「公務員削減」を競う理由

 自民党と民主党が、「公務員削減」を競い合っています。自民党の配布する小冊子を見たら、大阪市だの社会保険庁などといった、マスコミが執拗に取り上げる「公務員の非行」を例示し、「だからこそ、自分たちの公務員削減は絶対的に正しい」という感じで書いていました。民主党の「反論」も、「自分たちの考えた公務員の減らし方のほうが正しい」という程度のものです。つまり、「公務員削減」は「二大政党」の双方にとっての「錦の御旗」なわけです。
 しかし、公務員削減という行為が、我々の生活に何か役立つのでしょうか。たとえば、日本は諸外国に比べて人口あたりの公務員が多すぎる、というのなら分からなくもありません。しかし、事実はその正反対です。
 また、公務員が多すぎて、市民サービスが過剰にでもなっているのでしょうか。確かに、国も自治体も、相変わらず無意味な建造物を作ったりしています。しかし、それに従事するのは建設業の社員であり、公務員が自分で工事をするわけではありません。それによって利益を得るのは、建築業者および首長などのごく限られた公務員のみです。
 だいたい、現在の公務員の賃金総額が減ったところで、サラリーマンの収入が増えたり、税金が下がるなどといった事は絶対にありません。それどころか、そのような形で公務員の収入が減れば、その分、金が消費市場にまわらないのですから、むしろ売上が下がるわけです。もしそうなった場合に行われるのは賃下げ・労働強化・リストラなわけですから、むしろ、サラリーマンの生活は苦しくなる可能性すらあるわけです。

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イラク「解放」と水害

 アメリカ南部のハリケーンの被害が拡大する一方です。最初は単にハリケーンの威力が凄かったのだと思っていたのですが、どうもそうではないようです。伝染病が発生しているだの、救助物質がいきわたらないだのというのを聞くと、「どのくらい災害にたいする備えをしていたのだろうか?」と不思議に思えます。そしてアメリカ政府は「被害者が退避勧告に従わなかったからだ」と、責任を転嫁しています。このようなニュースを見れば見るほど「天災に人災が加わって、被害を拡大した」という印象を持ちます。
 一方で、アメリカは相変わらず、イラクに大量の軍隊を駐留させています。確か、最初に戦争を始めた題目の一つに「フセイン大統領の圧政からイラク国民を解放する」などというのがありました。しかし、この状態を見ると、自国の災害対策もちゃんとせずに、イラクの民衆を「解放」しに派兵していた事になります。呆れるよりありません。
 もっとも、「解放」などという題目とは裏腹に、イラクで実際にやっている事は、大量虐殺を始めとする、旧体制に劣るとも勝らない圧政です。かつて、江戸幕府は士農工商の下に身分をつくり、その最下層の人々を差別させる事によって身分の低い人々の不満をそらせようとしました。まさか、それと同じで、一連の政策は、イラクの人々を虐待する事により、自国の恵まれない人々に、「彼らに比べれば・・・」と思わせるためなのか、などとすら思えてきてしまいます。

政権公約における改憲の位置付け

 昔、よく健康食品の格安販売をうたうチラシがポストに入っていました。紙面の9割がそのような格安販売で占められており、その片隅に「高級羽毛布団」の写真が小さく載っています。そして、チラシを見て会場に来た人を安売りやプレゼントで催眠状態みたいな精神状況にします。それを利用して布団を高値で売りつけるわけです。いわゆる催眠商法というやつです。
 惹きつけるための心地よい情報の片隅に、真の商売目的をさりげなくまぜておくという、この巧妙なチラシと似たようなものを先日見ました。それは自民党の政権公約です。

 冒頭で「改革」の最重要課題として郵政民営化を大々的に宣伝し、続いて本文でも「テーマ1」として、「日本の改革」を挙げてます。当然ながら、最初の項目は「郵政民営化」です。
 2番目には「日本の行政を変える」として公務員制度や財政赤字・社会保障などについて書いています。「行政のスリム化」などとして、公務員の人数や賃金の削減について大きく書き、さらに財政赤字の削減や社会保障の「改革」にもかなりの行数を割いています。
 3番目は「日本の社会を変える」として「女性の坑内労働に関する規制の緩和」など。これはあまり字数はありません。
 そして、この「テーマ1」の4番目に出てくるのが「日本の基本を変える」です。ここには憲法や教育基本法を「改正」する事について書かれています。しかし、憲法については、17年11月15日までに自民党憲法草案を策定し、公表する。新憲法制定のための「日本国憲法改国民投票法案」及び「国会法の一部改正案」の早期制定を目指すと、わずか2行で片付けています。しかも、「9条をどうする」などと言った、具体的な改憲内容はもちろん、改憲の基本理念についてすら何一つ触れていません。
 行数はわずか2行。これは後で出てくる「沖縄科学技術大学院大学構想の実現」だの「観光立国の実現」などと同じ行数です。

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