15日の日経新聞一面に、「日米同盟宣伝記事」が載っていました。毎度ながら、米軍基地が日本にとっていかに重要かを力説しており、アメリカ軍がいなくなった場合の「脅威」として、フィリピンの例を挙げていました。
フィリピンは、1991年に米軍基地撤去を決め、実際に1994年には完了しました。すると、「軍事力の空白を突いたのが中国だ。帰属が不明確な南沙、西沙などの島々に次々と部隊を送って実効支配した」そうです。
しかし、これは完全なる誇大記事です。確かに、中国が軍事力で南沙・西沙諸島(英語でいうところの、スプラトリー諸島とバラセル諸島)を侵略しているのは事実です。しかし西沙諸島を侵略したのは1974年です。さらに言えば、西沙諸島の領有権を主張しているのはベトナム・台湾・中国であり、フィリピンは関係ありません。
一方の南沙諸島の件ですが、アメリカ軍の撤退が完了した翌年である1995年に、南沙諸島にあるミスチーフ環礁に軍事施設を中国軍が造りました。この環礁の領有権をフィリピンも主張しており、そこで衝突が発生したというのが事実のようです。
ちなみに、南沙諸島については、フィリピン・ベトナム・台湾・中国・マレーシア・ブルネイが全部あるいは一部の領有権を主張しているとのことでした。
もちろん、中国が軍事侵略を行なった事には変わりはありません。しかしながら、「フィリピンが領有権を主張している南沙諸島の一環礁に軍事施設を造った」を、「南沙・西沙などの島々に次々と部隊を送って実効支配」をするのは、報道とは言えないでしょう。
しかし、普通に日経新聞を読んでいるひとなら、「南沙諸島と西沙諸島」などと言っても、どこにあるかすら知らないでしょう。したがって、「アメリカ基地を撤去したとたん、フィリピンは領有権を主張している諸島二つを中国に奪われた」と解釈してしまいます。必然的に、日本はアメリカ軍基地のおかげで中国の脅威から守られている、と思ってしまうでしょう。
仮にも、大手新聞社なのですから、一介の会社員である私がネットでちょっと調べれば入手できる情報を調べることができないとは考えられません。そう考えると、この記事は、事実と異なると分かっていながら、読者に誤った認識を植え付けるために「フィリピンから米軍が撤退したら南沙・西沙が侵略された」と書いたと考えるのが自然です。
つまり、新聞社にとっては、事実を歪めてでも、「アメリカの軍事基地が沖縄からなくなれば、中国が領土を奪いに来る」と読者に思わせるのが収益につながる、という事でしょう。毎度の事ですが、70年前の「大本営発表」の時代と、本質的に違いがないことがよく分かります。
なお、言うまでもないことですが、「環礁一つだから、中国の侵略はたいしたことがない」という事はもちろんありません。アメリカにしろ中国にしろ、軍事力を用いて、他国・他民族の主権や領有権を侵害する事を正当化する事はできません。