自衛隊が守らないもの

 自衛隊のイージス艦が漁船に衝突するという事件が発生しました。もちろん、事故が発生したということ自体が最大の問題です。ただ、それとは別に、事故発生後の防衛省の動きにも、見過ごすことができない問題があります。
 防衛省による発表は、なるべく、自らの責任を回避したり、被害者側に責任を押しつけようとするものです。そして、時には虚偽も交えた発表をし、指摘を受けて撤回というのが繰り返されています。
 これらの事から、事故発生前・発生時はもちろん、今になっても、海上自衛隊の考えの根本が、「自分たちの組織>漁船ならびに乗員の安全」である、という事がよく分かります。

 別に、このような事は今に始まった事ではありません。20年まえの「なだしお事件」の時も同様でした。
 この自衛隊が国民の生命と安全を軽視している事については、以前にも書きました。何しろ、自衛隊法における「自衛隊の任務」のどこを見ても、「国民をの命と安全を守る」などという言葉はありません。自衛隊法全般を見ても、「国民」というのが出てくるのは、実質的には有事の際に国民を統制するための法律である「国民保護法」に関連したものがほとんどです。
 したがって、今回のイージス艦が漁船の安全を最優先しなかった事も、その後の発表でも、被害者の事より自分たちの事を優先しているのも、自衛隊としては当然の事なのです。
 今後も、自衛隊がアメリカ軍の下でこれまで以上の軍事活動を行えば、今回の事件のような、軍事行動と国民の利害と一致しない事例は、より増えていくでしょう。

 ただ、実際にそのような本質が明らかになるのは、自衛隊の運営上、好ましくありません。そのため、自民党政府や、その翼賛勢力である商業マスコミは、「自衛隊(並びにその『同盟軍』であるアメリカ軍」によって日本国民の安全が守られている」というような「虚偽発表」を繰り返しているわけです。
 昨年、問題になった「沖縄『集団自決』検定」なども根は同じです。日本の軍隊が、軍事機密を漏洩されるくらいなら死んだほうがいい、という思想の元で沖縄の住民を死に追いやった、などという事実を若い人に学ばれては、今後の事を考えると困るわけです。

 繰り返しになりますが、自衛隊・自民党政府・商業マスコミとも、「自衛隊は国民の安全を守るためのものではない」という「正体」がばれると困ります。そのため、今回の事件についても、「一部の乗組員によるミス」という形にし、「防衛大臣の更迭」的な形で終了させる流れにしたがっています。
 確かに、衝突事故だけとらえれば、それで「解決」かもしれません。しかしながら、この事故そのものが発生した根本的な原因であり、発生後の防衛省の態度からも明らかになっている、「自衛隊は国民の安全を守るものではない」という正体が隠されたままだと、本質的な解決は何一つなされないのと同じと言えるでしょう。

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