トヨタ式利益搾出方法

 昨年、トヨタが赤字に転落しました。もっとも、それまで何十年も黒字を続けていたわけで、貯め込んだ内部留保の金額は莫大です。
 しかしながら、トヨタはその貯め込んだ額を使って従業員を守る、などという事はしませんでした。
 そして「赤字対策」としてまず行なったのは派遣や期間従業員の切り捨てでした。そして、「エコカー減税」で少々業績が持ち直したら、再びいつでも切れる期間従業員を雇いました。
 そしてさらなる「赤字対策」として行なったのが、下請けに対する部品調達費を三割減らすという宣告でした。極めて単純化して言えば、部品を製造している会社の収益を犠牲に自社の利益を守る、という発想です。

 これまで黒字を続けていた頃からも、過労死を発生させるなど、様々な問題を起こしてはいました。それがさらに、今回の赤字転落によって、その「弱い立場の人間を犠牲にして、利益を確保する」というという姿勢がより一層鮮明になっています。
 ちなみに、赤字になっても株主への配当は行なうそうです。創業者一族を初めとする経営陣は少なからぬ株を保有しているでしょう。つまるところ、非正規従業員や下請けを犠牲にに、自分たちはさらなる収益を得る事になるわけです。
 よく、トヨタの収益の源として、その経営手法の先進性みたいな事が言われていました。そして、本屋にはその「トヨタ式経営」を賛美する本が並んでいます。
 しかし、今回の赤字で取った行動を見れば、「トヨタ式経営」とやらの本質が見えてきます。結局の所は、弱い立場の従業員や下請けから搾り取って、それを自社の利益にしていただけの事です。もちろん、そのような事が「トヨタ賛美本」に書かれることはありません。

 また、このような現状を考えると、改めて「企業の利益を上げる政策をとらないことには、国民の生活も良くならない」という財界や一部マスコミの主張が見当外れであるかが分かります。
 何しろ、日本を代表する大企業であるトヨタですら、自分たちの利益について、仲間内で分配したり貯め込む事しか考えていないのです。そして、自社の生産に貢献しているにも関わらず、末端の労働者や下請けについては、搾り取る対象としか見ていないのです。
 企業の側がこのような考え方である以上、企業が太れば太るほど、弱い立場の国民はやせ細ります。昨年トヨタが行なった一連の施策は、それを非常に分かりやすく教えてくれた、と言えるでしょう。