「世界中の笑いもの」になった人

 本日付で、「ブッシュのプードル」のあだ名を持つイギリスのブレア首相が退任しました。普通、外国の首脳につけられたあだ名が日本で広まる事はあまりありません。しかしながら、先々代のサッチャー氏に続き、このブレア氏のあだ名も日本ではかなり有名になりました。ただ、先々代が「鉄の女」と、その政策の是非はともかく「強さ」が伝わるものであるのに対し、彼についたものは「情けなさ」ばかりが伝わるものでした。
 仮にも一国の首相が愛玩犬呼ばわりされたわけです。しかも「主人」はこれまた国内外の多くの人から尊敬を集めていないアメリカ大統領です。歴史ある大国の首相で、ここまで情けないあだ名をつけられた人もそうはいないでしょう。そして、「プードル」としてアメリカの下について行ったイラク侵略戦争は泥沼化したまま現在も続いています。それも失点となり、選挙での大敗もあって任期中に辞任したわけです。

 この「プードル」を見る度に思い出すのが、イラク侵略当時の自民党政府および共存関係にある商業マスコミの論調でした。日本は実質的に参戦し、その報復で日本人が捕らえられたり殺されたりしました。そしてたびごとに反対論を批判するときに使われたのが、「ここで撤兵しては国際社会の笑いものになる」というものでした。
 また、実際にスペインやフィリピンが、テロや人質の影響で撤兵した際にも、似たような論法でこれらの国を批判した商業マスコミもありました。しかし、彼らの期待(?)に反し、それらの国が「笑いもの」になることはありませんでした。一方でアメリカは未だに戦争を終わらせられず、多くのイラク人を殺し続け、一方でアメリカ兵も殺され続けています。。そのような中、参戦しなかった国や早々と撤兵した国の政治家は、賞賛される事はあっても、アメリカのような侵略の当事国以外に批判される事はほとんどありません。
 そのような中、「イラクは45分以内に大量破壊兵器を揃えることができる」の珍言から始まり、一環としてアメリカに従い続けてきたブレア首相には、その代償として「ブッシュのプードル」の称号を得たわけです。
 この結果を見るだけで、いかに当時の「国際社会の笑いもの」論が空虚な作り話だったかよく分かります。今後も九条改憲を始め、軍事的な事に関して、自民党政府とその意をくんだマスコミは「国際社会で」とか「世界の中で」などという言葉を使って、軍拡推進の宣伝をするでしょう。しかし、彼らが言っていた「国際社会の笑いもの」と実際に「笑いもの」になったのが誰だったか、という事を思い出せば、それらの発言が、70年前と同質の意図的かつ国民にとって有害である宣伝文でしかない事は簡単にわかるでしょう。