政治業者の利益集団

2.利益を生む仕組み

2003/06/20

前へ次へ
 前回は、政治業者という言葉の定義と、そのあくなき収益追求への欲深さについて述べた。今回は、より具体的に彼らの「収益活動」について書いてみたい。
 通常の業者は財物やサービスを販売し、その対価として金銭を受け取る。「政治業者」も同様に「政治」という「商品」を販売して、金銭を受け取るわけである。その仕組みはいったいどうなっているのだろうか。
 一番分かりやすいのは「公共事業」である。税金を使って大規模工事を行い、その見返りとして建設業者などから報酬を受け取る。もちろん、露骨に「報酬」とやるとまずいので、「政治献金」だの「パーティー券」だの「広告料」だの「利息も取立ての一切ない借金」などという形で受け取るわけだ。

 その有名な例としては「長良川河口堰」がある。この河口堰は1960年頃に「工業用水の確保」を目的に計画された。しかし時とともに工業用水の需要が減った。加えて、この河口堰ができると、長良川の環境が悪化する事が判明したため、反対運動も行われるようになった。目的は失われ、デメリットが明らかになったのだから、その時点で河口堰建設は中止するのが普通だ。ところが、理由を変えて工事は続けられ、完成・運用された。目的が転々とした上、最後には「塩害防止」という当初とはかけ離れた目的となった。
 反対派の調査では塩害の存在および今後の塩害の可能性も認められなかったそうである。(参考サイト)。また、素人が考えても、「工業用水供給」と「塩害防止」が同じもので実現されるとは思えない。「工業用水供給」の需要がなくなった時点で一旦計画を白紙に戻し、「塩害対策」としてもっとも効率のいい方法を探すのが筋だろう。ちなみに工事費は1,500億円を越えたらしい。財源は国民の払った税金だ。
 この問題を「工業用水対策」「塩害対策」として考えると理解できない。しかし、政治業者の収益活動と考えると非常に分かりやすくなる。
 政治業者は収益を得たい。収益を得るには最初に書いたように「政治」を売るわけだ。大きく利益を得るには高価な「政治」を売ればいい。そのためには大規模な工事(この場合は河口堰)を造るのが収益率が高くなる。
 つまり、この長良川河口堰を造る目的は「政治業者が多額の税金を動かして、その見返りを業者から受け取る」事にあったわけだ。これなら、「理由」が「工業用水」から「塩害対策」になったのも理解できる。なにせ、「理由」などは瑣末な付帯事項でしかないのだから。
 諫早湾などのように、海や湖を干拓したケースはさらにすごい。これらの公共事業の建前に「農地造成」があった。しかし、その一方で国は「減反政策」を行っているのだ。多額の税金を投入して農地を造り、一方では農家に「農地を減らして生産を下げろ」と命じているわけである。ここだけを見ると正気の沙汰ではない。しかしこれも、「農地造成」は政治業者が収益事業を行うためにこじつけた建前、と考えると分かりやすくなる。
 以上二つは、かなり大きく話題になった例だ。しかし他の公共事業(橋梁・港湾・道路・鉄道)などでも基本的に根っこは同じだ。「ムネオハウス」などはその中の露骨過ぎた一例でしかない。

 日本人は子供の頃からなんとなく「政治家は偉い」というような感覚を持たされている。したがって、政治家の下した決断は、高度な知恵を集めて行われたもの、という風に考えがちである。しかし、実際のところは、ただの「収益事業」でしかないのだ。そのような視点で「政治問題」をとらえると、いっけん難しそうに見える事でも、実は単純である事がわかるだろう。
前へ次へ


ブログ「これでいいのか?」