商業マスコミの定める「争点」

 千葉県知事選挙が行なわれています。そんな中、数週間前の毎日新聞の報道で、際だった争点もなく、有権者に対立軸が分かりづらい構図などという記事がありました。
 これだけ、経済がガタガタになり、国民生活は打撃を受けています。そんな中、県知事を決めるという大規模な選挙で、本当に争点がなかったりするのでしょうか。
 たとえば、千葉県では、銚子市の市立病院閉鎖などという問題がありました。これは、別に一つの市だけの問題ではありません。自民党政府が財界と一体となって進めている、「国民の福祉に関する事業のうち、儲けになるものは私企業化し、そうでならないものは切り捨てていく」という政策の一環です。

 そういう事もあり、同じ毎日新聞が行なったアンケートでも、不況があれだけ話題になっているにも関わらず、景気対策よりも、「医療・福祉」が上位に来ていました。
 この情報だけでも、「争点」は簡単に浮き彫りにできます。各候補の医療・福祉に関する公約はもちろんですが、過去の政治活動で、彼らおよび彼らを支持している有力議員が、医療・福祉に対してどのような事を行なってきたかを列挙すればいいだけの話です。
 そうすれば、県民が求めている「医療・福祉」に対し、「新知事」がどのような対処を取るかはすぐに分かります。なお、公約のみならず、過去の実績も列挙する必要があるのは、自民党などには公約を平気で反故にする風潮があるからです。
 このようにやっていけば、様々な「争点」において、各候補が取っている姿勢はすぐに伝わります。
 「有権者に対立軸が分かりづらい」も同様です。今回の千葉県知事選挙では、自民党系三人に、民主推薦一人、共産推薦一人が立候補しています。しかし、民主党が一時期、自民党系候補を推薦しようとしていたり、逆に民主党推薦候補を自民の一部が推薦しよう、という動きもあったと、毎日新聞「対立軸が分かりづらい」と書いた記事で伝えています。
 つまり、保守勢力内の争いでは「対立」しているわけで、だからこそ、保守系候補が乱立しているわけです。しかしながら、国民生活の観点からすれば、自民・民主とも「対立」などしていないことは、両党の実績を見れば分かります。
 非常に単純な図式だと思うのですが、なぜそれの「対立軸が分かりづらい」のでしょうか。

 もちろん、そのあたりの「争点」や「対立軸」を明確に書くことは、商業マスコミにはできません。何しろ、自民党も民主党も、選挙広告などでお世話になる大スポンサーです。その広告料で商売している以上、スポンサーたちにとって、本質的に困ることなど、記事にできるわけがありません。
 毎度の事ながら、商業マスコミの選挙報道の無意味さを痛感した「争点」と「対立軸」でした。