営者が日本にいてくれれば、それだけ経済が活性化し、日本全体の利益になる、という論法です。
しかしながら、これは事実に反しているのではないでしょうか。
下の表は、しんぶん赤旗2016年4月16日付に掲載されていた表を元に作成した日本の長者番付50人です。
業種並びに、その人が経営している会社の「ブラック企業」ぶりを表す備考欄は、筆者が追記しました。
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そして、背景色が異なる四人は、しんぶん赤旗2016年5月9日に掲載された、税のがれをしている経営者です。
なお、この四人を除いた人が「税のがれ」をしていないと確定しているわけではありません。今後予定されているパナマ文書の公開進展によっては、さらに増える可能性もあります。
また、備考欄についても、ここが空白なら「ホワイト企業」と決まっているわけではありません。
さて、この表で特に目立つのは、日本で最も資産を保有している、ファーストリテイリングを率いる柳井氏です。
ユニクロをはじめ、この系列の企業は、「ブラック労働」が問題になります。
新卒の離職率・サービス残業・中国工場での過酷な労働など、さまざまな問題が報じられます。
一度、問題を報じた週刊誌に発行差し止めと回収、謝罪広告と2億2000万円の損害賠償を求めて提訴したものの、敗訴が確定しています。
要は、裁判所お墨付きの「ブラック企業」となったわけです。
さらに、しんぶん赤旗の記事では、「7億円の税のがれ」が指摘されています。
他にも、税のがれが指摘されている経営者は、その企業が「ブラック」ぶりでテレビに取り上げられたり、「ブラック企業大賞」として「表彰」されたりしています。
こうやって見ると、冒頭に書いた「彼らが海外に出てしまう」という論調がいかに見当はずれかわかります。
既に彼らは資産を海外に移して税のがれを実行しています。つまり、法人税や高所得者の所得税を下げても何ら変わりません。
そして、彼らの莫大な富の源泉は、働いている人を酷使して得たものです。そのような経営者が頑張れば頑張るほど、日本で働く人は低賃金で酷使されてしまうわけです。
つまり、富裕層をいくら豊かにしても、日本全体で見れば、むしろマイナスなのです。
したがって、彼らからはかつてのような、適切な税率での法人税と所得税を払ってもらい、さらに「税のがれ」や「違法労働」には高額な罰金を課すなど、厳しく対処したほうが、日本全体にとってはプラスになるのではないでしょうか。
そのような「税金の集め方」「働き方」の見直しを行わなければ、日本はこれまで以上に、経済が停滞するのでは、と考える次第です。