政治業者の利益集団

3.税と福祉に見る「収益事業」

2003/10/19

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 自民党政府が3%の消費税を導入したのは1989年の事だった。その頃は、「来るべき高齢化社会に備えて、福祉のために」と宣伝されていた。その後、1997年には5%に引き上げられた。この時も、福祉財源が導入の建前の一つに挙げられた。
 そして、消費税が導入されて15年目になった。しかしその間、福祉が良くなった事はない。現在の勤労者の退職後の年金は、すでにかなり減額される事が確定している上に、その額すら支払われる保障はどこにもない。医療費の負担率も上がった。老人に対するサービスも削減される一方だ。
 さらに1997年の消費税値上げは日本経済にも大きな悪影響を及ぼした。バブルが弾けた後の長期不況から、やっと回復傾向が見えた矢先に物価が上がったのだから無理はない。回復の芽は完全につぶれ、いまだにその不況から脱出できないのが我が国の現状である。
 このように、消費税というのはこの15年間、その建前である福祉には何ら寄与していない。その上、国民生活にも多大な悪影響を及ぼしている。にもかかわらず、
 その一方で引き下げられたのが法人税だ。こちらの引き下げの名目は「外国より税率が高いので、日本の企業は生産拠点を海外に移して空洞化する。それを防ぐためだ」というものだ。そんな事を言って法人税を下げているうちに、外国並みの税率になった。にもかかわらず、日本経済は冴えないままだ。そして、日本企業が中国などに進出するのも相変わらずだ。

 結局、「消費税=福祉のため」も「法人税減税=空洞化抑止」も、過去の例から見ると実効性が乏しい。しかしながら、相変わらず財界やマスコミは「消費税増税・法人性減税」を主張し、現在行われている選挙でも「二大政党」である自民党・民主党の双方が「マニュフェスト」には明記しないものの、消費税値上げに向けての発言を行っている

 国民生活には何ら役に立たないにもかかわらず、このような事になるのだろうか。これも、「政治業者が収益活動をしている」という考えを前提にすれば解りやすくなる。
 経営者は収益の向上を目指す必要がある。しかし、現在の日本経済の状況では、普通にやっていてはなかなか収益向上は難しい。そこで、支出を切り詰めて収益を上げようとする。そのためには、法人税はもちろんのこと、社会保険の企業負担分の減額も重要になってくる。そこで、経営者の団体である日本経団連などは、法人税率の引き下げや、社会保険の企業負担分を下げてその分を消費税増税でまかなう事を主張するわけだ。
 それを実現するために、政治業者に協力を要請し、その「活躍度」に応じて政治献金を払うようにする。こうすれば、政治業者は、財界の意向に従えば従うほど、収益が向上するわけだ。
 一方、消費税増税などで支出が増える一方、法人税引き下げの恩恵にもあずかれない我々一般市民の場合はどうだろうか。確かに、「個人献金」などをする事は可能だが、その額はタカが知れている。少なくとも、日本経団連に張り合うのは不可能だ。つまり、政治業者にとっては、「不採算部門」なのだ。当然、業者としてはそのようなものは切り捨て、収益率の高い財界の主張を実現させるために動くわけである。一般市民への対策としては、選挙のときに消費税増税の本音を見えにくくした「マニュフェスト」を作るくらいで十分なわけだ。

 まとめてみると、税制・社会保障制度の改変により、大半の一般市民は負担増を強いられる→その負担分が大企業の収益増にまわる→制度改変に協力した政治業者にその収益増の一部を報酬として支払う。という構図だ。こうして、政治業者も財界も収益を上げるわけである。両者の事だけ考えれば「win−winの関係」と言えるのかもしれない。
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