月別アーカイブ: 2004年8月

ペンは街宣車より弱し?

 8月13日に大いに話題になった「読売球団首脳総辞職事件」について、週刊ポスト・現代・AERAといった週刊誌がそれぞれ「事件発覚は右翼団体の来訪がきっかけだった」という記事を掲載していました。内容は各誌ほぼ同じで、右翼団体が、「学生選手に200万円の裏金」の情報を入手し、読売球団の事務所に乗り込んだ上に街宣車も出した。その結果が、「総辞職」につながった。というような感じです。

 確かに、今回、読売球団が起こした裏金事件が発覚した、という事は、徹底究明すべき大問題です。それを明るみにした、という点では右翼団体の「功績」と言えます。また、私自身も「たかが選手」に代表される一連の言動には強い不快感を覚えていました。
 とはいえ、いくら読売球団の行いや当時のオーナー氏の言動に問題があっても、この「球団事務所周辺に数台の車で乗り付け、大音量の拡声器で不正行為を指弾した」という示威行為は、一般的には異常な行動です。それによる被害は球団事務所のみならず、無関係の周囲にも及ぶわけです。
 しかも、その右翼団体は、かつて「天皇に戦争責任がある」と議会で発言した長崎市長を銃撃しました。現在でも団体のサイトには「主な活動」の一つとしてその事を掲載しています。
 にもかかわらず、三誌とも、そのような「暴力集団」の主張をそのまま掲載しています。また、その右翼団体幹部氏は「情報は読売内部から入手した」と公言していました。もしこれが事実だとしたら、「市長銃撃を実績と公言するような右翼団体に、大手新聞社の一部社員が内部情報を漏洩」というかなりの問題だと思うのですが、それについても検証・論評はありません。

 もちろん、取材先の発言をそのまま掲載するのは、相手がどのような個人・団体であれ大切な事です。しかし、「テロ行為」を自慢する団体の人の発言の場合、それなりに解説なども載せるのが筋だと思うのですが。もしかして、右翼団体に取材するときには、他に取材するときとは異なる「規定」が業界にはあるのだろうか、とまで思ってしまいました。
 それまで、傍若無人の限りを尽くしてきた読売球団首脳陣が、来訪+街宣車の一発で総辞職した事も含め、なんとも言えない不気味さを感じた、「マスコミと右翼団体の力関係」でした。

我が国にとって最大の脅威である外国

 沖縄で米軍ヘリが大学に墜落しました(沖縄国際大学・米軍ヘリコプター墜落事件に関する情報)。これだけでも大問題なのに、その後米軍は日本警察の捜査を実質的に拒否し、米軍だけで残骸などを撤去しました。その作業を行っている米軍関係者は防護服を着ていたという情報もあります。となると、そのヘリには人体に極めて有害な物質が積まれていた可能性も少なくありません。
 しかし、それについての正確な情報も、再発防止策についても、いまだに我々国民には提供されていません。そして、米軍の日本国内での「飛行訓練」も再開されました。という事は、今後も沖縄をはじめとする日本各地は、何を積んでいるかわからない米軍機が落ちてくる危険性に、常にさらされているという事になります。

 自民党政府は、米軍およびその補完部隊である自衛隊が、国民の権利を侵害しても活動ができるような法律を作っています。その際に持ち出される建前の一つに「外国の脅威から国民を守るため」というものがあります。しかし、現在の日本において、このような「正体不明の物を積んでいる軍用機がいつどこに落ちてくるか分からない」という現状より危険な「外国による脅威」などは存在するのでしょうか。
 具体性の無い「外国(北朝鮮?)が攻めて来るという脅威」で国民をあおって、アメリカの軍事戦略に忠実な法律を作っているわけです。その結果、極めて具体的な「外国軍による脅威」が増大しているのですから、呆れるよりありません。

小泉首相にとっての「平和」

 「終戦記念日」の式典が行われました。そこでの小泉首相の談話は不戦の誓いを堅持し、平和国家の建設にまい進する。国際社会の一員として世界の恒久平和の確立に積極的に貢献していくというものだそうです。
 この談話だけを見ると、首相はかなりの「平和主義者」のようです。しかし、実際に行っている政策は、イラク侵略の全面賛成であり、自衛隊を派兵して米兵輸送を行っている事であり、かつての被侵略国の再三の抗議を無視しての靖国参拝なわけです。
 この発言と実際に行っている政策・行動に「整合性」を持たせるには、発言における単語を「翻訳」する必要がありそうです。
 さしずめ、

  • 不戦-アメリカ相手には戦争しない事。
  • 平和-アメリカの軍事力により、「敵対勢力」が打ち負かされる事。実現するには大量虐殺を伴なう事が多い。
  • 国際社会-アメリカが絶対的な権力を持つ社会。

 とでもなるのでしょう。
 これならば、あれだけ9条改憲を個人でも党でも主張しながら、原爆記念日の演説で今後とも、平和憲法を順守するなどと堂々と言えるのも理解できます。
 いずれにせよ、このような人物が政治を行っている限り、一般的な意味での「平和な生活」を我々が維持するのは難しそうです。