世界中の笑いもの

 イラクに行っていたフィリピンの人が「武装勢力」に捕まり、解放条件に「フィリピン軍の撤退」が挙げられました。それに応え、フィリピン軍がイラクからの撤退を始めました。3ヶ月ほど前に日本人がらみで同様の事件が発生した時、自民党政府やその意を受けたマスコミは「ここで『テロに屈した』ら世界中の笑いものになる」などと主張し、同時に「人質」中傷キャンペーンを張りました。
 しかし、実際に撤兵を開始したフィリピンですが、「世界中の笑いもの」などになっている様子はありません。もちろん、派兵を必要としているアメリカや同盟国であるオーストラリアなどは撤兵を批判しています。しかし同時に、隣国でもあるイスラム教国であるマレーシアは撤兵を歓迎しています。
 まあ、普通に考えれば、どんな案件だろうが、国によって評価が変わるのは当然のことでしょう。にもかかわらず自民党政府やマスコミは、「世界中の笑いものになる」などと、あたかも「人質をとられての撤兵」が、万国共通の恥であるかのように宣伝したわけです。
 もっとも、彼らにとっての「世界」とはアメリカとその同調国・属国の支配層だけで、それ意外の国や市民の考えなど眼に入らないだけなのかもしれませんが。
 いずれにせよ、「世界全体の笑いもの」(似たような言葉に「国際社会から孤立する」なんてのもありますね)などと言った宣伝が使われているときは、「非常に視野の狭い論調だ」もしくは「存在し得ないものを論拠に主張している」と認識する必要がある事だけは確かなようです。

 7月27日追記。
 本日の読売新聞に、期待通り(?)、比大統領、国際批判かわすという記事が載りました。
 この新聞社にとって「国際社会」にはマレーシアは存在しないようです。また、最初からイラク戦争に反対していたフランスや中国、さらには一度は派兵したが撤兵したスペインのような国もフィリピンを批判しているかのようです。
 さらに言えば「社会」と「政府」は違います。ご存知のとおり、アメリカやイギリスにもイラク侵略・戦争に反対している人はいくらでもいます。これらの政府・市民の存在を無視して、世界全体では少数派になる国の政権による見解だけを取り上げて「国際社会の批判」としたわけです。
 ついでに言うと、この記事によるとイラクでは比部隊撤退後、インド人らが人質になるなど、国際社会が懸念した「人質の連鎖」が起きているそうです。フィリピンの事件前に人質になったのは、殺されたアメリカや韓国の方を初め、何十人もいます。この論法だと、その危険性については「国際社会」とやらは懸念していなかった事になってしまいますが・・・。
 それともフィリピン事件以前の人質は全て「自己責任の自業自得」で、それ以降の人質事件は「フィリピン撤兵が原因の『人質の連鎖』だ」とでも言いたいのでしょうか。

 なお、本記事につきましては、「はなゆー」さんの「低気温のエクスタシー」を参考にさせていただきました。

 

世界中の笑いもの」への2件のフィードバック

  1. さて、愛国心が湧いてくる国はどっち?

    イラクでのフィリピン人人質の方、無事解放されて何よりでした。 これに関連して、 nanayaのひとりごとさんのブログでフィリピンのメディア、米・豪の批判に反論という記事。 米・豪の脅しにめげず、撤退を敢行したフィリピン政府も見事ですが、メディアの反論も見事で…

  2. 長いものに巻かれたくないなぁ

    アメリカと仲良くしたいんですね。
    防衛白書 国際活動「高く評価」 本来任務に格上げ 「MD」絡み見直し
    ・・・日米間で行う迎撃ミサイルの構成品に関する共同技術研究が共同開発に・・・
    今後の防衛力整備のあり方について
    〓防衛生産・技術基盤の強化に向け…

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