月別アーカイブ: 2005年1月

福祉予算の半額は消費税

 東京国税局が作った消費税の宣伝マンガを見ました。消費税の税収の半分は社会福祉に使われている、というものです。ただ「消費税の役割」を紹介しているだけで、「これから消費税率をどうする」みたいな事は書いていません。しかし、この宣伝マンガを素直に読んだ人が「消費税率引き上げ論議」に関する情報を得れば、「福祉のためだから仕方がないか」と思う可能性は高いでしょう。
 しかし、ちょっと視点を変えて考えてみると、不思議な点が多々あります。消費税誕生以前も福祉は当然ありました。当時は、別の財源から福祉に充当していたわけです。別に「消費税がなければ福祉はできない」などという事はありません。しかも、消費税が導入されて約16年間、どのくらいの税収があったか知りませんが、それに比例して福祉が後退した事は多数ありましたが、改善された事などほとんどありません。
 つまり、「消費税は福祉のために役立っている」のではなく、「行政側が勝手に1989年以前の税収で福祉に充当していた部分を削って、消費税の税収分に押し付けた」だけの話でしかありません。
 ついでに言うと、消費税導入後の税収合計は、法人税の税収減の額とさほど変わらないそうです。

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「公正」の基準

 番組改変で問題になった、「女性国際戦犯法廷」について、当時者の安倍氏・中川氏はもちろん、右よりのマスコミが「公正ではない」と批判しています。ただ、その批判を見ると、「その裁判では当時の国際法に基づいて、日本や天皇の行為を裁いているが、その判決の○○は国際法上、明らかに誤っている」というように、「裁判」を正面から批判しているものではありません。
 その代わりに「昭和天皇に有罪判決を出した」とか「北朝鮮の人も加わっている。あれは工作員だ(※工作員である具体的証拠の提示はなし)」などと、読者・視聴者の感情を刺激するような語句を連ねて、「不公正だ」と決め付けています。
 また、安倍氏は何度もTV出演をして、自分の正当性を主張しています。ある番組に至っては、司会者は、万が一にも安倍氏に「失言」が出ないよう、細やかな気遣いのもとに質問していました。
 それらのマスコミは、放映されなかった番組の内容や、「女性国際戦犯法廷」を「不公平だ」と批判しています。しかしながら、これらの論調や司会者の態度を見ると、彼らのも十分「安倍氏に偏った報道」をしています。報道される量も、安倍氏・NHK側に比べ、「女性国際戦犯法廷」側の主張の類は、ほとんど見られません。
 もっとも、安倍氏・NHKの主張が出れば出るほど、NHKと自民党の密着ぶり、並びに彼らがそれを当然と認識している事が伝わってくる、という皮肉な結果にもなってはいますが。
 NHKにせよ、安倍氏・NHK側に立つマスコミにせよ、彼らにとっての「公正」の条件はまず第一に「自民党政府に認められる事」なのだろうか、と思いながら「安倍氏側に偏った報道」を見ています。

「反論」からわかるもの

 4年前にNHKが放送しようとした従軍慰安婦関係の番組が放映直前に内容を大幅に変更される、という事がありました。そのプロデューサーが内部告発をし、それを朝日新聞が報じました。それに対し、当事者とされた自民党の安倍幹事長代理が「反論」していました。
 しかし、その内容は「私が(NHK関係者を)呼びつけたということはない。事実誤認だ」「(番組が)ずいぶんひどい内容になっていると聞いたので『NHKですから公平公正にやってくださいね』と話した。」といったものでした。
 要は、「NHKには、自民党政府の意向に従わない番組が放映されそうになると、こちらが呼ぶまでもなく、自民党の政治家に注進に来る人がいる」「そうやって来た人間に対し、放映前にその番組の内容について、『どのような立場で放送すべきか』を指摘していた」というわけです。
 なんか、「朝日が批判的な報道をしたから怒っている」だけで、「NHKと自民党政治家の親密ぶり」や「自分達番組の放映内容について事前に意見を述べ、その結果番組の内容が大幅に変わった事」などが露見した事自体については、別にどうとも思っていないようです。
 彼らを擁護した小泉首相を含め、「自分達の考え方に反する事は『公平公正』ではない」→「そうである以上、報道内容について『指摘』をするのは当然の権利」と考えている事がよく分かった「反論」でした。