「公務員削減」を競う理由

 自民党と民主党が、「公務員削減」を競い合っています。自民党の配布する小冊子を見たら、大阪市だの社会保険庁などといった、マスコミが執拗に取り上げる「公務員の非行」を例示し、「だからこそ、自分たちの公務員削減は絶対的に正しい」という感じで書いていました。民主党の「反論」も、「自分たちの考えた公務員の減らし方のほうが正しい」という程度のものです。つまり、「公務員削減」は「二大政党」の双方にとっての「錦の御旗」なわけです。
 しかし、公務員削減という行為が、我々の生活に何か役立つのでしょうか。たとえば、日本は諸外国に比べて人口あたりの公務員が多すぎる、というのなら分からなくもありません。しかし、事実はその正反対です。
 また、公務員が多すぎて、市民サービスが過剰にでもなっているのでしょうか。確かに、国も自治体も、相変わらず無意味な建造物を作ったりしています。しかし、それに従事するのは建設業の社員であり、公務員が自分で工事をするわけではありません。それによって利益を得るのは、建築業者および首長などのごく限られた公務員のみです。
 だいたい、現在の公務員の賃金総額が減ったところで、サラリーマンの収入が増えたり、税金が下がるなどといった事は絶対にありません。それどころか、そのような形で公務員の収入が減れば、その分、金が消費市場にまわらないのですから、むしろ売上が下がるわけです。もしそうなった場合に行われるのは賃下げ・労働強化・リストラなわけですから、むしろ、サラリーマンの生活は苦しくなる可能性すらあるわけです。

 このように、単純に公務員の人数や賃金総額を減らせば、全てがうまくいく、などという事はありません。にもかかわらず、それがもてはやされ、支持されるようです。
 その理由として、サラリーマンの不満を公務員・自営業者・農民に向けさせ、自民党を軸とした現在の政治・経済体制から目をそらさせるという商業マスコミによる宣伝の効果が挙げられます。(こちらの詳細については、長文・現代に生きる「分断支配」の構図に書きました)。
 その自民党政府とその意を受けた商業マスコミが、長年にわたって丹念に行った宣伝の効果ゆえに、「公務員削減」などと言う言葉を聞くと、半ば反射的に「公務員=悪。したがって削減=善」と考えてしまう人が、いわゆる「サラリーマン」の中には少なからず存在するわけです。

 もちろん、公務員のやる事の全てが正しく、彼らが税金を無駄にする事などない、などと主張する気は毛頭ありません。
 たとえば、政党助成金という制度があります。これは、国会議員の所属する政党に、議員の数や得票数に応じて税金から「交付金」が支給される、というものです。もちろん、これと別に、議員は給料を貰っているわけです。生活保護のように、一定以上の収入を得ると助成が打ち切られる、などという事もありません。仮に所属議員の全員が豪邸に住んでいても、ちゃんと助成金は支給されます。
 そして、支給された税金は何に使っても大丈夫です。中には、買収資金として使った人もいたほどです。自民党の宣伝では、「一部の特権を持つ公務員」を批判していますが、この政党助成金を受け取っている「特権を持つ公務員」についても、そこに支給される「助成金」についても、何ら批判はしません。「議員定数の削減」みたいな事は言いますが、それもあくまでも、少数意見を反映しやすい比例代表制のほうから減らすなど、より自分たちの政権が安定する目的での「削減」です。
 もちろん、このような「税金のムダ」を自民党や民主党はもちろん、商業マスコミも正面から取り上げる事はありません。

 このように、自分たちを「聖域」にした「公務員改革」など、おのずと結果は見えています。これまで行われた「改革」の成果同様、我々には「行政サービスの低下」「増税」などの「痛み」ばかり与えられるだけです。その代償として得られる(?)のは「マスコミによって誘導された、『公務員が不幸になると、自分たちが幸福になる』という錯覚」くらいしか存在しません。
 このように、選挙宣伝で語られない事を調べてみると、自民党と民主党の競う「改革」というのが、誰のために行われているのかが分かってきます。

「公務員削減」を競う理由」への4件のフィードバック

  1. バナナの叩き売り

    いや、減らすのはいいですよ、公務員。
    でもねー、これはちょいとデタラメじゃねーの?
    人件費のGDP比半減 諮問会議、民間議員が提言(Excite エキサ…

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