「アベノミクス」が滴り落ちる可能性

 今更なんですが、当ブログの支持政党は日本共産党です。
 21日の参院選では、比例区は「日本共産党」、選挙区は千葉県ならば「寺尾さとし」、東京都なら「吉良よし子」と書いて投票していただければ、と願っております。
 もちろん、他の選挙区でも共産党公認(沖縄県では推薦)の候補に投票していただければ幸いです。

 選挙運動はこのくらいにしておいて、今日の主題である「アベノミクス」について書きます。
 相も変わらず新聞やテレビは「アベノミクスで経済が良くなった」などと宣伝をしています。
 しかしながら、「良くなった」として記事になるのは、いつも「経営者の景況感」だの「デパートの高級品の売上が伸びた」といった限られた層に限ったものばかりです。つまり、労働者や自営業者には、何ら「恩恵」はありません。
 その現状に対し、自民党や商業マスコミは「アベノミクスが波及するにはまだ時間がかかっている」などと主張します。
 これらの主張の大前提として、企業が儲かれば、その収益が働く人にも滴り落ちてくる、という「トリクルダウン理論」なるものがあります。
 しかしながら、そのようなものは実在するのでしょうか。

 実は、現在の「アベノミクス効果」を見れば、既にその答えは出ています。
 「アベノミクス」による株高で、ユニクロの会長は1兆円以上8,742億円も利益を挙げました。
 仮に、西暦元年から今年まで毎年欠かさず年末ジャンボ宝くじで一等賞が当たり続けても六千数十億円です。それを上回る額を半年で稼いでしまったわけです。
 もし自民党や商業マスコミが宣伝している「アベノミクス効果が滴り落ちる」などという事があるならば、そのケタ違いの利益のほんの一部でもユニクロで働く人に滴り落ちているはずです。
 しかしながら、そのような事は一切ありません。

 たとえば、筆者の近所である海浜幕張でのアルバイト求人情報を見てみます。ユニクロの時給は「900円以上」でしかありません。もちろん、これは周囲のコンビニ・弁当屋と何ら変わりはありません。
 また、色々な所で書かれていますが、ユニクロの新卒社員の離職率は三年で半数が辞めるほどの高さです。つまりそれだけ社員を酷使しているわけです。
 しかしながら、会長氏の儲けた1兆円が滴り落ちて、社員に過酷労働が緩和され、離職率が下がった、などというニュースは出てきません。
 では、その利益はどこに行ったのでしょうか。
 先日見た報道では、ユニクロ会長は、利益の多くを、税率の低いオランダに作った資産管理会社に移した、と書かれてありました。
 つまり、その利益を社員やアルバイトの給与に還元するどころか、税金として日本国に還元する事すらする気はないわけです。
 これだけ見ても、「アベノミクス」で得られた富が、普通に働いている人に滴り落ちる、などという事が現実的にありえない事はすぐに分かるでしょう。

 もちろん、これは現在に限った事ではありません。
 2000年代の「小泉改革」の頃、日本は「史上最長の好景気」と言われていました。
 そして、その政策を肯定的に報道していた日経新聞などは「もう少しで、この好景気が給与にも影響する」と書き続けてきました。
 しかしながら、結局最後までそのような事は実現しませんでした。その結果、日本は今世紀の先進国で唯一の「賃金が下がり続けた国」となってしまったわけです。

 つまり、現在を見ても過去を見ても、大企業の利益が滴り落ちる、などという事はありえない事なのです。
 ところが、先述したように「史上最長の好景気」の間に「もう少しで給与に反映する」と書き続けた日経新聞などは、
 企業収益の拡大が雇用の増加や賃金の上昇をもたらし、成長の果実が家計にも行き渡る――。安倍首相もいうように、景気回復の「実感」が伴わなければならない。(7/14付)
 などと、あたかも「アベノミクスの恩恵が滴り降りる」可能性があるかのように書いています。
 ここまでくると、分かっていながら、現実にありえない事を書いていると言わざるを得ないでしょう。
 これを真に受ける、というのは、「もしもし、オレだけど、大変な事になったので金を振り込んでくれ」という電話を真に受ける、というのと同レベルの事です。

 繰り返しになりますが、いくら待っても「大企業の利益が滴り落ちる」などという事はないのです。
 したがって、「アベノミクスの矢」とやらが何本放たれても、普通に働いている人にとっては、百害あって一利なしです。
 そのような考え方と抜本的に異なる経済政策を行わなければ、これからも日本人のほとんどは、生活が苦しくなる一方になるでしょう。