派遣法改正を骨抜きにした勢力

 派遣労働者法の改正案として、製造業派遣と登録型派遣を禁止する条項が盛り込まれる事になっていました。それを削除する事を、民主・自民・公明が合意した、というニュースを見ました。
 削除された経緯として読売新聞は経済界に「急な仕事の発注に対応できない中小企業が影響を受ける」などと反対意見が強い。自公両党も経済界の懸念を踏まえて政府案を批判。という記事を書いています。
 この文章を読むと、なんか中小企業に配慮したかのように思われます。しかし、もし「中小企業のため」というのならば、「製造業派遣・登録派遣は禁止。ただし、資本金3億円以下並びに従業員300人以下で連結対象でない企業には当分の間猶予」などという例外規定を設け、大企業のみ禁止にすればいいだけの話です。

 また、「経済界」がそのように中小企業を心配するならば、なぜ大企業は、ちょっとでも売上が下がると、すぐに下請け叩きや切り捨てを行うのでしょうか。そちらのほうがよほど「中小企業が影響を受ける」と思うのですが・・・。
 つまるところ、実際は自分たち大企業が、今まで通り派遣社員を自由に切り捨てて、利益を増やしたいだけの話なわけです。そして、その主張の建前として「中小企業のため」などという心にもない言葉を使うわけです。「日本経済のため」などといいながら、自分たちだけが儲かるような主張しかしない、財界らしさがよく出ています。
 そして、その主張を受けて法案を骨抜きにしようとする政治業者および、「中小企業のため」などという空虚な建前を無批判に掲載する新聞の姿を見れば、彼等が財界と一心同体である事がよく分かります。

 この国で権力を持っている集団が、いかに自分達の利益しか考えておらず、そのためには他人の不幸などどうでもいいと思っている事、およびその口実として平然と嘘の理由を主張するかが、改めてよく分かった一件でした。
 同時に、この権力構造が続く限り、一部の豊かな人々がさらに莫大な利益を得るために、さらに多くの働く人が切り捨てられる、という構図が変わる事はない、ということを改めて実感しました。