投票者に情報を伝えまいとする「投票法」

 憲法「改正」を目指した「国民投票法案」が可決されました。地方公務員の運動制限など、いかに「国民に対して、改憲しようとする項目の情報の伝達を制限するか」が特徴の一つとして挙げられます。
 そのような事を行うには何らかの理由があるはずです。今回の法律は、主権者である国民が自ら投票権を行使して、憲法を変えるか否かを決めるためのものです。という事は、そのような情報管理を行わないと、投票者である国民に何か不利益がもたらされるとでも言うのでしょうか。

 仮定の話として、憲法第36条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」を廃止する、という改正案が出たとして考えてみます。
 廃止する側としては、「被害者の気持ち」とか「刑罰を厳しくすることによる抑止力」などを宣伝するでしょう。一方、反対派は、冤罪の場合とか、本当に抑止力があるのかなどを主張するわけです。
 その是非を判断するのは投票者たる国民です。その際に伝えられる情報は量・発信者の数ともに多くなる事により、何か不利益が生じるとは思えません。
 これは、「拷問と残虐な刑罰」に限った事ではありません。どの条項の改正案にせよ、「国民に多様な情報が伝われば伝わるほど、国民にとって不利な結果が出る投票結果になる」などという事は考えにくいです。

 ではなぜ今回自民党政府が作った「国民投票法」は、あれこれと国民への情報伝達に制限をかけようとしているしょうか。国民に利益のある改憲案なら、どのような立場の人がその是非を論じようと、問題はないはずです。
 しかも、その一方で、商業マスコミなどへの広告は一定の条件下で出すことができます。と言うことは、広告主に対して立場の弱い商業マスコミの論調までにも金の力で影響を及ぼせるわけです。つまり、国民が利害を判断するために国民投票を行うのに、自民党政府の主張ばかり伝わるような情報伝達の仕組みが作ろうとしているわけです。
 というわけで、この「改憲案に関する情報伝達の制限」を見るだけで、自民党政府の目指す改憲が、国民にとってどのような影響を及ぼすものか、という事が自ずと伝わってきます。

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