2004年を振り返って

 この一年、いろいろな事がありました。個人的にはいい事も悪い事もありました。ただ、本ブログで取り上げている「政治・経済・社会・報道」に限って振り返りますと、悪い事はいくらでもあれど、いい事はほとんどなかった、と言えそうです。
 代表的な事件は、やはり4月の「イラク人質事件」でしょう。この件でまず判明したのは、自衛隊派兵などの効果で、イラクにおいて日本人が「敵」と認識されるようになった事が明白になった、という事です。
 その事実に目を向けさせないためにも、自民党政府・マスコミが一体化して「人質バッシング」を行いました。そして、それに煽られた少なからぬ人々が、「人質」となった方の家には嫌がらせの電話などが大量に来ました。この構造は、60年前の「非国民バッシング」の再来とも言えるかもしれません。
 また、この際に、「テロリスト」が自衛隊撤兵を要求した事から、「自衛隊撤兵はテロに屈する事になる」→「対テロに勝利するためにも、自衛隊は撤兵してはならない」という論調がこれまた自民党政府・マスコミによって流布されました。
 アメリカのイラク侵略に武力で反対する勢力を全て「テロリスト」とする事によって、イラク侵略の継続並びに、自衛隊による協力を「反テロ」とするという、これまた異常な論法です。今年に始まった事ではありませんが、この「反テロ」という言葉さえつけておけば、侵略行為だろうと残虐行為だろうと許される、みたいな風潮がより強くなった一年でもありました。

 平和関係ではもう一つ、北朝鮮を利用した動きも活発でした。確かに、北朝鮮の金正日政権はろくでもない政権だと私も思います。しかし、だからと言って、日本も同様にろくでもなくなっていい、などという事はありません。
 北朝鮮の脅威を煽り、「日本は攻めてこられる」という恐怖心を国民に植え付け、それを利用して「有事法制」に基づいた「国民保護法」という「日本が有事を起こし、その際に国民をいかに統制するか」といった法律が、問題点を指摘される事もなく、続々と成立しました。そして、その「法の精神」を先取りしたのか、反戦ビラや共産党ビラを配布したら逮捕・長期拘留、という事件も発生しています。
 今のままですと、このような「国民統制」の流れは、より一層強化されそうです。

 経済のほうも相変わらずです。一部大企業の利益の拡大をもとに「景気回復」という宣伝が行われました。しかし、普通の人はそれを実感する事はできませんでした。実際、極めて大きな業績を挙げたトヨタですら、従業員の給料は据え置きです。
 他にも、大手スーパーなどのように、新たな需要を喚起して収益を挙げるのではなく、既存の小売店から客を奪って収益を挙げて繁栄し、その一方で、個人経営の店などは潰れてしまい、商店街が「シャッター通り」になる、といった現象も相変わらずです。
 いずれにも共通する事は、従業員や中小企業といった「弱い」存在を食い物にして、そこから収益を生み出す、という体制です。
 これは、企業に限りません。昨年に続き、所得税の実質的な増税が決定し、消費税を上げる動きも相変わらずです。これらの増税は、所得が少ない人ほど影響を受ける仕組みになっています。このように、弱い立場の人から絞れるだけ絞り、それによって一部の富裕層が潤う、という方策を官民一体で行っているわけです。

 もちろん、このような状況が続けば、やがては絞られる立場の人々が自民党政府を容認しなくなる可能性があります。それを「予防」する手段が、これまた今年話題となった、「愛国心」「日の丸・君が代」に象徴される「教育改革」です。
 その自民党政府が目指す「新たな教育」について私なりに端的に解釈すると、「自民党政府と同じ思想を持つ事により、自民党政府によってもたらされる不利益を容認する精神の育成」となると思います。
 「国家」およびそれを象徴するものを絶対的な存在とさせ、そこから発せられる命令も絶対的なものとして服従させる教育。これならば、どんな不利な政策を行われても、「お国のため」と従いつづける人間を作る事も可能でしょう。
 それを突き詰めれば、「鍋釜といった生活必需品まで軍のために供出し、空襲におびえながらも帝国軍の勝利を信じ続る一方で周囲の『非国民』『第三国人』をいじめ続けた臣民」となるのでしょうか。一般の人々を踏み台にして、自分とその仲間だけが儲ける事によって生き残りを計ろうとする自民党政府にとっては、これが「理想的な国民」なわけです。
 こう考えると、自民党などの「教育改革勢力」が「戦前の教育にもいいところがあった」などと言って復古させようとする理由がわかります。何せ、自分達にとってはそちらのほうが都合がいいわけですから。

 というわけで、普通につつましく暮らし続けようとする自分にとっては、かなり辛い時代が訪れる事を予感させられた2004年の様々な動きでした。果たして、来年の今ごろはどうなっているのでしょうか。少しは、希望のある事を書きたいものですが・・・。

2004年を振り返って」への2件のフィードバック

  1. ☆呼びかけ。。

    ――
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        ―イラク「命の水」支援プロジェクトからのお願い― 
     7月19日の浄水場爆…

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