月別アーカイブ: 2004年5月

捜査権の濫用

 ここのところ、警察の捜査権が極めて恣意的に使われている事件が目立ちます。
 先日は、卒業式で君が代斉唱に反対して、入場前に週刊誌のコピーなどを配布した来賓の元教員が、卒業式の開始を5分遅らせたことで「威力業務妨害」で警察に家宅捜査され、「証拠品」の押収をされたとの事です。
 もちろん、「威力業務妨害」は建前で、実質的には「日の丸・君が代」に反対した事が捜査の対象となったと見るべきでしょう。
 他にも、自衛隊宿舎内に反戦ビラを配った人たちが「住居侵入罪」で逮捕され、長期間拘留されました。また、休日に共産党のビラを配った公務員が「国家公務員法違反」で逮捕されたという事件もあります。
 また、政治的思想とは異なりますが、著作権違反行為を起こす可能性の高いソフトを製作・配布した、という事で、「著作権法違反ほう助」で逮捕された大学助手もいました。
 最初の三つと最後の一つは、意味合い・目的ともかなり違うものです。とはいえ、いずれも「何でそれで逮捕されるのか」「それで逮捕できるのなら、他にも逮捕されうる事例が無数に生じるのではないか」という疑問が生じる、という点は同じです。
 特に今年になってからの傾向ですが、逮捕状を出すほうも、行使するほうも、権利を濫用しているようです。しかも困ったことに、失敗や悪行の隠蔽には長年の実績があるので、いくら誤りを犯しても、その責任をきちんと取る事はほとんどありません。万が一明るみになっても、一部職員の更迭くらいで、うやむやのままに終わってしまいます。つまり、向こうとしては「やり放題」なわけです。
 さらに、民主政治において、このような暴走を批判する立場にいたはずのマスコミは、商業化がより一層進行しています。収益を挙げるためには、警察と対立するより、仲良くしていたほうが得、という事もあり、ほとんどの社が批判はしません。それどころか、「警察が逮捕=有罪確定」という立場の報道をして、警察の後押しをしています。
 どんな権力でも、監視する体制がしっかりしていなければ、腐敗したり暴走したりします。その結果、被害をこうむるのは一般市民なわけです。このような状態によって運営される社会がどのようなものになるか、非常に不安です。

残虐行為の経費負担

 米軍のイラクでの残虐行為が続々に明るみになっています。よくぞここまで、というような残虐・異常行為のオンパレード。さらに議員が見てさらなる不快感をおよぼした「公開できない映像」があるそうです。
 このような行為は、当然ながら米軍がイラクに駐留するための資金がなくてはできません。そして、日本はそのイラク占領軍に人的・金銭的にも「多大な貢献」をしています。日本からイラクに行く金額は今年だけで総額で50億ドルだそうです。これらの「イラク復興支援資金」を実質的に管理するのは米軍だそうです。実際、最初に日本が15億ドルの「資金拠出」を決めたとき、ブッシュ大統領が歓迎の声明を出しています。
 この「復興資金」がどのように使われているのか分かりません。ただ、このカネがアメリカのイラク占領政策に貢献することは、ブッシュ大統領の発言からも明白です。また、それ以前の問題で、現在イラクにいる米軍のうち、日本に基地がある部隊の駐留経費は「思いやり予算」という名前で日本が負担しています。さらに、航空自衛隊が米兵を輸送するという「人的貢献」も別に存在し、当然ながらその経費は日本のカネです。
 つまり、形の上では直接負担していないとはいえ、現在の米軍の駐留経費の一部は我々の税金から出てきているわけです。そして、その一部が「虐待のための経費」としてイラクで「貢献」したわけです。
 この金額を明らかにする事は、先月一部マスコミで流行した「拘束された日本人を政府の都合で強制送還するためにかけた費用の算出」などよりよほど意義のある事だと思います。しかし、そんな事どころか、税金からどのくらいのカネがイラク占領政策のためにつぎ込まれ、さらに今後どのくらいつぎ込まれそうか、という事すらなかなか記事になりません。
 ついでに言うと、これだけの事が明らかになっても、占領軍に協力することをいまだに「人道支援」などと表現されているのですから、呆れるよりありません。

未納首相の「前科」

 主要閣僚から始まった国民年金未納は、民主党党首から公明党党首を経て、ついに首相のまで判明したようです。加入が義務付けられた1986年以前だったとか弁明しているようです。しかし、そんな事はなんの言い訳にもなりません。これまで散々、「未納はない」と言い続けてきたにも関わらず、実は未納期間があった、というのが大問題なのです。
過去の納付についてきちんと調べていないなら「調査中」と正直に言えばいいだけの話です。それを、確認もぜずに断言していたわけです。
 首相をはじめ、このような言動はこれが初めてではありません。一年ちょと前には自らのメールマガジンでこのイラクの大量破壊兵器が世界の平和に対する重大な脅威になっているなどと書いて、イラク侵略容認の正当性を主張しました。しかし、占領下においても大量破壊兵器は発見されず、その存在の「証拠」となった開戦時の情報の信憑性も問題になっています。にもかかわらず、いまだにその「大量破壊兵器保持を断言」した事に対する指摘には、まともに答えていません。
 身近な人間がこのような無責任な言動を連発すれば、誰でもその人間へとの付き合い方を考え直すでしょう。ところが、この人物はいまだに首相として行政の責任者であり続けています。
 あと、未納した政治業者などからよく「未納があったのは、制度のせいだ」などと主張し、それにより現在勧めている年金改悪を正当化しようとする発言があります。これは、現在の制度をきちんと把握していないくせに、制度を変えようとしている、という無責任な状態を公言しているようなものです。そのような連中に、現在の年金制度をどうこうする資格などあるのでしょうか。
 10年ほど前、「政治とカネ」が問題になった時、その当事者である政治業者達が行った「政治改革」は「小選挙区制」「5年後に企業献金を禁止する事を前提とした政党助成欣導入」でした。その結果は、「小選挙区制のもとで続々逮捕者が出る金権選挙」「企業献金はそのままで、政党助成金は何十億も税金から受け取る」でした。腐敗している連中に腐敗を正す事などできるわけがないのです。年金制度改悪も同じ連中がやっているだけに、同じ結果になるのがオチでしょう。
 それにしても、発言した事に一切責任を持とうとしない首相と、それを容認する風土、というのは本当に恐ろしいものです。これを「上手く」使えば、いくらでも国民をだまして不利益な制度を作ることができるわけですから。