月別アーカイブ: 2004年5月

発言の重み

 米兵がイラクで捕虜を虐待したという疑惑が報じられて話題になっています。まあ、クラスタ爆弾を落として、子供たちを爆殺する軍隊なわけですから、捕虜虐待をやった事については特に驚きませんでした。
 ただ、興味深かったのはブッシュ大統領の反応です。即座に大統領はホワイトハウスで記者団に対し、関与したのは「ごく少数」で、在外米軍全体の傾向を示すものではないと強調した。そうです。
 普通、どんな「疑惑」でも「調査の結果を待って」とか言いそうなものです。しかも、一方では、イラク人虐待に軍情報機関関与、准将が示唆などという情報も流れています。もし、後者が事実でしたら、ブッシュ大統領は情報を分析せずに思い込みで「自分の願望」を公式発表したことになります。また、万が一虐待が事実でなかったとしても、疑惑が残っている段階で「ごく少数」と断言しているのが不適切なのには変わりありません。
 まあ、「自分の願望」を明白な事実であるかのように宣言したのは、昨年の春先にもやっているので、その異常さには驚きはしませんでしたが。
 いずれにせよ、これは「一国の大統領」以前の問題として、社会人としての資質を問いたくなるような言動です。こんな人間が世界最強の軍隊の指揮権を有していること、さらにそのような人間に絶対服従に近い態度をとる政府があること、さらにはその政府が自分の住んでいる国の行政をつかさどっている事に、何とも言えない不快感を覚えました。

何を絶賛?

 自民党の安倍幹事長が、アメリカで講演・会談をし、ブッシュ政権上層部に誉められたそうです
 とにかく、この期に及んでサダム・フセインが大量破壊兵器を持っていたと疑うのは極めて合理的だとまで言ったそうですから、先方は大喜びでしょう。先方からは絶賛の嵐で、元国防総省日本部長氏にいたっては彼のような人が将来、首相として日本の憲法改正に尽力することを期待しているとまで言ったそうです。
 「ブッシュ政権上層部から絶賛された講演」などと書くと、一見素晴らしそうです。しかし、誉められた理由が「ブッシュ政権の言う事に全て従う姿勢」だ、という事を考えるとえらく情けない話です。ブッシュ政権の人々の「賛辞」に、一言一句教わった通りに話した九官鳥を誉めているような印象を持ちました。いずれにせよ、帰国後の幹事長は、「ご命令」に従って、より一層、「憲法改正」に向けて努力するのでしょうね。

記者会見

 イラクの人質事件被害者の郡山さんと今井さんの記者会見が日本特派員協会で行われました。(詳細は、有料ニュースサイトの日刊ベリタに掲載)。
 この事件の被害者については、それこそ家族の言動の品定めまでマスコミは細かく報じてきました。しかし、当事者が始めて本格的に語った機会であるのもかかわらず、この会見は各社のサイトを見ても、かなり目立ちにくい扱いで、会見内容も抄録だけでした。
 唯一、産経新聞だけは、かなり詳しく報じていましたが、それでも上記の有料ページに載った中で非常に重要だと私が感じた、郡山さんによる「昨年と今年ではイラク人の日本人への態度が全然違った」という事も、高遠さんの代理で会見した写真家の森住卓さんの「事件当時嫌がらせをした人で謝罪してきた人もいる」という発言も報じられていません。また、産経としては当然なのでしょうが、別ページでは「識者」が両者をこきおろす「論評」をしていました。
 政府筋から出てきた「煽り情報」は事細かに報道するが、当事者の発言は軽視する、という姿勢なのでしょうね。
 あと、今井さんに対して、「挑戦者、反日活動家、親不孝者、自分は何者だと思いますか」などという質問をした「記者」がいたそうです。どこの社の誰か知りませんが、論理的にも倫理的にも「報道者」に値する質問とは思えません。その記者こそ「扇動者、政治業者の下働き、60年前の亡霊、自分を何者だと思いますか」と自問自答したほうがいいと思いました。