カテゴリー別アーカイブ: 憲法

「いじめ」の存続を認める政党

 首相は代わりましたが、相変わらず自民・公明政権は九条改憲を目指しています。
 「九条を変える理由」としてよく報じられたのは、安倍前首相が一度ならず言った「自衛官の子どもが学校で、『憲法違反』といじめられた。それをなくすためにも九条を変える」でした。
 また、改憲とは話が異なりますが、自民党は選択式的夫婦別姓に反対を続けています。その理由として挙げられるものに「両親の姓が違うと、子どもが学校でいじめられる」というのがあります。
 この論法の通り、自衛官や別姓カップルの子どもがいじめられないために憲法九条を変えたり、選択的夫婦別姓を否定するのは正しいことなのでしょうか。

 もちろん、こんな主張は完全に間違っています。
 どんな理由であれ、子どもが学校で「いじめ」を受けること自体が、そもそも許されない事です。
 必要なのは「いじめ」をなくす事であり、憲法九条を変える事でも、選択的夫婦別姓を否定する事でもありません。

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「自民党が取り戻す日本」と「共産党が取り戻す日本」

 安倍首相が就任した頃のキャッチフレーズは「日本を取り戻す」でした。
 つまり、現在の日本は、過去の日本が持っていたものを失っており、その過去の状態を取り戻す、と主張したわけです。
 その就任の前年、自民党は改憲草案を公表しました。
 現在の日本国憲法との大きな差異として、簡単にまとめると

  • 宣言すると、内閣に立法権と同等の権利が付与され。国民は逆らえない「緊急事態宣言」に関する条項を新設
  • 9条2項の「陸海空軍は保有しない・交戦権は認めない」が「国防軍を保持する」になる
  • 現憲法の97条「日本国この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」を全て削除

となります。
 要は、現憲法の三大原則である「平和主義」「国民主権」「基本的人権の尊重」の三つを変えようとしているわけです。
 言い換えれば、現憲法より前に存在した大日本帝国憲法の時代への回帰を目指しているわけです。
 ちなみに、軍隊はもちろんですが、超法規的な政治を可能にする「緊急事態条項」と同じものも大日本帝国憲法にありました。人権が制限されていた、というのも同様です。
 ではなぜ、安倍首相は、そのような憲法があった時代の日本を取り戻そうとしているのでしょうか。
 それについては、一応、合理的な理由があるのです。

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不戦憲法では国は守れない?

 日本国憲法を批判する言説の中でよくあるのが、「交戦権を否定した憲法9条では国が守れない」というのがあります。「敵が攻めてきた時、憲法を掲げて相手は攻撃を止めてくれるのか」などと主張する人も多々います。
 このような「改憲論」は筆者が10代の頃からよく聞きました。しかしながら、筆者がその説を聞いてから30年近く経ちますが、いまだに日本は他国の侵略を受けていません。
 一方、他の国はどうでしょうか。
 日本のように交戦権を否定する国は、世界の中でも少数派です。米中英仏露をはじめ、主要国は強大な軍隊、場合によっては核兵器を保有しています。当然ながら、憲法では軍事力行使を規定しています。

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