3.投資信託

2002/07/22

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 超低金利時代になって久しい。「利子生活者」という言葉もすっかり死語になってしまった。普通預金と定期預金の違いは「簡単におろせるかどうか」になってしまった。
 我が家の場合、給料の範囲内のみで生活設計をしているので、預金の利子などは、なければないで別に困りはしない。とはいえ、やはり持っているお金は多ければ多いほどいい、という考えはある。そこで、ある日、オンラインバンキングを行ったついでに見かけた、その銀行のサイトにあった「資金運用相談についての適性検査」みたいなコーナーのアンケートに答えてみた。
 その結果通知メールによると、筆者にとって最適の「金融商品」は、残高が50万円以上になると時間外やコンビニATMの利用手数料が無料になる「スーパー普通預金」との事だった。これの「リスク」は預金額が10万円を切ると月に315円取られる、という事のみ。そしてメールの末尾に「これの申込書を郵便で送る」と書いてあったので、これはいいサービスだ、と喜んだ。
 数日後、銀行からやけにぶ厚い封筒が届いた。確かにメールの末尾には「スーパー普通預金とは別に、投資信託の資料も送る」とは書いてあった。参考資料程度ならいいか、と思っていたのだが、こんなに大量に送りつけるとは思わなかった。だいたい、アンケートの結果、「スーパー普通預金」が一番いい、とメールしてきたのはそちらの銀行ではないか。人に向かない物を送りつけてどうするんだ、とも思った。
 投資信託というものの詳細を知っているわけではない。これまで預金となっていた国民の資産を投資に向けさせる、という政府の方針を具現化したものの一つであるくらいなので、少しは知っていた(参考資料・財務省の税制調査会金融小委員会の資料)。
 具体的な内容だが、読んで字の如しで「投資したものを信託会社が運用する」という事くらいは見当がつく。信託会社の運用方法などにより、多数の金融商品が存在するようだ。いろいろと説明が書いてあるが、一番重要と思われるのは「預金と違い、リスクが存在するため、元本の保証はできない」という事だ。
 一方、利点となると「ハイリターン」という事になるのだろう。運用に成功すれば年利0.0何パーセントの定期預金などよりは儲かる、というわけだ。調べてみたら3割くらい殖えるのもある。確かに高リターンが確実であれば、それを買えば得をするだろう。しかしながら、そんなものは「当たりが決まっている馬券を買う」というのと同じ意味である。
 結局のところ、投資信託というのは、競馬や競輪のように「一定額を払って、うまくいけば、『投資額+儲け分−手数料』が手に入るが、失敗したら『投資額−損益分−手数料』を失う」というだけのもののようだ。要はJRAや自転車振興会の代わりを銀行がやって、騎手や馬などの代わりを信託会社がやる」という感じだろう。
 したがって、信託会社そのものの実績・信託会社の投資先の実績・現在の経済状況などを徹底して調べて、なおかつ運がなければ、投資信託で資産を殖やすのは難しそうだ、という結論に達した。それらを調べる根気・熱意もなければギャンブル運もない筆者には最も向かない「財テク法」と言える。
 これだけ熱心に勧めるところをみると、銀行にとっては割りのいい「金融商品」なのだろう。しかし、素人がうかつに手を出すととんでもないことになりそうだ。ちなみに筆者宅に大量の投資信託のチラシを送ってきた銀行の名前を関した信託会社の実績をヤフーの投資信託のページで見たところ、19種類の商品のうち、プラスが2、マイナスが17だった。中には12ヶ月で-31.84%、などというものすごい商品もあった。それを「預金ではないのでリスクがあり、元本が保証されるものではありません」という抽象的な注意書きしかつけずに勧める、というのはいかがなものだろうか。「信託」というのは文字通り、「相手を信じて財産を託する」ものだ。しかしこれではその「信」を確立することができない。
 やはり自分は「スーパー普通預金」でコンビニATMの手数料を節約するというのが唯一にして最善の「財テク」だ、などと考えながら、大量の投資信託のチラシをまとめてゴミ箱に直行させた。
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ブログ「これでいいのか?」