「対テロ戦争」の戦果

 ロンドンで大規模テロが発生しました。現時点での死者は50人以上だそうです。
 事件の起きたイギリスは、イラクなどで2年以上も続いている「対テロ」戦争において、アメリカに次ぐ兵力を供出しています。参戦時には「イラクは45分以内に大量破壊兵器を使える」などといった情報を作り上げたりもしました。
 イギリスの金銭的・人的負担がどのくらいのものだか分かりません。そして、そこまでかけてまで戦い続けた「対テロ戦争」の「戦果」がこの首都での大量虐殺となったわけです。
 改めて、彼らが「対テロ」として言っている事や実際に行っている事が、自らの国の一般市民の安全には役立たないという事が確認されたと言えるでしょう。「テロ」の標的が、アメリカ・イギリス・そして我々も含む日本の一般市民であるのと同様、彼らの「対テロ」の標的はイラクなどの一般市民です。そして、「対テロ」によってイラクなどの一般市民が惨殺されればされるほど、我々の生命が脅かされる事はあっても、安全になることはありません。

 今更言うまでもないですが、テロは悪い事です。しかし、「対テロ」だの「テロに屈しない」などと主張する人々の発言をよく聞いてみると、なぜテロが悪いのかについて、巧妙なすりかえがあります。
 一般的にテロが悪いと認識されるのは、それによって多くの人が理不尽に生命や健康が奪われるからです。これについては、手段が「テロ」であろうと、「通り魔」であろうと、「空爆」であろうと何ら変わりはありません。
 ところが、彼らにとっては、「テロは、それが『テロ』であるゆえに許されざる事だ」というような論法で語ります。したがって、手段が「テロ」でなく「空爆」であれば、やっている事が同じでも、それは「対テロ」として正当化されてしまうのです。
 この考えは、事件直後のブレア首相の談話を聞いても伝わってきます。なにしろ、テロに関与した者は、罪のない人々に死と破壊をもたらし、過激主義を世界にまん延させようとする彼らの決意に、われわれの決意が勝るということを悟るだろう。というのですから。
 自分たちは「対テロ戦争」の名目で、イラクなどの「罪のない人々」に「死と破壊をもたらし」ているわけです。しかし、それに対する言及は一切ありません。それを踏まえてこの発言を聞くと、「テロに関与した者」は百人・千人単位でしかせないが、「われわれ」は、桁違いの単位で「罪のない人々に死と破壊をもたら」せるから、「われわれ」のほうが「勝る」とでも言いたいのか、と思えてきます。

 繰り返しになりますが、「テロ」と「対テロ戦争」はともに一般市民の無差別虐殺であり、本質的には何ら変わる事はありません。にも関わらず、「テロに屈しないために『対テロ戦争』に協力しつづける」という自民党政府などの方針は、「テロは、それが『テロ』であるゆえに許されざる事だが、空爆による虐殺は『テロ』ではないから問題はない」という論法による詭弁でしかありません。そのような「大量虐殺者の論法」によって日本は「テロの標的」となり、その結果、我々一般市民の生活と安全が脅かされてしまうわけです。

「対テロ戦争」の戦果」への3件のフィードバック

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