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「イートイン脱税」というフェイクニュース(後編)

「イートイン脱税」というフェイクニュース(前編)の続きになります。
 そこでは、マスコミが煽る「イートイン脱税」なるものは、「脱税」になりえないことをまず解説しました。
 続いて、なぜマスコミがこのような煽り記事を出すかの理由の推測として、「増税への不満を、増税した安倍政権に向けないための『藁人形』を用意した」と、「消費税増税によって日本で暮らす人が苦しんでいる、という現実を見せないようにしているのではないか」の二つを挙げました。
 今回は、その続きとして、三つ目の理由を書きます。

 三つ目の目的は、これまた消費税導入から繰り返し行われてきた、「消費税の本質を見誤らせる」ことです。
 多くの人が、消費税を支払うのは消費者であり、納税する事業者は消費税を預かっているだけ、と思わされています。
 たとえば、「税込価格」1,100円の商品を購入した場合、自分の支払ったうち1,000円は商品本体の価格で、100円は税金を納めた、と認識してしまいがちです。
 だからこそ、あの「持ち帰りと言ってイートインで食べ、支払いを減らす行為」が「脱税」と誤報されても、誤りに気づかない人が多いわけです。
 実は筆者も、会社づとめをしていた頃はそう思い込まされていました。

 しかし、事実は違います。
 たとえば、個人事業主などはよく、「消費税分まけてよ」と言われます。そうしないと取引そのものが断られると思えば、相手の要望に従わざるをえません。
 では、消費税分値引きしたら、その分は、納税しなくていいのでしょうか。
 残念ながらそのような事はありません。「消費税分」を引こうと引くまいと、売上総額の一割から仕入れ総額の一割を引いた金額を消費税として納税しなければならない、と法律で厳然と定められているのです。
 なお、これからわかるように、1,100円の売上があった場合、「消費税分」の100円が納税されるわけではありません。実際には、そこから仕入れ分を引いた額が納税されます。
 ちなみに、トヨタの車を税込価格330万円で買った場合はどうなるでしょうか。トヨタのような多額の輸出をしている企業の場合は、輸出戻し税で納税どころか税務署から莫大な還付金をもらっています。したがって、その330万円のうち、消費税として納税されるのは0円です。
 あと、あまり報じられませんが、マクドナルドは、持ち帰り価格も店内価格も同額にしています。そのため、「税込み価格」が110円のハンバーガーを、店内で食べれば「本体価格」が100円となり、持ち帰れば「本体価格」が101.8円になります。
 この事からわかるように、商品を購入するときに支払った金額は、全て商品の代金でしかありません。そこから「税金分」を分離することなどできないのです。

 ではなぜ、どこでも「税込価格」とか「税抜価格」などと表記しているのでしょうか。それは、国税局がそういうルールを定めているからです。
 このルールも、消費税の本質を見誤らせ、消費者が自分たちが消費税を払っていると錯覚させるのが目的だと思っています。
 もちろん、消費税増税に伴い、多くの商品が値上げされました。先述したようにその結果として消費が減り、消費者も大変困っています。
 それが消費税増税の影響であることは間違いありません。したがって、消費者も増税の被害者です。しかしながら、だからと言って、消費者が消費税を納税しているわけではないのです。消費者は増税に伴う。値上げの被害を受けているのであり、納める税金が増えたわけではありません。
 なお、これについては、「軽減税率」の対象であるはずの食料品でも、値上げや値段据え置きで分量が減る、という現象が多発している事からもわかると思います。

 ところで、現在、税金で最も滞納額が多いのは消費税です。
 国税庁のサイトを見ると、毎年、3,000万円以上、消費税の新規滞納が発生しているのです。

新規発生滞納額の金額と比率

新規発生滞納額の金額と比率

 会社員時代の筆者のように、「消費税を納めているのは自分たち消費者で、事業者はそれを預かっているだけだ」と誤解してしまうと、なぜ消費税を滞納するのか、理解できないでしょう。
 それどころか、「消費税を滞納するという事は、我々が納めた消費税を着服しているのか?」などと誤解してしまう事にもなりかねません。

 しかしながら、ここまで書いてきたように、「税込価格」という名目で事業者が受け取った金額の中に「本体価格」と「消費税」が別々に存在している、などという事はありません。
 事業者にとっては、ただ「商品の価格」があるだけです。もちろん、購入者にとっても同様です。
 そして、事業者は、毎年の申告の際に、「売上の10%-仕入れの10%」を消費税として税務署に納める、というのが消費税納税の仕組みなのです。
 なお、繰り返し書いていますが、輸出の場合は「売上の0%-仕入れの10%」が消費税額となり、その結果として、納税せずに還付を受けているわけです。
 つまり、消費税の正体は、消費者ではなく事業者が負担する税金であり、かつ輸出業者を優遇するための「補助金」なのです。
 もしこの事実が、これが日本で暮らす人の共通認識になると、消費税を維持し、さらに増税したい勢力にとっては都合が悪い事になります。
 だからこそ、あの不自然極まりない「イートイン脱税」などというフェイクニュースなども作って、「消費税を納めているのは消費者であり、業者は預かっているだけ」という印象操作を行うのでしょう。

 さて、今回の消費税増税でも明らかになったように、増税によって中小業者は苦しむ一方で、輸出大企業はさらに儲けを増やしました。
 そして、増税に伴う値上げにより、消費も大幅に冷え込み、経済はさらに悪化しています。
 そして、消費税増税の建前である「社会保障」「財政」のいずれも悪化の一方です。
 まずは5%に減税し、その分、大儲けしている大企業や富裕層に応分の負担をしてもらうべきです。
 そして最終的には消費税を廃止し、消費税導入前のような法人税率・所得税率に戻し、累進課税も進めれば、税収は保てますし、中小業者の苦しみも消費不況も解消できます。

「イートイン脱税」というフェイクニュース(前編)

今朝のNHKが「イートイン脱税」というニュースを流しました。
記事には、しかし、持ち帰り用として8%の税率で購入したものを店内で飲食し、2%分の消費税を免れる行為が、“イートイン脱税” としてSNS上などで話題となっています。と書かれていました。
筆者は毎日1時間以上はSNSを見ていますが、そんな事が話題になったのは見たことがありません。
「イートイン脱税」なる言葉がトレンド入りしたのは見たことがありますが、今回も含め、マスコミがニュースにした時だけです。
ちなみに、この「イートイン脱税」が最初の「報道」されたのは、消費税増税当日である10月1日のテレビ朝日でした。

テレビ朝日が増税当日の10月1日に流したニュースです

ここでは、自己申告だと商品持ち帰りを申告していながらイートインで食べるずるい人たちが増えるのではないかと予想されています。そんなずるい人たちの行為がイートイン脱税といわれているのです。(中略)イートイン脱税のようにテイクアウトとして買っておきながらイートインスペースで食べている人がいたとします。それを見つけた時に正義感を出して店員に告げ口するような人のことを正義マンと呼ぶそうです。などと「報道」していました。
しかしながら、記事の日付を見ると、[2019/10/01 20:50]となっていました。増税されてからまだ1日もたっていません。
この記事が事実だとすると、その20時間50分の間に、以下の現象が発生した事になります。

  1. コンビニなどで、「持ち帰り」と申告してイートインで食べる人が現れる事が予想された。
  2. 1の現象を「イートイン脱税」と呼ぶことが、10月1日の夜までに日本社会で一般化された。
  3. それを発見して、指摘する人が現れた。
  4. さらに、3のような行動を行う人を「正義マン」と呼ぶことまで、同様に日本社会で一般化された。
  5. 1~4の現象をテレビ朝日が取材して、ニュース記事としてまとめた。

ちょっと考えればわかりますが、このような事は絶対にありえません。
仮に、1のような現象が本当に発生し、それを見た人がいたとしても、皆が口を揃えて「イートイン脱税」と言うわけがありません。見た人によって異なる呼び方をするでしょう。
にも関わらず、10月1日20時50分の時点で、客観報道を装って「イートイン脱税といわれているのです」などと流したわけです。「語るに落ちる」と言わざるを得ません。
つまり、これはマスコミによる造語である事は明白なのです。
これだけでも十分に問題です。しかし、これらの「イートイン脱税」報道には重大な問題があります。
それは、今の消費税法においては「イートイン脱税」などは絶対に存在し得ないからです。

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「輸出戻し税」で儲かる会社と損する人々

 全国商工団体連合会(略称・全商連)は、年に一回、消費税の輸出戻し税試算額を発表しています。
 たとえば、トヨタなどは3,506億円もの輸出戻し税を国から還付されています。その結果、本社がある豊田税務署は、徴収する税金よりも、トヨタに払う輸出戻し税の支払いのほうが多く、2,982億円もの「赤字」となっています。
 輸出で儲けている製造業13社だけで、1兆4百億円もの輸出戻し税が還付されました。

輸出戻し税


 その一方で、国内の中小業者は、利益が出ていなくても消費税を払わねばなりません。しかも、この消費不況の時代に安易に販売価格に消費税を「転嫁」などできません。2014年に消費税が5%から8%に増税されましたが、少なからぬ中小業者は値上げなどできませんでした。つまり、身銭を切って消費税を納めているわけです、
 一方で、トヨタをはじめとする輸出大企業は、消費税率が上がれば上がるほど、輸出戻し税の金額が上がって利益が増える、という仕組みになっています。
 それもあって、経団連などは、執拗に消費税10%増税の実施と、さらなる税率引き上げを「提言」しているわけです。

 ところが、この「輸出戻し税」を批判すると、「これは正当・合法なものであり、批判するのは間違いだ」という言説が必ずついてきます。
 実際に筆者も会社員時代に、この輸出戻し税問題をネットで調べたところ、批判する言説と正当化する言説がそれぞれあり、どちらが本当だろうかと悩んだ記憶があります。

 ではどちらの言説が本当なのでしょうか?

 結論から言えば、この「輸出戻し税」は、今の制度のもとでは確かに「合法」です。輸出大企業は何一つ不正な事はしていません。
 しかし、だからこそこの「輸出戻し税」というのは大問題であり、一刻も早く制度を改めねばならないものなのです。

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