ペンは街宣車より弱し?

 8月13日に大いに話題になった「読売球団首脳総辞職事件」について、週刊ポスト・現代・AERAといった週刊誌がそれぞれ「事件発覚は右翼団体の来訪がきっかけだった」という記事を掲載していました。内容は各誌ほぼ同じで、右翼団体が、「学生選手に200万円の裏金」の情報を入手し、読売球団の事務所に乗り込んだ上に街宣車も出した。その結果が、「総辞職」につながった。というような感じです。

 確かに、今回、読売球団が起こした裏金事件が発覚した、という事は、徹底究明すべき大問題です。それを明るみにした、という点では右翼団体の「功績」と言えます。また、私自身も「たかが選手」に代表される一連の言動には強い不快感を覚えていました。
 とはいえ、いくら読売球団の行いや当時のオーナー氏の言動に問題があっても、この「球団事務所周辺に数台の車で乗り付け、大音量の拡声器で不正行為を指弾した」という示威行為は、一般的には異常な行動です。それによる被害は球団事務所のみならず、無関係の周囲にも及ぶわけです。
 しかも、その右翼団体は、かつて「天皇に戦争責任がある」と議会で発言した長崎市長を銃撃しました。現在でも団体のサイトには「主な活動」の一つとしてその事を掲載しています。
 にもかかわらず、三誌とも、そのような「暴力集団」の主張をそのまま掲載しています。また、その右翼団体幹部氏は「情報は読売内部から入手した」と公言していました。もしこれが事実だとしたら、「市長銃撃を実績と公言するような右翼団体に、大手新聞社の一部社員が内部情報を漏洩」というかなりの問題だと思うのですが、それについても検証・論評はありません。

 もちろん、取材先の発言をそのまま掲載するのは、相手がどのような個人・団体であれ大切な事です。しかし、「テロ行為」を自慢する団体の人の発言の場合、それなりに解説なども載せるのが筋だと思うのですが。もしかして、右翼団体に取材するときには、他に取材するときとは異なる「規定」が業界にはあるのだろうか、とまで思ってしまいました。
 それまで、傍若無人の限りを尽くしてきた読売球団首脳陣が、来訪+街宣車の一発で総辞職した事も含め、なんとも言えない不気味さを感じた、「マスコミと右翼団体の力関係」でした。