新聞社による改憲試案

 ちょっと前の話ですが、3日の憲法記念日に読売新聞社が3度目の自社で作った改憲試案を載せていました。
 一通り目を通して見ましたが、「条文」の中には、現行の憲法そのままか、ちょっと文章の一部を変えたものが意外に多くありました。改憲をするために作った「記事」だというのに、そうなっているという事は、現行憲法がさほど「勤続疲労」していない、という事を意味しているのでしょうか。
 また、「変えた」部分ですが、当然ながら、読者ウケのよさそうな「条文」が目立ちました。たとえば、軍備を持つことは明記していますが、「戦争の放棄」はそのままで、さらに「軍隊に強制参加させられる事はない」と徴兵制を否定している、といった具合です。
 もちろん、この「試案」は「改憲の印象を良くするために掲載した記事」でしかなく、法案でもなんでもありません。これを見て「改憲しても悪い事はないだろうな」などと思っても、実際にそのような国民のリスクの低い憲法になる保障はどこにもありません。
 ところで、この新聞社の社説では、アメリカが戦争を起こすと「重要な日米同盟のためにも、全面協力すべきだ」という感じの「日米安保条約最優先」をもとにした主張をします。にもかかわらず、3日の社説では、なぜか改憲の理由に「アメリカの強い希望」を挙げていませんでした。やはり、アメリカが9条改憲を露骨に言い出す前は「押し付け憲法批判」をしていた手前、主張しにくかったのでしょうか。
 話は戻って、「改憲案」ですが、よく宣伝する「プライバシー権」「環境権」なんかを見ても、「これが憲法に加わったらなにか良くなるか」はピンと来ません。
 だいたい、現在、自衛隊派兵を目指ししている勢力は、自分の年金未納は「プライバシー」を主張するが、自衛隊イラク派兵に都合の悪い行動をした人々に対しては「過去を洗え」と警察やマスコミに指示するような事をします。また、環境を破壊する大型工事や高速道路建設を推進する事はあっても、抑制する事はありません。一方、現行憲法で保障されているはずの「勤労権」や「生存権」を破壊するような政策は次々と行っています。
 そういう人々が主導して「改正」された憲法に「新たな権利」が記載されたとしても、現実の運用レベルで強化されるのは「政治家のプライバシー権」くらいしかないしょう。
 少なくとも、この「大衆受け」を意識した「改憲試案」を読んでも、これが実現しても日常生活で何か良くなる事があるとは、全然思えませんでした。

新聞社による改憲試案」への2件のフィードバック

  1. 自民党改憲案、非常事態における国への協力義務を追加

    自民党憲法調査会は「憲法改正草案」について、「四つの権利」と「三つの義務」を新たに憲法条文に明記する方向で最終調整に入った。四つの権利は、(1)情報開示請求権(2)犯罪被害者の権利(3)環境権(4)プライバシー権。三つの義務は、(1)非常事態における国…

  2. 自民党の新憲法草案に見る環境権の規定を検証する。

    2005/10/29(Sat)
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    自民党は28日、新憲法起草委員会(森喜朗委員長)などを開き、結…

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