資産運用で失敗したのは17%だけ?

 日経BP社のメルマガに過半数が資産運用中、目減り運用は全体の17%というのがありました。その号の表題・トップ記事にもなっている「一押し情報」です。
 読んでみると「82.1%が資産運用に前向き」「過去1年での運用利回りを質問したところ、『0~20%未満』が過半数を超えて56.0%」「一方、運用によって目減りしてしまった方は、17.0%にとどまりました。目減りした割合も、『0未満~-20%』が圧倒的に多く、損失は最小限に抑えられているようです。」などと、「資産運用は、皆が儲かる上にリスクもたいしたことがない」という「データ」が目白押しです。
 この場合、一体何をもって「資産運用」と言えるのでしょうか。最初に見た時は「資産運用=株式投資」なのか、と思っていました。しかし、この記事の後段には、運用方法は、「貯蓄型重視」が42.1%に対して、「投資型重視」が32.0%と、やはり堅実な運用に重きが置かれていることがわかります。という一文もありました。
 という事は、銀行などに金を預けて利息を貰えば「資産運用をしている」となるわけです。ついでに言うと、このアンケートでは、残る25.9%の人の資産運用方法についてのデータは提示していません。その内訳も提示してくれないと、「資産運用の実態」が見えてきません。

 そうなってくると、「過去1年での運用利回りを質問したところ、『0~20%未満』が過半数を超えて56.0%」などという回答紹介は全く持って無意味だという事がわかります。日本円の預金のみ、という「資産運用」をしている人は全てここに含まれます。実際に、「分析結果」として細かくは伺いませんでしたが、おそらく微々たる低金利に甘んじていらっしゃる方が大半ではないでしょうか。などと書いてあります。
 そうなると、「0%~20%」というのはあまりにも大雑把すぎます。500万円を元手に株式投資に成功して600万円にした人も、定額預金にして0.03%の利子を得て500万1,500円になった人も同じにする、というのは無理がありすぎます。現在の金利を考えれば、「0%~1%未満」と「1%以上20%未満」に分けるか、「普通預金」「定期預金」のみの「資産運用」は除いたデータを提示するしないと、適切な情報とは言えないのではないでしょうか。
 当然、こうなると「目減りしてしまった人は17%」などという「データ」も何の意味をなしません。「資産運用」している人全体のうち、「目減りのリスクがある運用方法を利用している人」の比率がどこにも書いていないからです。極端な話、1,000人のうち560人が普通預金・定期預金だけしかしておらず、173人がプラマイゼロで、97人が投資で儲け、170人が投資で損をしても「目減りした人は全体17%」となってしまいます。
 このような結果でありながら、最後は読者の皆さんは手堅く、非常に堅実に資産運用されているという印象を受けました。でもいくつかの景気動向指数が好転し、景気にも薄日が差してきました。企業業績も活況を呈しているようです。そろそろ多少の“冒険”もよいのではないでしょうか。などと、まとめて(?)います。

 質問結果の恣意的な提示と、この結びから見る限り、どうやらこの「アンケート結果」は、読者の貯金を株式投資に振り向けさせるために作られた記事のようです。
 まあ、国策でもあることですし、証券会社などから広告を貰うためにも、こういう「記事」は必要なのでしょう。別に、これを真に受けて投資した人が大損しても、この会社や記者が責任を取る必要はどこにもないわけですから。
 「ナニワ金融道」で先物業者が「赤の他人にわざわざ儲け話を電話するようなマヌケがいるわけないんやけどなー」と言う場面があります。この「真理」はあやしげな業者の勧誘電話のみならず、大手出版社のメールマガジンやWEBサイトにも当てはまるのかもしれません。