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千葉市の商店街性化について

 先月行われた市長選の終盤に、朝日新聞に止まらない中心部の空洞化 千葉市の銀座「意地ですよ」という記事が掲載されました。
 冒頭に、「千葉市中心部の空洞化に歯止めがかからない。駅ビルのリニューアルなどでにぎわう千葉駅とは対照的に、千葉銀座商店街の周辺は人通りが減り、空き店舗も目立つ。官民挙げた活性化策も十分な効果が出ているとはいえない。21日投開票の千葉市長選を前に、現状と課題を探った」と書かれています。
 筆者は、千葉市で商売をしている中小業者の営業を暮らしを守ることにより、千葉市経済を活性化する、という公約で市長選を闘いました。それだけに、市長選を前に商店街を取材する、という記事を興味深く読んだものでした。
 しかしながら、この記事は、極めて取材が粗く、事実と異なる印象を読者に与えかねないものでした。
 その記事の問題点を指摘しつつ、千葉市の経済活性化の具体案について書いていこうと思います。

 記事の中に、ちばぎん総研、すなわち千葉銀行のシンクタンクである会社の人が登場し、「以前のように商店街に金をばらまくだけではあまり意味がない。行政は新しく店を開きたい人のチャレンジを後押しし、熱意ある人が挑戦しやすい環境をつくることが大切だ」と発言しています。
 この発言、「行政は新しく店を開きたい人のチャレンジを後押し(すべき)」だけは同意しますが、それ以外は完全に間違っています。
 なにしろ、千葉市の商店街に対する援助は、一店舗あたりにならすと、年間わずか二千円です。全然、商店街に金をばらまいてなどいません。
 その前には「市は千葉神社周辺の公園整備、商店街の歩道改修、市美術館のリニューアルなどでまちの回遊性を高めようとしてきた」などと書かれています。
 これが、先程の「商店街に金をばらまく」を意味していると思われます。しかし、そもそもこれは商店街振興とは関係ありません。
 神社の近くにある公園を整備したからといって「よし、これで我が店にも人が来る」などと喜ぶ経営者はいないでしょう。
 だいたい、千葉市の商店街は旧パルコ周辺だけにあるわけではありません。万が一、千葉市民の税金を使って行った「回遊性を高める政策」が有効だとしても、そこ以外の商店にとっては何の意味もないのです。
 それを考えれば、千葉神社周辺の公園を整備することが、商店街振興に何ら役に立っていない事がわかります。
 記事に書かれている千葉市がやったことは、開発事業の一環でしかありません。利益を得るのは、開発工事を請け負った建設会社であり、地元商店ではありません。
 そこからして、この「ちばぎん総研」の人が言っている事は、根本からズレています。

 では、商店街を振興させるには、何を行うべきでしょうか。
 まずは、直接の支援です。特にこのコロナ禍における、飲食店をはじめとする、市内中小業者の売上減は深刻です。
 これに対する直接支援を充実させるべきです。
 神谷新市長のもとで行われた最初の市議会で、千葉市は市独自の支援金を発表しました。
 これ自体は、自分が選挙公約で述べてきた事でもあり、評価できます。
 しかし、これだけでは足りません。
 特に、今回の緊急事態宣言においての「酒類販売自粛」は居酒屋などにとって多大な影響があります。
 それに対する補償の充実が必要です。

 さらに、恒常的な支援も必要です。
 先述したように、千葉市の商店街に対する援助は、一店舗あたり年間二千円でしかありません。
 これでは何も支援していないのと同じです。
 たとえば、千葉市の商店には、いまだに看板に「72-****」という電話番号が書かれた看板で商売している店があります。
 今の電話番号になったのは1992年ですから、30年近く、看板の修正すらできていないのです。
 そのようなことに対する、支援も必要でしょう。
 他にも様々な形で、このような中小業者に対する援助を行い、営業と暮らしを守る必要があります。
 これは、その業者のみを潤すわけではありません。
 たとえば、花見川区こてはし台では、中心部の商店街がシャッター通り化しています。

こてはし台中央商店街

こてはし台中央商店街


 そのため、自動車などを持たない住民の多くは買い物に困り、スーパーの巡回販売車が重要な役割をしめています。
 つまり、中小商店の営業を守るというのは、住民の生活を守ることにもつながるのです。
 なお、朝日記事の最後には、相変わらずの「熱意ある店を援助すべきだ」などと書いてありました。
 この類の記事の定番とも言えますが、そもそも「熱意のない店」などあるのでしょうか。
 このような「選択と集中」の理論で中小業者を冷遇し続けた結果、業者の数は減り、上記写真のようなシャッター街が生まれたのです。
 行政側が「熱意」などというものさしを使わず、支援が必要な中小業者を別け隔てなく支援するべきです。

 もちろん、飲食店や商店だけに限ったことではありません。
 朝日記事にも紹介されているように、千葉市では様々な大型開発が行われてきました。
 それを請け負うのは東京に本社がある大手ゼネコンです。
 地元の中小建設業者に届くまでに、何重にも中抜されてしまいます。
 公共事業を行うなら、地元の業者に直接発注することが必要です。
 さらには公契約条例を制定し、千葉市が行う公共事業に従事する人の賃金の底上げをはかるべきです。
 飲食店や商店にも言えることですが、これらの政策で地元中小業者の営業と暮らしを守れば、彼らは、地元で消費を行い、その結果、さらに千葉市の経済は活性化します。
 一方、大手ゼネコンに発注して、千葉市で大型開発を行っても、そのような地域経済の好循環は行われません。
 市長選では、経済政策として、この中小業者を大切にして、地域経済の好循環を実現させる、という事を繰り返しお話ししてきました。
 残念ながら結果を出せず、大型開発優先を引き継ぐ市政になってしまいました。
 しかし、既に明らかになったように、いくら大型開発を続けても、市民は豊かになりません。
 特に、コロナ禍で、中小業者はこれまで以上の危機を迎えています。
 それだけに、中小業者の営業と暮らしを守り、それによって地域経済を活性化させる政治を実現させるため、引き続き、頑張っていきます。

「イートイン脱税」というフェイクニュース(後編)

「イートイン脱税」というフェイクニュース(前編)の続きになります。
 そこでは、マスコミが煽る「イートイン脱税」なるものは、「脱税」になりえないことをまず解説しました。
 続いて、なぜマスコミがこのような煽り記事を出すかの理由の推測として、「増税への不満を、増税した安倍政権に向けないための『藁人形』を用意した」と、「消費税増税によって日本で暮らす人が苦しんでいる、という現実を見せないようにしているのではないか」の二つを挙げました。
 今回は、その続きとして、三つ目の理由を書きます。

 三つ目の目的は、これまた消費税導入から繰り返し行われてきた、「消費税の本質を見誤らせる」ことです。
 多くの人が、消費税を支払うのは消費者であり、納税する事業者は消費税を預かっているだけ、と思わされています。
 たとえば、「税込価格」1,100円の商品を購入した場合、自分の支払ったうち1,000円は商品本体の価格で、100円は税金を納めた、と認識してしまいがちです。
 だからこそ、あの「持ち帰りと言ってイートインで食べ、支払いを減らす行為」が「脱税」と誤報されても、誤りに気づかない人が多いわけです。
 実は筆者も、会社づとめをしていた頃はそう思い込まされていました。

 しかし、事実は違います。
 たとえば、個人事業主などはよく、「消費税分まけてよ」と言われます。そうしないと取引そのものが断られると思えば、相手の要望に従わざるをえません。
 では、消費税分値引きしたら、その分は、納税しなくていいのでしょうか。
 残念ながらそのような事はありません。「消費税分」を引こうと引くまいと、売上総額の一割から仕入れ総額の一割を引いた金額を消費税として納税しなければならない、と法律で厳然と定められているのです。
 なお、これからわかるように、1,100円の売上があった場合、「消費税分」の100円が納税されるわけではありません。実際には、そこから仕入れ分を引いた額が納税されます。
 ちなみに、トヨタの車を税込価格330万円で買った場合はどうなるでしょうか。トヨタのような多額の輸出をしている企業の場合は、輸出戻し税で納税どころか税務署から莫大な還付金をもらっています。したがって、その330万円のうち、消費税として納税されるのは0円です。
 あと、あまり報じられませんが、マクドナルドは、持ち帰り価格も店内価格も同額にしています。そのため、「税込み価格」が110円のハンバーガーを、店内で食べれば「本体価格」が100円となり、持ち帰れば「本体価格」が101.8円になります。
 この事からわかるように、商品を購入するときに支払った金額は、全て商品の代金でしかありません。そこから「税金分」を分離することなどできないのです。

 ではなぜ、どこでも「税込価格」とか「税抜価格」などと表記しているのでしょうか。それは、国税局がそういうルールを定めているからです。
 このルールも、消費税の本質を見誤らせ、消費者が自分たちが消費税を払っていると錯覚させるのが目的だと思っています。
 もちろん、消費税増税に伴い、多くの商品が値上げされました。先述したようにその結果として消費が減り、消費者も大変困っています。
 それが消費税増税の影響であることは間違いありません。したがって、消費者も増税の被害者です。しかしながら、だからと言って、消費者が消費税を納税しているわけではないのです。消費者は増税に伴う。値上げの被害を受けているのであり、納める税金が増えたわけではありません。
 なお、これについては、「軽減税率」の対象であるはずの食料品でも、値上げや値段据え置きで分量が減る、という現象が多発している事からもわかると思います。

 ところで、現在、税金で最も滞納額が多いのは消費税です。
 国税庁のサイトを見ると、毎年、3,000万円以上、消費税の新規滞納が発生しているのです。

新規発生滞納額の金額と比率

新規発生滞納額の金額と比率

 会社員時代の筆者のように、「消費税を納めているのは自分たち消費者で、事業者はそれを預かっているだけだ」と誤解してしまうと、なぜ消費税を滞納するのか、理解できないでしょう。
 それどころか、「消費税を滞納するという事は、我々が納めた消費税を着服しているのか?」などと誤解してしまう事にもなりかねません。

 しかしながら、ここまで書いてきたように、「税込価格」という名目で事業者が受け取った金額の中に「本体価格」と「消費税」が別々に存在している、などという事はありません。
 事業者にとっては、ただ「商品の価格」があるだけです。もちろん、購入者にとっても同様です。
 そして、事業者は、毎年の申告の際に、「売上の10%-仕入れの10%」を消費税として税務署に納める、というのが消費税納税の仕組みなのです。
 なお、繰り返し書いていますが、輸出の場合は「売上の0%-仕入れの10%」が消費税額となり、その結果として、納税せずに還付を受けているわけです。
 つまり、消費税の正体は、消費者ではなく事業者が負担する税金であり、かつ輸出業者を優遇するための「補助金」なのです。
 もしこの事実が、これが日本で暮らす人の共通認識になると、消費税を維持し、さらに増税したい勢力にとっては都合が悪い事になります。
 だからこそ、あの不自然極まりない「イートイン脱税」などというフェイクニュースなども作って、「消費税を納めているのは消費者であり、業者は預かっているだけ」という印象操作を行うのでしょう。

 さて、今回の消費税増税でも明らかになったように、増税によって中小業者は苦しむ一方で、輸出大企業はさらに儲けを増やしました。
 そして、増税に伴う値上げにより、消費も大幅に冷え込み、経済はさらに悪化しています。
 そして、消費税増税の建前である「社会保障」「財政」のいずれも悪化の一方です。
 まずは5%に減税し、その分、大儲けしている大企業や富裕層に応分の負担をしてもらうべきです。
 そして最終的には消費税を廃止し、消費税導入前のような法人税率・所得税率に戻し、累進課税も進めれば、税収は保てますし、中小業者の苦しみも消費不況も解消できます。

「イートイン脱税」というフェイクニュース(前編)

今朝のNHKが「イートイン脱税」というニュースを流しました。
記事には、しかし、持ち帰り用として8%の税率で購入したものを店内で飲食し、2%分の消費税を免れる行為が、“イートイン脱税” としてSNS上などで話題となっています。と書かれていました。
筆者は毎日1時間以上はSNSを見ていますが、そんな事が話題になったのは見たことがありません。
「イートイン脱税」なる言葉がトレンド入りしたのは見たことがありますが、今回も含め、マスコミがニュースにした時だけです。
ちなみに、この「イートイン脱税」が最初の「報道」されたのは、消費税増税当日である10月1日のテレビ朝日でした。

テレビ朝日が増税当日の10月1日に流したニュースです

ここでは、自己申告だと商品持ち帰りを申告していながらイートインで食べるずるい人たちが増えるのではないかと予想されています。そんなずるい人たちの行為がイートイン脱税といわれているのです。(中略)イートイン脱税のようにテイクアウトとして買っておきながらイートインスペースで食べている人がいたとします。それを見つけた時に正義感を出して店員に告げ口するような人のことを正義マンと呼ぶそうです。などと「報道」していました。
しかしながら、記事の日付を見ると、[2019/10/01 20:50]となっていました。増税されてからまだ1日もたっていません。
この記事が事実だとすると、その20時間50分の間に、以下の現象が発生した事になります。

  1. コンビニなどで、「持ち帰り」と申告してイートインで食べる人が現れる事が予想された。
  2. 1の現象を「イートイン脱税」と呼ぶことが、10月1日の夜までに日本社会で一般化された。
  3. それを発見して、指摘する人が現れた。
  4. さらに、3のような行動を行う人を「正義マン」と呼ぶことまで、同様に日本社会で一般化された。
  5. 1~4の現象をテレビ朝日が取材して、ニュース記事としてまとめた。

ちょっと考えればわかりますが、このような事は絶対にありえません。
仮に、1のような現象が本当に発生し、それを見た人がいたとしても、皆が口を揃えて「イートイン脱税」と言うわけがありません。見た人によって異なる呼び方をするでしょう。
にも関わらず、10月1日20時50分の時点で、客観報道を装って「イートイン脱税といわれているのです」などと流したわけです。「語るに落ちる」と言わざるを得ません。
つまり、これはマスコミによる造語である事は明白なのです。
これだけでも十分に問題です。しかし、これらの「イートイン脱税」報道には重大な問題があります。
それは、今の消費税法においては「イートイン脱税」などは絶対に存在し得ないからです。

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