「社会保障国民会議」の価値

 政府の「社会保障国民会議」が、2025年の医療・介護費用が現在の倍以上になるという試算を発表したという記事を見ました。
 私には、その「試算」の妥当性を判別するほどの知識はありません。ただ、我々が将来受ける福祉および負担、という観点からすれば、この発表になんら価値のない事は断言できます。
 その発表によると、17年後の医療について、いくつかのパターンを提示しています。そして、「これだけのサービスを提供するなら消費税率をこれだけ上がる」みたいな結果になっています。
 つまるところ、20年ほど前の消費税導入から続けられてきた「今のままだと福祉は維持できない。だから消費税導入・増税だ」という自民党政府の宣伝の焼き直しでしかないわけです。

 ここで大きな疑問が生じます。仮にその試算が正しかったとしても、なぜそれを消費税増税でまかなわなければならないか、という事です。「17年後の医療・介護の姿」にいくつかのパターンを設定するのならば、その財源をどのように捻出するかもいくつかのパターンを設定するべきではないでしょうか。しかしながら、この「結論」では全てそれは「消費税増税」になっています。
 仮に、過去において、消費税によって福祉が維持された、という実績があれば、「17年後の負担増をまかなうのは消費税増税しかない」という今回の発表にも少しは説得力があります。しかし、そのような実績は存在したのでしょうか。
 それについての解答は、約20年前に消費税が導入されてからの福祉制度の変遷を見れば明確です。最近では「後期高齢者医療制度」が代表例ですが、消費税導入以降に創設された福祉制度は、「負担は増えるがサービスは低下」というものばかりです。
 そのため、常に消費税増税を煽る自民党政府や財界も、今回のように「消費税を上げないと福祉は維持できない」と脅すことはしても、「消費税効果で、ここ20年でどれだけ福祉が向上したか」とはさすがに言えません。
 既に何度か書いていますが、導入してからの消費税収の合計は、その間の法人税収の減少分とほぼ同額です。つまり、消費税は企業の負担を下げるために徴収されていたわけです。
 そして、現在も、自民党政府・財界は、法人税減税と消費税増税を組み合わせて主張しています。つまり、今後も、同様の事を続けるつもりなわけです。当然、福祉になどまわるわけがありません。
 というわけで、いくら偉い大学教授が集まって、複雑な計算式を用いて「試算」したところで、その成果物は、「福祉のためには消費税増税」という毎度の脅しでしかないわけです。それが事実でない事は過去の例からも、現在の主張からも明白なわけです。したがって、この発表には、自民党政府や財界の宣伝材料でしかなく、多くの国民にとっての価値はないと断言できるわけなのです。

「社会保障国民会議」の価値」への1件のフィードバック

  1. 「湯浅誠さんと考える格差・貧困問題」(活憲政治セミナー第2回)

     民主党は6日、労働者派遣法改定案の単独提出を延期しました。他野党に配慮して単独提出を見直したのは、これが2度目となります。不安定雇用の原因となっている「…

コメントは停止中です。