カテゴリー別アーカイブ: 平和

誰にとっての「平和と安全」を保つのか?

 ちょっと前の話ですが、かつて米兵に性暴力を受けた女性の手紙を読んだ外務大臣が、「被害者の心情は受け止めなければならないが、軍隊があるから日本の平和と安全が保たれたとの一面がすっぽり抜け落ちている」「戦争抑止の機能への認識をもらえれば幸いだ」と反論(?)した、という事がありました。
 「軍隊があるから日本の平和と安全が保たれた」という事は、「日本の平和と安全が保たれなかったのは、軍隊がなかったからだ」となります。しかしながら、60年ほど前、歴史上最大の「日本の平和と安全が保たれなかった」事件の直接の原因は米軍の大量虐殺によるものであり、それを誘発したのは日本軍の侵略戦争だったわけです。
 さらに、「戦争抑止の機能への認識」などと言っていますが、現にイラクでは沖縄を根拠にしている部隊を含んだ米軍が戦争を行っており、それを自衛隊は兵站活動などで協力しています。つまり、現在進行形の「戦争推進の機能」を発揮しているわけです。それを「戦争抑止の機能」などと言っているのですから、悪い冗談にもなりません。

 だいたい、「平和と安全を保」ちに来ている軍隊が女性を襲ったり、ヘリを学校に墜落させるという事自体が意味不明です。
 これは日常レベルに置き換えると分かりやすいでしょう。たとえば、警備会社の社員が、そのビルで働いている人を襲ったり、「警備の訓練」と称して備品を破壊すれば、なんらかの賠償金をビルの持ち主から請求されるのが普通ですし、場合によっては契約を解除されるまであります。それを「文句を言うのはいいが、守ってもらっているのを忘れては困る」などといって警備会社の肩を持つビルの持ち主はいないでしょう。

Continue reading

「対テロ戦争」の戦果

 ロンドンで大規模テロが発生しました。現時点での死者は50人以上だそうです。
 事件の起きたイギリスは、イラクなどで2年以上も続いている「対テロ」戦争において、アメリカに次ぐ兵力を供出しています。参戦時には「イラクは45分以内に大量破壊兵器を使える」などといった情報を作り上げたりもしました。
 イギリスの金銭的・人的負担がどのくらいのものだか分かりません。そして、そこまでかけてまで戦い続けた「対テロ戦争」の「戦果」がこの首都での大量虐殺となったわけです。
 改めて、彼らが「対テロ」として言っている事や実際に行っている事が、自らの国の一般市民の安全には役立たないという事が確認されたと言えるでしょう。「テロ」の標的が、アメリカ・イギリス・そして我々も含む日本の一般市民であるのと同様、彼らの「対テロ」の標的はイラクなどの一般市民です。そして、「対テロ」によってイラクなどの一般市民が惨殺されればされるほど、我々の生命が脅かされる事はあっても、安全になることはありません。

Continue reading

15年戦争の「勝ち組」「負け組」

 1945年まで行われた戦争において、日本は負けたという事は一般常識と言っても差し支えないでしょう。実際、広島・長崎の原爆をはじめ、多くの都市が焼き払われ、その結果、多くの一般市民が殺されました。そして、徴兵された人々は海を渡った先で殺人をはじめとする残虐行為を強制された上、相手の反撃や食糧難・疫病などでこれまた多くの人々が死んでいきました。
 このように、大多数の国民にとって、あの戦争は手痛い被害を受けた「負け戦」でした。今風に言えば、「負け組」となってしまったわけです。しかし、これは全ての日本人にとってそうだったのでしょうか。

 たとえば、軍需工場を経営していた企業などで考えてみます。国という「お得意先」から大量の受注があった上に、学徒動員だの強制連行だので安い労働力を得る事ができました。もちろん、空襲による生産設備破壊という負の要因ももありました。しかし、最終的な損得がどうだったのでしょうか。資料がみつからなかったので分からないのですが、興味深いところです。
 また、敗戦後は財閥解体などという処置も行われました。しかし、「財閥」という建前こそなくなりましたが、旧財閥を軸にした企業グループはそのまま残りました。そして敗戦後5年もたたないうちに、朝鮮戦争による「特需」が生じ、戦争によって大儲けする事により、日本財界は再び強大化していったわけです。
 なお、「業種」は違いますが、戦時中に国民には耐乏と犠牲を強いて、虚偽の情報を唯唯諾々として流すなど、天皇制政府に全面に服従し、「戦争責任」の一端を担ったにもかかわらず、戦前と同じ形で残って発展していった、新聞社などの「情報産業」にも同様の疑問を感じます。
 一方、戦争を遂行していた政治家はどうだったのでしょうか。確かに、一部はA級戦犯として処刑されたり、敗戦を前に自殺した人もいました。しかし、生き残った人々は、いち早く占領軍であるアメリカに忠誠を誓うことにより、支配層にとどまる事ができました。「A級戦犯として投獄」や「公職追放」などの処分を一時的に受けた人の中からも首相は誕生しています。そして、その政治家の血脈は、現在の自民党や民主党に受け継がれています。
 こうやって考えてみると、かつての天皇に代わってアメリカが絶対的存在になっただけで、総合的に見れば政財界にとっては戦争を通して本質的な打撃はこうむらなかったのでは、とも思えてきます。

Continue reading