誰にとっての「美しい国」?

 安倍首相の年頭挨拶は、「美しい国」を実現するための「改革の継続」と「改憲」でした。この「美しい国」という言葉は抽象的すぎて分かりにくい所がありますが、このように具体的な手段を言ってくれると、非常に分かりやすくなります。
 小泉前首相から引き継いだ「痛みを伴う改革」は自民党政府の側から見れば順調に進んでいます。分かりやすく言えば、一般国民が受けた「痛み」が「大企業の利益」に変換され、その結果「史上最長の好景気」と「格差拡大・ワーキングプア」なわけです。
 自民党政府・財界は「好景気はやがて家計に波及する」などと言っていますが、その「家計」には、普通に暮らしている人は含まれません。この事は給与所得が減り続ける一方で、役員報酬が増え続けている事からも分かります。「好景気」が反映される「家計」は極めて限定的です。そして、その「好景気が家計に波及される人」と「改革の痛みを受ける人」が重なる事はありません。
 この流れは「ホワイトカラーエグゼンプション」という名前による給与所得者の「時給削減」並びに、「消費税増税とセットになった法人税減税」により、さらに進んでいくことでしょう。

 もう一つの「改憲」ですが、言うまでもなく最大の目玉は、「9条」です。幹事長時代にアメリカで講演して「彼のような人が将来、首相として日本の憲法改正に尽力することを期待している」と褒められたように、アメリカの軍事戦略により一層協力するために行うものです。
 「自分たちの手で時代にあった憲法を書く」などと、あたかも現憲法を「押しつけ」であるかのように言っています。しかし、結局のところ、今回の改憲もアメリカの命令に従っての事なわけです。
 もっとも、普段から自民党政府は日米安保を絶対的存在だとしています。したがって「自分たち」にアメリカが含まれるのは言うまでもない事なのかもしれません。なお、軍隊の強化および活動範囲の拡大の原資として何が使われるのか、というのもあわせて考える必要があるでしょう。
 もちろん、9条以外にも改憲したい部分はあります。その目的を端的に言えば、「国民の権利<公共の福祉」です。もちろん、ここでの「公共」は「国民全体」でなく「自民党政府とそれに連なる支配階級」です。

 結局の所、「改革」と「改憲」によって作られる国は、富める人がそうでない人から搾り上げてより栄える経済と、アメリカの軍事戦略に組み込まれた「日本軍」が行う全世界の活動により一層税金が使われる国、なわけです。
 安倍首相やそれに連なる人々にとっては、そのような国が「美しい」のでしょう。それが実現した時、安倍首相やそれに連なる人は「美しさ」に満悦するのかもしれません。ただ、あくまでもそれは「ごく一部の人にとってのみ美しい国」でしかないわけですが。

誰にとっての「美しい国」?」への6件のフィードバック

  1. あけましておめでとうございます。
    TBさせていただきました。
    ごぶさたしておりましたが、いつも拝見しております。
    今年もどうぞよろしくお願いします。

  2. あけましておめでとうございます。コメント・TB有り難うございます。
    私のほうも、毎回興味深く読ませています。
    今年もよろしくお願いいたします。

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