自民党の憲法草案が発表されました。草案の「前文」冒頭に日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定するあるのを受けて、「日本国民が自らの意思で初めて制定した憲法」だと、あたかも「自主憲法」の草案であるように誉めていた新聞がありました。
アメリカの政府高官は、最近とみに露骨に改憲を期待する発言をするようになっています。ところが、それに対して「内政干渉だ」などと批判する事はこの党にはありません。その代わりに、党幹部がアメリカでイラク侵略を絶賛し、彼のような人が将来、首相として日本の憲法改正に尽力することを期待しているというお褒めの言葉をいただいている、というのが現状です。
そのような事実はいっさい書かずに、「民主的な自主憲法草案」であるかと論評するわけです。その「なぜか報道されない部分」からも、この憲法草案の本質が伝わってきます。
ところで、この草案が発表された翌日に、「在日米軍再編の中間報告」と題して、「自衛隊との一体化」方針が発表されました。アメリカ軍の世界戦略に自衛隊がより密接に協力するという、「新憲法」を先取りするかのような内容です。この二つが相次いで発表されたのは何らかの意図でもあるのでは、と思えてきます。
さて、その「自主憲法草案」の内容ですが、端的に言えば、アメリカの戦略・要求に忠実に応えただけのもの、となります。
第9条2項の「戦力不保持」を削除され、代わりに「自衛軍」なるものについてが事細かに書き加えられました。そして、前文の政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意も消え、その代わりに国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行うなどといった、イラク侵略戦争協力を意識したような文言が入っています。
ところで、政教分離にあたる第20条3項は、現憲法の国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。が、国及び公共団体は、社会的儀礼または習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長もしくは促進または圧迫もしくは干渉となるようなものを行ってはならないになりました。要は「靖国参拝の合憲化」を目指したわけです。この「草案」の文章、日本語として非常に分かりにくくなっています。小泉首相の靖国参拝にアメリカのメディアなどが批判したので、わざと先方に分かりにくい文言を用いた、という事はいくらないでもないとは思いますが・・・。
それにしても、軍事の整備と、「基本的人権の但し書き」だの「国民の責務」ばかりが目立った「草案」でした。国民に好印象を持たせるために新設したらしい「環境権」についても、国は、国民が良好な環境の恵沢を享受する事ができるように、その保全に努めなければならないとの事です。これを読んでとりあえず思ったのは、自民党政府が「山の中の鳥の巣を守るより、その山をぶち抜いて道路を造ったほうが、国民にとってより良い生活環境になる」という認識のもとで工事を行った場合、それが「違憲」になるのか、という事でした。
という事も含め、アメリカ・軍需を始めとする産業界・自民党政治業者にには益があるものの、一般国民にとっては何の益もない「憲法草案」だと強く思った次第です。
お久しぶりです。
書かれていること、まったくもって賛成です。
ただ・・・自民党よりも問題なのは国民のほうです。
「憲法は国民が国家為政者に命令する文章」という、基礎の基礎をまるで理解していないのが大多数だと思うのです。
だから、自民党がまったくこの基礎を無視したふざけたことをかいていても、なんら批判できないわけです。
本当に、私が以前から指摘していたように、多数決による投票で政治がうごく「民主主義(デモクラシー)」というやつでやっている以上、無知な大衆につけこむずるがしこい連中の支配がずっと続くわけですね。
U2QMS 様
ご無沙汰しております。
ブログの再開、嬉しい限りです。
今回のエントリーも興味深く読ませていただきました。特に「富の偏在とエコノミックモラル」は、私が今ひとつ認識できなかった事柄について、明確に書いてあり、参考になりました。
ところで、憲法の件ですが、私が「憲法は国民が国家為政者に命令する文章」という事を知ったのは、一年ほど前に改憲論議の本を読んだ時でした。
一応、このようなブログをやっている以上、「護憲派」であり、それなりに勉強はしていたつもりでしたが、それでもこの「基本中の基本」を知らなかったわけです。
いかに、この事を、国民に知られまいと「教育」しているのかがよく分かる話だと、身をもって認識しています。
>多数決による投票で政治がうごく「民主主義(デモクラシー)」というやつでやっている以上、無知な大衆につけこむずるがしこい連中の支配がずっと続くわけですね。
「現代民主政治」の歴史もかなり長くなっていますが、どうも、「民を主とする政治」でなく、「民の主となる政治」の行い方ばかりが進歩している、という感じですね。
森村誠一さんも参加して「草の根メディア9条の会」
作家の森村誠一さんも参加して「草の根メディア9条の会」を呼びかけている。ブログも草の根メディアにはいるそうだ。
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