自動車事故と見出し

 スーパーに自動車が突っ込む、という事故が5日にありました。運転していた人は警察の調べに対し、「ブレーキを踏んだにも関わらず、車が進んだ」と証言しているそうです。
 当然ながら、現時点では原因は不明です。ところが、読売新聞並びに、6日の夕方に出かけた先で見た民放番組では、「アクセルとブレーキを踏み間違えたらしい」と、勝手に「原因」を報じていました。読売新聞に至っては、見出しを「アクセル踏み違え」と書くほどの念の入れようです。

 仮に、かつて同様の事件が発生した場合、全て原因が「踏み間違い」ならば、まだこのような記事を書いても問題ないかもしれません(それでも、断定した文体で見出しにするのは不適切ですが)。
 しかし、実際は違います。過去にも、ブレーキに欠陥があったため、ブレーキを踏んでも停車せずに事故が発生した、という事件があります。したがって、今回の件も、「自動車の欠陥」が原因という可能性も十分に存在しうるわけです。
 それを、警察の調査結果すら出ていないのに「運転ミス」という記事を書き、見出しにすらしているわけです。

 なぜこんな報道がされたのか、原因を推測してみました。一つには、単にその記事・番組を作成した担当者ならびに、それを掲載・放映する事を許可した責任者が、報道者としての能力が極めて低い、という事が考えられます。
 もう一つ考えられるのは、「このような自動車事故が発生したら、事実がどうであろうと『運転ミス』と報じる事に、何らかの益がある」という可能性です。確かに、新聞にもTVにも、自動車会社の広告は大量に流れています。今回の事故がどの会社が製造した自動車で起きたかは知りません。ただ、どこの車にせよ、「スポンサーの満足度を上げる」事を考えると、このような記事・見出しは、極めて「適切」なものになりえます。
 いずれが原因かは分かりません。ただ、このような会社が作成した「報道」を真に受けると、誤った認識をしてしまう事だけは確かです。